Love affair〜ラブ アフェア〜

橘 薫

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❤︎解放❤︎真柴みひろ

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 さっきと同じように、上からは宇丈さん、下からは青島さんが…私の体を愛する。
 触れられ、撫でられ、舐められて…感じやすいところを探り出す指先。

 空気が動いたのを表すように、焚かれているアロマの香りがふわりと動く。視野を奪われたからなのか、嗅覚が敏感…。

 イランイランの官能的な甘い香り。体の中心を疼かせるような、うっとりと酔わせるような…。ずっと嗅いでいると、頭が少しぼんやりとしてくる。

 青島さんは、必ず体のどこかに手を触れさせている。それはなんとなく私を安心させた。
 二人の手はとても似ているけれど…青島さんの手のひらの方が肉厚で、大きくて。宇丈さんの指の方が…少し筋張っている。

 体中を触れられ、撫でられ、愛されて。だんだんと、どちらがどちらなのか判断がつかなくなってくる。手枷で自由にならない手を動かしても、宇丈さんに触れなくて…不安になった。

「ここにいるよ」
 聞こえたのは足元の方からだった。いつの間に…移動したんだろう?
 宇丈さんの手…が、内腿にかかる。そっと、草むらを分ける指先。温かな手の平で、大切な部分をそっと…被せるように触れられた。

「ふっ…、ん…」
 その手のひらの心地よさ、温かさ、優しさに…思わず涙が出そうになる。
 私…。
 私…。

 その思いは、突然浮かんだ。
 浮かんだだけでなく、私自身を満たして…溢れた。

 私…。白石みひろで、いいんだ。それが私なんだ。
 白石の血を継いでいなくても。祖母が私を嫌いでも。白石の恥だと言われても。母が、父が私の味方をしなくても。
 この名前が私なんだ。私の名前なんだ。真柴の姓に変わっても、私が白石みひろであることは変わりない。

 誰かの理想にならなくていい。演じなくていい。
 ありのままで。私の、ままで…。

 堰を切ったように…嗚咽が漏れ、涙を止めることができない。涙と一緒に、何かの感情も溢れていく。
 ああ…こんなにも、自分を追い詰めていたなんて…。

 溢れる涙が流れるままにした。
 きっと、宇丈さんも青島さんも、驚いているに違いない。
 それでも泣き続けた。泣いて、泣いて、泣いて、泣き続けた。

 涙の中で私は安心しきっていた。泣けるほどに、私はリラックスしたのだ。
 生まれて初めて感じた、この安心感。私が私でいい、という赦し。存在の根源を認め、受け入れる…それが、できたのだ。
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