Love affair〜ラブ アフェア〜

橘 薫

文字の大きさ
117 / 171
❤︎本当の私❤︎真柴みひろ

5

しおりを挟む
「取り戻す?」
「そうです」
「意味が、わかりません…」
「休憩しようって言いましたけど、ここまではやっといた方が良さそうだな」
 青島さんは呟くように言った。

「30分くらい、いいですか?」
「はい」
「じゃあ、目を閉じて」
 さっきの丁寧な誘導とは違い、今度はあっさりと始まった。
 その内容も、先程とは違う…言われるがままに様々なイメージをした。
 形や色、匂い、触感…そういうもので表していく。
 自分のこと。
 家族のこと。
 本来の自分と、今の自分…不思議。

 本来の私、と問いかけるとイメージが出てくる。
 とても美しい大輪の百合だった。
 今の私は…枯れかけている小さな百合。その百合を雁字搦めにしている血の色の鎖。
 誘導に従い、イメージの中でその鎖を解き、燃やし、灰にする…。

 自由になった百合の花は、大地から水を吸い上げ、きらめく太陽の光を浴びる。
 今まで…水を吸い上げることも、太陽の光を浴びることも許していなかった。ずっと、暗くてジメジメとした場所で生きてきたのだ。

 陽の光の暖かさ。吸い上げる水の美味しさ。葉脈を伝い、全身に染み渡る水の恵み。
 生きている…そのことへの感謝…あ、この気持ち…幼少期はよく感じていた…。
 気持ち良く、心地よくその恩恵を遠慮せずに全身で受け取ると、体の奥から暖かな何かが湧いてくるのを感じた。

 青島さんの声が、私を誘導する…。
「本来のご自身と今のご自身のイメージを、重ねることは出来ますか?」
「…はい」
 目を閉じたまま、元気になった百合の花を、本来の自分を象徴する百合の花に重ね合わせる…あ、綺麗に重なった…。

「重ねてみたらどんな感じですか?」
「すごく…落ち着いて、安心してます…自由で、楽です」
「違和感や変な感じ、不安はありますか?」
 全身に感覚を伸ばしてみる…何も、滞るものや引っかかるもの…ない、大丈夫…。

「いいえ、何もないです、快適です」
「…良かった、ではゆっくり呼吸に意識を戻して…」
 再び、青島さんの誘導に身を任せる。目を開けたとき…一瞬、世界が違うような気がした。

「気分はどうですか?」
「…すごく、すっきりしてて…温かいです…」
「体、少しずつ動かして慣らしましょうか」
 指、腕、肘、膝…曲げたり伸ばしながら、少しずつ感覚を取り戻していく。
 なんだろう…本当に不思議…。こんなセラピーは、初めてだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...