100 / 171
♠︎呪♠︎弘田宇丈
3
しおりを挟む
アオが来るまで、話をして過ごした。
こんな風に長い時間を過ごせるのは初めてだった。いつもは話をする時間がないから、今回は本当に貴重なチャンスだ。みひろさんのことを色々と知ることができる。
アオのカウンセリングのことは忘れ、学生時代の話や幼少時の思い出、趣味や仕事のこと…思いつくままに喋り、聞いた。
普段のオレは、どっちかというと口数が少ない方だ。
仕事柄多少の社交トークはできるが…プライベートではあまり喋る方じゃない。
けど、みひろさんのことを知りたくて…自分の話を引導にして、彼女のことを聞いた。
「ね、みひろさん」
「はい」
淹れてもらったコーヒーを口に運びながら、彼女に問いかける。
「みひろさんの幸せって、何?」
「幸せ、ですか…?」
目を伏せて、少し…考え込むような彼女のその姿。佇まいが美しくて、気品がある。
元々の造作だけでなく…存在そのものに高貴さがあり、美しい。
特に、このクラシカルなインテリアにとても馴染んでいる様子は、彼女が昔から重厚で歴史のあるインテリアに囲まれ、丁寧な暮らしを心がけてきた…そんなことを顕しているように感じた。
「今…幸せです」
「…ほんとに?」
はい、という代わりにオレと目を合わせてうなずく彼女。
これからアオが行うカウンセリング…それが、本当に彼女の幸せにつながるのか。オレはまだ葛藤していた。
今までのままでもいいんじゃないか?
みひろさんは本当に変わることを望んでいるのか?
オレに合わせてくれているだけじゃないのか?
オレの要望を…断ったことがない彼女だから。だから…。
止めるなら、今だ。アオは…もう電車に乗ってこっちに向かっているかもしれないが、連絡すれば引き返せる。
彩花ちゃんが何をどう感じてパニック症を引き起こしたのかはわからない。
けど、彩花ちゃんにその症状が出るくらい、きっと…みひろさんは不安なんだ。
オレの勝手な思いで、大切な人に、不安な思いをさせていいのか…?
「みひろさん、オレ…」
「宇丈さんといられるのが、私の幸せです」
そうきっぱりと言い切る彼女が、あまりにも愛おしく…。アオがくるから、と思って我慢していたのに、オレの中で抗えないほどの愛情が湧く。
「…こっち来て」
「はい…」
「ここ、座って?」
膝の上を示すと、躊躇したが…そっとオレの上に座った。
こんな風に長い時間を過ごせるのは初めてだった。いつもは話をする時間がないから、今回は本当に貴重なチャンスだ。みひろさんのことを色々と知ることができる。
アオのカウンセリングのことは忘れ、学生時代の話や幼少時の思い出、趣味や仕事のこと…思いつくままに喋り、聞いた。
普段のオレは、どっちかというと口数が少ない方だ。
仕事柄多少の社交トークはできるが…プライベートではあまり喋る方じゃない。
けど、みひろさんのことを知りたくて…自分の話を引導にして、彼女のことを聞いた。
「ね、みひろさん」
「はい」
淹れてもらったコーヒーを口に運びながら、彼女に問いかける。
「みひろさんの幸せって、何?」
「幸せ、ですか…?」
目を伏せて、少し…考え込むような彼女のその姿。佇まいが美しくて、気品がある。
元々の造作だけでなく…存在そのものに高貴さがあり、美しい。
特に、このクラシカルなインテリアにとても馴染んでいる様子は、彼女が昔から重厚で歴史のあるインテリアに囲まれ、丁寧な暮らしを心がけてきた…そんなことを顕しているように感じた。
「今…幸せです」
「…ほんとに?」
はい、という代わりにオレと目を合わせてうなずく彼女。
これからアオが行うカウンセリング…それが、本当に彼女の幸せにつながるのか。オレはまだ葛藤していた。
今までのままでもいいんじゃないか?
みひろさんは本当に変わることを望んでいるのか?
オレに合わせてくれているだけじゃないのか?
オレの要望を…断ったことがない彼女だから。だから…。
止めるなら、今だ。アオは…もう電車に乗ってこっちに向かっているかもしれないが、連絡すれば引き返せる。
彩花ちゃんが何をどう感じてパニック症を引き起こしたのかはわからない。
けど、彩花ちゃんにその症状が出るくらい、きっと…みひろさんは不安なんだ。
オレの勝手な思いで、大切な人に、不安な思いをさせていいのか…?
「みひろさん、オレ…」
「宇丈さんといられるのが、私の幸せです」
そうきっぱりと言い切る彼女が、あまりにも愛おしく…。アオがくるから、と思って我慢していたのに、オレの中で抗えないほどの愛情が湧く。
「…こっち来て」
「はい…」
「ここ、座って?」
膝の上を示すと、躊躇したが…そっとオレの上に座った。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる