男装悪役令嬢は、女装王子に溺愛される!?ー死刑回避のための男装ライフ、恋愛フラグが乱立中ー

明夏 向日葵

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陛下への諫言

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陛下の書斎。
月明かりがステンドグラスを通して差し込み、机の上を淡く照らしていた。

ノアは、王宮に回していた帳簿類や通信記録、そして押収した麻薬を恭しく机の上に並べる。
その一つ一つが、ザンジス宰相の悪行を暴く確かな証拠だった。

ーこれは、宰相直属の部下が運んでいた麻薬の実物と、幹部たちの通信記録です。
取引内容と金の流れ、すべてがザンジス宰相に繋がっています。

ノアの声音は静かだったが、そこには“悪を絶対に許さない”という強い意志があった。
その気迫に、隣で控えていたカリスも思わず背筋を伸ばす。

ルノス国王は書類を手に取り、目を通すたびに眉間の皺を深くした。
やがて、机を拳で叩きつける。

「……国の膿の元凶はザンジス宰相か!
全く、どこまで腐りきっておるのだ!」

怒りの声が書斎を震わせる。
従者たちは息を潜め、ノアも深く頭を下げた。

「明朝、ザンジスに王宮へ出頭するよう命を出せ!」
陛下は側近に鋭く命じる。

「……ノア、よくやった。それに、カリス令息も。何か褒美をやろう。」

ノアは一歩前に出て、微笑を浮かべる。
「これは王族として当然の務めを果たしたまでです。望みはありません。」

「謙虚なやつだな。……まあよい。何か思いついたら話せばいい。
今日は疲れたであろう、ゆっくり休め。」

ノアとカリスは深く一礼し、書斎を後にした。



廊下を歩きながら、カリスはほっと息をついた。

(き、緊張した~~~!!ルノス国王、威厳がすごすぎて心臓止まるかと思った!)

そんな内心を隠して歩いていると、隣のノアがふと手を伸ばし、彼女の手を絡め取る。

「……ノア殿下?」

カリスが驚いて見上げると、ノアはいたずらっぽく微笑んだ。

「ふふ。もう夜も更けてるし、ここには誰もいない。
手を繋いでも――キスしても、誰にも見られないと思わない?」

「そ、そんな……っ!」
カリスの頬が一気に真っ赤になる。
握られた手の温かさに、心臓が跳ねた。

ノアはその反応を見て、楽しそうに目を細める。

「まあ、君のこんな可愛い顔を他の誰かに見せたくないから、誰もいない場所でしかしないけどね。」

「っ……」
反論できない。
むしろ、心臓の音がうるさすぎて何も言えない。

「……それより、今日も僕の部屋に泊まっていくよね?」

「ふ、ふへ?」

(もう……何が何だか分からない!こんなに殿下の近くにいたら、私……いつか天に召される……!!)

結局、カリスはこくんと頷くことしかできなかった。



ノアの私室。
入浴を終え、ノアの夜着を借りたカリス――いや、カリーナは、柔らかなソファでうつらうつらしていた。

(明日は……ザンジス宰相の罪が暴かれる日……。しっかり寝て、備えなきゃ……。でも……殿下より先に寝るのは、失礼かも……)

そんなことを考えながらも、瞼がゆっくり閉じていく。

そこへ、バスローブ姿のノアが戻ってきた。
ソファで丸くなって眠るカリスを見て、小さく息を漏らす。

「……ふふ。本当に君は、危機感がなさすぎるよ。」

彼は静かに彼女のそばにしゃがみ込み、
その額へ、優しくキスを落とした。

「男が獣だってこと、忘れないでほしいな……。」

そう呟きながら、そっと彼女を抱き上げ、ベッドへと運ぶ。
毛布をかけ、隣に横たわると――彼女の寝息が穏やかに響いた。

すやすやと立てる寝息。
長いまつげ。白い肌。
そして月光に輝く、薄水色の髪。

ノアはその髪を指で梳きながら、小さく微笑む。

「……君がいるから、僕は強くなれる。」

そう呟き、そっとカリーナを抱きしめる。
二人を包む夜は、静かに、穏やかに過ぎていった。
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