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朝食(1)
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アルベールの「人間用の食事」は気まぐれだ。
元来他の生物の血液を栄養源とする吸血鬼に人間のような食事は必要ないのだが、彼は嗜好品として時々他の食べ物を口にするのだそうだ。
今は季節の果物がお気に入りな様なので、レナは最近は朝に屋敷の庭園に実った果実を調理して出すことにしていた。
「おはようございます、アルベール様。朝食をお持ちしました」
「んー……、眠い……」
「駄目ですよ、起きてください」
レナが朝食を載せたキッチンカートを押しながら彼の部屋に入ると、アルベールはベッドの上でシーツにくるまり気だるげに丸くなっていた。
彼は太陽こそ平気であったが、やはり明るい時間帯はあまり得意ではないらしい。日が昇っている間は大抵こんな具合で調子が悪そうだ。
「朝食、要りませんか……?」
「せっかくレナが用意してくれたんだから、食べるよ。ここまで持って来て」
レナはキッチンカートを彼のベッド横まで運んだ。
「今朝はトーストとフルーツの盛り合わせをご用意いたしました」
「ん、」
レナが運んできたトレイには、黄金色の蜂蜜が乗ったトーストの周りに一口大にカットされた色鮮やかなフルーツが敷き詰められていた。
ムクリと起き上がったアルベールは、レナに向かって大きく口を開けた。
「?」
「きょとんとしてないで、ほら、食べさせてよ」
「! ッ、申しわけありません!」
レナは慌てて狐色に焼けたトーストをナイフとフォークで切り分けた。とろりと垂れる蜂蜜がシーツに溢れないよう、左手を受け皿にしてアルベールの口にトーストを運ぶ。
しかし彼はそれをすぐに食べようとはしなかった。
「それじゃ食べにくいから、ベッドに上がって」
「は、はい……失礼します」
アルベールが自身の膝の上をポンポンと叩くので、レナはその上に跨がった。
対面になって再び口の前まで運ばれたトーストを、彼はぱくりと口に入れる。モグモグと静かに咀嚼し終わると、すぐにまた口が開けられた。
綺麗に揃った真っ白な歯の中に、二本だけ大きくて鋭く尖った牙が見える。その綺麗な赤い口の中に、レナは丁寧に朝食を運んでいった。まるで親鳥が雛に給餌をしているようだ。黙々と運ばれたトーストを口に入れては新たにもう一口をねだるアルベールの姿は、小さな子供のようで何だか可愛らしかった。
「美味しいですか?」
「うん。レナもお食べよ。今度は俺が食べさせてあげる」
「えっ……?」
戸惑うレナからフォークを奪って、アルベールはフルーツをレナの口の前に持ってきた。メイドが主と一緒に、それも主の皿の物を口にして良いものなのかとレナは困惑したが、それをやれというのは他でもない主である。
一瞬、間を空けて、レナはおずおずと勧められた果実を口に入れた。
「ふふふっ、美味しい?」
「はい」
「じゃぁ、もっとあげる」
レナの口に、今度は蜂蜜をたっぷり付けた苺が押し込められる。丸ごとの苺はなかなか大きく、そのまま口に入れるには少しキツそうだったが、レナは苦しげに小さな口でそれを受け入れた。
「まだ欲しいよね?」
「んっ……は、い……」
レナが苺を咀嚼したのを確認し、アルベールは彼女の口元に再び新しい苺を押し込めた。
受け止めきれずレナの口の端から垂れた蜂蜜を、指で掬って唇に塗りつける。指は彼女の唇をなぞった後、そのまま上唇と下唇の間に差し込まれたが、受け入れる準備をしていないレナは口を閉じたままだった。
「ほら、口開けて」
「あ、うっ……申し訳ありません……」
遠慮がちに開かれたレナの口に蜂蜜がついた彼の中指と人差し指が侵入する。
アルベールの二本の指が彼女の口内の粘膜を掻き回すと、ぬちゃりと唾液と蜂蜜が混ざる音がした。
「んぅ……ん、」
レナは液体が溢れないようにアルベールの指を吸い、こくんと嚥下した。その様子を見たアルベールは一度指を引き抜き、指で皿の上の蜂蜜を掬って再びレナの口内に侵入させる。
彼が奥に引っ込んだレナの舌を掴まえて表面を撫でると、彼女は熱に浮かされたような表情で再びアルベールの指をちゅうちゅうと吸った。
「かわいい……」
アルベールがわざと指をレナの喉の奥まで突っ込む。
「……っ?! うぐっ?!」
しかしレナは苦しげに顔を歪めただけで、彼の指を吸うことは止めなかった。ちらちらとアルベールの顔色を窺いながら、遠慮がちに小さな舌をその指に這わせる。
