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暴かれた因果
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セレスタイン城・地下温室の一角。
魔物すら寄りつかない、古びた石造りの温室には二人だけの影があった。
ジルベールの表情は、いつになく険しい。
それが単なる怒りではなく、深い葛藤と悲しみを孕んだものであることを、スカーレットはすぐに察した。
「はい。王妃様だけが、“微弱ながらも太陽の力を持つ女性”──
それだけで、あの日の犯行は可能になりますわ」
スカーレットが取り出したのは、侍女の行動日誌の写し。
一部が不自然に抜けていた婚約式当日の記録。
しかも、ラファエルが倒れた時間と見事に一致していた。
「ラファエル様が傷つけられたあの日、王妃様の居場所は誰にも把握されていなかった。
あれだけ警備が厳重だったのに、“本人が姿を消していた”のです」
「……」
ジルベールは黙って、彼女の言葉を聞いていた。
「……ジルベール様。貴方の方も何か、調べられたのでしょう?」
その言葉に、彼の指先が小さく震える。
(言わなければ……いや、言ってしまえば、あの子は……)
「ジルベール様……?」
スカーレットが一歩近づいたとき、彼はぽつりとつぶやいた。
「……ラファエルは、生まれる前に“造られた”存在だ」
「え……?」
「太陽の力を受け継ぐ者の“影”として──
王妃ヴィラベラが、側妃のイリスのお腹の中にいた彼に“闇”を与える儀式を行っていた。
それも、禁術中の禁術。魂に他の属性を刻むなんて……」
「そ、そんな……!」
「しかもその理由が……セシルの“引き立て役”だなんて。
眩い光の横には、濃い影が必要だ……だとさ。
だから、王妃は闇を――自らの手で、ラファエルに与えた」
スカーレットの喉奥が詰まる。
あまりにも非道で、そして残酷すぎる真実。
「ラファエル様は……自分が“そういう存在”だと、気づいていらっしゃるのでしょうか……」
「いや。……まだ知らない。
だが……俺は、言うべきだと思っていた。あいつには、知る権利がある」
「でも、言えなかったんですね?」
沈黙。
ジルベールの表情には、苦しみと、ためらい、そして義理ではあるが父親として、同じ闇の力を持つ者としての愛情や同情のようなものがあった。
「……あの子のあの目を、思い出した。
ずっと冷たい目をしてた。何を見ても、どこか諦めていた。
だけど今は……ほんの少し、“人間らしい光”があるんだ。
スカーレット、君があの子に与えたものは、真実以上に大きい」
スカーレットの瞳が、そっと揺れる。
「私は……あの方の何かを変えられたでしょうか」
「さぁな。でも、“変わり始めた”ことは確かだ。
だから俺は……せめて、もう少しだけ……あの子に救いがあってほしいと思ってしまった。
本当は、言うべきだったんだろうに」
──その頃、王宮。
ヴィラベラ王妃は、自室のバルコニーから庭を見下ろしていた。
隣には、一人の侍女が茶を淹れていた。
「最近、変わった顔を見かけるのよ。……やけに目の綺麗な侍女」
ヴィラベラは何気ない風を装いながら、ゆっくりと紅茶を口に含む。
「茶髪で三つ編み。丸い眼鏡。……ふふ、目立たないようにしているつもりでも、目立ってしまう人っているものね」
侍女は静かに微笑むだけで、何も答えなかった。
「……あの目、昔の誰かに似ているわ。
そう、あの……オルビア•アリア•スカーレット。ふふ、まさかね」
そう呟いたヴィラベラの笑みに、ほんのわずか“嗜虐”の色が滲んでいた。
──ヴィラベラは、気づいている。
王宮に忍び込んだ“誰か”の正体に。
けれど、あえて今は口にしない。
まるで、獲物が罠にかかるのを静かに待つかのように――
そして、嵐は、音もなく迫ってくる。
魔物すら寄りつかない、古びた石造りの温室には二人だけの影があった。
ジルベールの表情は、いつになく険しい。
それが単なる怒りではなく、深い葛藤と悲しみを孕んだものであることを、スカーレットはすぐに察した。
「はい。王妃様だけが、“微弱ながらも太陽の力を持つ女性”──
それだけで、あの日の犯行は可能になりますわ」
スカーレットが取り出したのは、侍女の行動日誌の写し。
一部が不自然に抜けていた婚約式当日の記録。
しかも、ラファエルが倒れた時間と見事に一致していた。
「ラファエル様が傷つけられたあの日、王妃様の居場所は誰にも把握されていなかった。
あれだけ警備が厳重だったのに、“本人が姿を消していた”のです」
「……」
ジルベールは黙って、彼女の言葉を聞いていた。
「……ジルベール様。貴方の方も何か、調べられたのでしょう?」
その言葉に、彼の指先が小さく震える。
(言わなければ……いや、言ってしまえば、あの子は……)
「ジルベール様……?」
スカーレットが一歩近づいたとき、彼はぽつりとつぶやいた。
「……ラファエルは、生まれる前に“造られた”存在だ」
「え……?」
「太陽の力を受け継ぐ者の“影”として──
王妃ヴィラベラが、側妃のイリスのお腹の中にいた彼に“闇”を与える儀式を行っていた。
それも、禁術中の禁術。魂に他の属性を刻むなんて……」
「そ、そんな……!」
「しかもその理由が……セシルの“引き立て役”だなんて。
眩い光の横には、濃い影が必要だ……だとさ。
だから、王妃は闇を――自らの手で、ラファエルに与えた」
スカーレットの喉奥が詰まる。
あまりにも非道で、そして残酷すぎる真実。
「ラファエル様は……自分が“そういう存在”だと、気づいていらっしゃるのでしょうか……」
「いや。……まだ知らない。
だが……俺は、言うべきだと思っていた。あいつには、知る権利がある」
「でも、言えなかったんですね?」
沈黙。
ジルベールの表情には、苦しみと、ためらい、そして義理ではあるが父親として、同じ闇の力を持つ者としての愛情や同情のようなものがあった。
「……あの子のあの目を、思い出した。
ずっと冷たい目をしてた。何を見ても、どこか諦めていた。
だけど今は……ほんの少し、“人間らしい光”があるんだ。
スカーレット、君があの子に与えたものは、真実以上に大きい」
スカーレットの瞳が、そっと揺れる。
「私は……あの方の何かを変えられたでしょうか」
「さぁな。でも、“変わり始めた”ことは確かだ。
だから俺は……せめて、もう少しだけ……あの子に救いがあってほしいと思ってしまった。
本当は、言うべきだったんだろうに」
──その頃、王宮。
ヴィラベラ王妃は、自室のバルコニーから庭を見下ろしていた。
隣には、一人の侍女が茶を淹れていた。
「最近、変わった顔を見かけるのよ。……やけに目の綺麗な侍女」
ヴィラベラは何気ない風を装いながら、ゆっくりと紅茶を口に含む。
「茶髪で三つ編み。丸い眼鏡。……ふふ、目立たないようにしているつもりでも、目立ってしまう人っているものね」
侍女は静かに微笑むだけで、何も答えなかった。
「……あの目、昔の誰かに似ているわ。
そう、あの……オルビア•アリア•スカーレット。ふふ、まさかね」
そう呟いたヴィラベラの笑みに、ほんのわずか“嗜虐”の色が滲んでいた。
──ヴィラベラは、気づいている。
王宮に忍び込んだ“誰か”の正体に。
けれど、あえて今は口にしない。
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そして、嵐は、音もなく迫ってくる。
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