20 / 47
誕生祭の影
しおりを挟む
ノルヴィス王国が最も華やぐ日――
それが、国王ノルヴィス・ルノス陛下の誕生祭。
王都全体が煌めく光に包まれ、通りには花と音楽、民の笑顔が溢れていた。
けれど、その明るさの裏で、確かに暗い影が蠢いている。
ノア殿下の見立てでは、
「ザンジス宰相は、必ずこの誕生祭に現れる」
――それが確信に近い言葉だった。
私は本来、“ノアの婚約者カリーナ”として同席するはずだった。
けれど、気にかかることが一つあった。
それは数日前、ラスタと二人で話していたときのこと。
⸻
「ラーチェ伯爵の罪が暴かれ、一家全員、処刑されることになりました。」
淡々と告げるラスタ。彼の声はいつもと変わらず冷静だ。
「……その罪を暴いたのはノア殿下だという噂が王宮に流れていて。」
「!? で、でも! 女装していたノア殿下のことは、誰も知らないはずですよね!?」
「それが不可思議なのです。」
ラスタの眉がわずかに動く。
「何者かが、殿下の動きを監視していた可能性が高い。」
(まさか……ザンジス宰相? それとも、ルイ派の残党……?)
「とにかく、これでルイ派の人間を敵に回した。」
「ルイ派の人間は容赦なくノア殿下に刃を向けるでしょう。
まず狙われるとすれば――ルノス国王の誕生祭です。」
私は息をのんだ。
その言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「ノア殿下は一通りの剣術は学ばれていますが、
……護衛は多い方がいい。
だからこそ、貴方には“カリーナ”ではなく、“カリス”として、殿下を守っていただきたいのです。」
「は、はい。って――え!? 私が“カリス”だと知っているのですか!?」
ラスタはごく自然に頷いた。
「ええ。出会った時から知っていました。」
「!?」
(え、えぇぇ!? じゃあ、あの時の壁ドンとか、してたのもバレてたの!?)
「殿下にも、誰にも言わないと約束しています。
……殿下の力になってくれる人を、陥れるつもりもありません。ご安心を。」
「な、なるほど……」
(なるほどって何!? 私の心臓が持たないんですけど!?)
***
カリーナ――いや、今は“カリス”として、再び男装の準備を整える。
白シャツに燕尾の黒いジャケット、腰には剣。
鏡の前に立つと、かつての「男装令嬢」ではなく、
“ノア殿下の影”として生きる決意をした戦士がそこにいた。
(本当は、殿下が言ってくれた「君のドレス姿が見たい」って言葉、嬉しかった。
けど……今はそれどころじゃない。)
ノア殿下に何かあったら、それこそ国の一大事だ。
彼を守るためなら、私は――もうどんな姿でも構わない。
それが、国王ノルヴィス・ルノス陛下の誕生祭。
王都全体が煌めく光に包まれ、通りには花と音楽、民の笑顔が溢れていた。
けれど、その明るさの裏で、確かに暗い影が蠢いている。
ノア殿下の見立てでは、
「ザンジス宰相は、必ずこの誕生祭に現れる」
――それが確信に近い言葉だった。
私は本来、“ノアの婚約者カリーナ”として同席するはずだった。
けれど、気にかかることが一つあった。
それは数日前、ラスタと二人で話していたときのこと。
⸻
「ラーチェ伯爵の罪が暴かれ、一家全員、処刑されることになりました。」
淡々と告げるラスタ。彼の声はいつもと変わらず冷静だ。
「……その罪を暴いたのはノア殿下だという噂が王宮に流れていて。」
「!? で、でも! 女装していたノア殿下のことは、誰も知らないはずですよね!?」
「それが不可思議なのです。」
ラスタの眉がわずかに動く。
「何者かが、殿下の動きを監視していた可能性が高い。」
(まさか……ザンジス宰相? それとも、ルイ派の残党……?)
「とにかく、これでルイ派の人間を敵に回した。」
「ルイ派の人間は容赦なくノア殿下に刃を向けるでしょう。
まず狙われるとすれば――ルノス国王の誕生祭です。」
私は息をのんだ。
その言葉の意味を理解するのに、少し時間がかかった。
「ノア殿下は一通りの剣術は学ばれていますが、
……護衛は多い方がいい。
だからこそ、貴方には“カリーナ”ではなく、“カリス”として、殿下を守っていただきたいのです。」
「は、はい。って――え!? 私が“カリス”だと知っているのですか!?」
ラスタはごく自然に頷いた。
「ええ。出会った時から知っていました。」
「!?」
(え、えぇぇ!? じゃあ、あの時の壁ドンとか、してたのもバレてたの!?)
「殿下にも、誰にも言わないと約束しています。
……殿下の力になってくれる人を、陥れるつもりもありません。ご安心を。」
「な、なるほど……」
(なるほどって何!? 私の心臓が持たないんですけど!?)
***
カリーナ――いや、今は“カリス”として、再び男装の準備を整える。
白シャツに燕尾の黒いジャケット、腰には剣。
鏡の前に立つと、かつての「男装令嬢」ではなく、
“ノア殿下の影”として生きる決意をした戦士がそこにいた。
(本当は、殿下が言ってくれた「君のドレス姿が見たい」って言葉、嬉しかった。
けど……今はそれどころじゃない。)
ノア殿下に何かあったら、それこそ国の一大事だ。
彼を守るためなら、私は――もうどんな姿でも構わない。
1
あなたにおすすめの小説
守護契約のはずが、精霊騎士の距離が近すぎて心拍がもちません―― 距離ゼロで溺愛でした。
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済:全8話⭐︎
ーー条項:心拍が乱れたら抱擁せよ(やめて)
村育ちの鈍感かわいい癒し系ヒロイン・リリィは、王都を目指して旅に出たはずが――森で迷子になった瞬間、精霊騎士エヴァンに“守護契約”されてしまう!
問題は、この騎士さまの守護距離が近すぎること。
半歩どころか背後ぴったり、手を繋ぐのも「当然」、心拍が乱れたら“抱擁条項”発動!?
周囲は「恋人だろ!」と総ツッコミなのに、本人たちは「相棒です!」で通常運転。
守護(と言い張る)密着が止まらない、じわ甘コメディ異世界ファンタジー!
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる