男装悪役令嬢は、女装王子に溺愛される!?ー死刑回避のための男装ライフ、恋愛フラグが乱立中ー

明夏 向日葵

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甘くて幸せな、1日の約束

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翌朝。

久しぶりにラービス邸へ戻ったカリーナは、メアリーに髪を編み込んでもらっていた。
シャツ型の白いワンピースに、胸元のブルーダイヤのリボンブローチ。
腰には紺色のベルトを締め、足元はシンプルなパンプス。

メアリーは楽しそうに鼻歌を歌いながら髪を結い上げる。

「メアリー、今日はご機嫌ね」
「当たり前です! またこんなに美しいカリーナ様が見られるなんて!
しかも今日はノア殿下とデートなんですよね?」

頬を染めるカリーナ。
「ええ……。ドキドキしているわ」

その瞬間、屋敷の前で王宮の馬車が止まる音がした。
窓の外に見えるのは、金糸の刺繍が入ったシャツに黒いズボンという、シンプルながらも光を纏うようなノア殿下の姿。

「カリーナ!」

彼女を見つけたノアは、嬉しそうに目を輝かせ、駆け寄ってその手を取る。
そして、抱きしめる。

「君が可愛すぎて、つい抱きしめたくなった。」

そう言って、懐から一本のブルーローズを取り出す。

「これを君に。僕の心の色だ」

「まぁ……綺麗な薔薇ですね。ありがとうございます」

カリーナは、その花を胸に抱きしめ、優しく笑った。

ノアは彼女の手を取り、馬車の扉を開ける。

「さあ、行こう。僕たちの――未来へ」

その声に、カリーナは頬を染めながらも微笑んだ。
二人を乗せた馬車が、朝の光の中をゆっくりと走り出す。

未来へ向かう、その始まりの音を響かせながら――。

***

馬車を降りた2人は、ゆるやかに陽が差し込む王都の通りを歩いていた。
カリーナの頬には柔らかな風があたり、ノアの手はいつもより少し強く、優しく彼女の手を包んでいる。

「前回みたいな捜査のためのデートじゃない。今日は、君と僕の“本当の初めてのデート”だよ。
だから、君の一日を……今日は僕にちょうだい?」

そう言って、ノアはカリーナの手を絡めとり、ぐっと引き寄せる。

「ふふ、ノア殿下……私、幸せです」
「だーめ。“殿下”呼びは禁止。名前で呼んで。もし言っちゃったら、その回数だけキスしちゃうからね?」

「う、うぅ……が、頑張ります!」

(慣れてるからつい“殿下”って言っちゃいそう……でも、名前呼びってやっぱり緊張する……!)

***

2人が着いたのは、王族御用達の仕立て屋。
柔らかい光に包まれた店内には、幾つものウェディングドレスが並び、まるで夢の世界のようだった。

「すごい……全部、綺麗で可愛い……」
カリーナの瞳が、少女のように輝く。

「うーん、こんなにあったら、君に似合うドレスが多すぎて困っちゃうな」
ノアは笑いながら、白いドレスを手に取り、カリーナの体にそっと合わせる。
その仕草に、カリーナの頬が一気に熱を帯びた。

ノアは次々とドレスを見ては「これもいい」「あれも似合いそう」と楽しそうに選んでいる。
そんな中、カリーナの足が一枚のドレスの前で止まった。

それは、首元から腕にかけて繊細なレースがあしらわれ、胸元にはブルーダイヤとルビーが散りばめられた、気品と温かさを併せ持つドレスだった。

カリーナが手を伸ばした瞬間、ノアの手も同じドレスへ伸びた。
そっと触れ合う指先。
ノアは、そのままカリーナの手を優しく包み込む。

「……カリーナも、このドレスがいいなって思った?」
「はい。ブルーダイヤとルビーが、とても綺麗で……」

微笑む彼女を見つめながら、ノアの胸が温かく満ちていく。
「じゃあ、これにしよう。僕たちらしいドレスだ」

「でしたら、ノアのタキシードは私が選びます!」
張り切ったカリーナは店内を歩き回り、やがて一着のタキシードを抱えて戻ってくる。

「これ!このドレスとぴったりなんです!」

白と金を基調とし、襟元にルビー、首元にはブルーダイヤのブローチ。
まるで2人の絆を象徴するような一着だった。

「うん。完璧だね。これ以上ない、僕たちらしい婚礼の衣装だ」



互いに試着をすることになり、控え室で胸を高鳴らせる2人。

(ノアに変に思われないかしら……)
カリーナは鏡に映る自分の姿を見つめ、深呼吸する。

一方のノアも、袖口を整えながら苦笑していた。
(……正気を保てる自信がない。カリーナの花嫁姿を見たら、絶対に抱きしめたくなる)

そして扉が開く。
お互いの姿を目にした瞬間、言葉を失った。

白のドレスに包まれたカリーナは、光を纏ったように美しかった。
「ノア……すごく素敵です。ふふ、こんな素敵な方の奥さんになれるなんて、私は幸せですね」

その笑顔に、ノアの息が止まる。
(き、綺麗すぎる……まるで女神だ)

「……ノア?」
「だ、大丈夫。君があまりにも美しくて、見惚れてたんだ」



試着を終え、店を出る頃には夕陽が街を包み始めていた。

「婚姻の儀は、必ず君にとって最高のものにしてみせる。
だからその時も、僕の隣で笑っていてほしい」

「ふふ。ノアがいれば、どんな場所でも幸せですよ?」

2人は笑い合い、通りを歩く。
そこには、穏やかな未来の予感があった。
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