その様子に、アルベールは満足げな笑みを浮かべた。
「今度はレナの口から食べさせて」
「……はい」
レナは言われるがまま皿から果実を取ると、それを口に咥えアルベールの唇に寄せた。
「ん、」
彼女が果実を落とさないように舌でアルベールの口内に押し込むと、彼は器用にレナの舌に自分の舌を絡めて果実ごと自らの口内に誘い入れた。
「ふっ、……ん」
噛み砕かれた果実の欠片が再びレナの口内に戻され、甘い果汁とフルーツの香りが彼女の口いっぱいに広がる。口の端から零れそうになった果汁を、アルベールは舌で舐め取って受け止めた。
「レナ、興奮してる?」
「っ、……そんな、こと……」
唇を離すと、彼はレナの下腹部を撫でた。
「本当に? 見せてみて」
「…………」
アルベールに言われ、レナはおずおずと自らのスカートの端をたくしあげ、胸下の辺りまで持ち上げた。
元来他の生物の血液を栄養源とする吸血鬼に人間のような食事は必要ないのだが、彼は嗜好品として時々他の食べ物を口にするのだそうだ。
今は季節の果物がお気に入りな様なので、レナは最近は朝に屋敷の庭園に実った果実を調理して出すことにしていた。
「おはようございます、アルベール様。朝食をお持ちしました」
「んー……、眠い……」
「駄目ですよ、起きてください」
レナが朝食を載せたキッチンカートを押しながら彼の部屋に入ると、アルベールはベッドの上でシーツにくるまり気だるげに丸くなっていた。
彼は太陽こそ平気であったが、やはり明るい時間帯はあまり得意ではないらしい。日が昇っている間は大抵こんな具合で調子が悪そうだ。
「朝食、要りませんか……?」
「せっかくレナが用意してくれたんだから、食べるよ。ここまで持って来て」
レナはキッチンカートを彼のベッド横まで運んだ。
「今朝はトーストとフルーツの盛り合わせをご用意いたしました」
「ん、」
レナが運んできたトレイには、黄金色の蜂蜜が乗ったトーストの周りに一口大にカットされた色鮮やかなフルーツが敷き詰められていた。
ムクリと起き上がったアルベールは、レナに向かって大きく口を開けた。
「?」
「きょとんとしてないで、ほら、食べさせてよ」
「! ッ、申しわけありません!」
レナは慌てて狐色に焼けたトーストをナイフとフォークで切り分けた。とろりと垂れる蜂蜜がシーツに溢れないよう、左手を受け皿にしてアルベールの口にトーストを運ぶ。
しかし彼はそれをすぐに食べようとはしなかった。
「それじゃ食べにくいから、ベッドに上がって」
「は、はい……失礼します」
アルベールが自身の膝の上をポンポンと叩くので、レナはその上に跨がった。
対面になって再び口の前まで運ばれたトーストを、彼はぱくりと口に入れる。モグモグと静かに咀嚼し終わると、すぐにまた口が開けられた。
綺麗に揃った真っ白な歯の中に、二本だけ大きくて鋭く尖った牙が見える。その綺麗な赤い口の中に、レナは丁寧に朝食を運んでいった。まるで親鳥が雛に給餌をしているようだ。黙々と運ばれたトーストを口に入れては新たにもう一口をねだるアルベールの姿は、小さな子供のようで何だか可愛らしかった。
「美味しいですか?」
「うん。レナもお食べよ。今度は俺が食べさせてあげる」
「えっ……?」
戸惑うレナからフォークを奪って、アルベールはフルーツをレナの口の前に持ってきた。メイドが主と一緒に、それも主の皿の物を口にして良いものなのかとレナは困惑したが、それをやれというのは他でもない主である。
一瞬、間を空けて、レナはおずおずと勧められた果実を口に入れた。
「ふふふっ、美味しい?」
「はい」
「じゃぁ、もっとあげる」
レナの口に、今度は蜂蜜をたっぷり付けた苺が押し込められる。丸ごとの苺はなかなか大きく、そのまま口に入れるには少しキツそうだったが、レナは苦しげに小さな口でそれを受け入れた。
「まだ欲しいよね?」
「んっ……は、い……」
レナが苺を咀嚼したのを確認し、アルベールは彼女の口元に再び新しい苺を押し込めた。
受け止めきれずレナの口の端から垂れた蜂蜜を、指で掬って唇に塗りつける。指は彼女の唇をなぞった後、そのまま上唇と下唇の間に差し込まれたが、受け入れる準備をしていないレナは口を閉じたままだった。
「ほら、口開けて」
「あ、うっ……申し訳ありません……」
遠慮がちに開かれたレナの口に蜂蜜がついた彼の中指と人差し指が侵入する。
アルベールの二本の指が彼女の口内の粘膜を掻き回すと、ぬちゃりと唾液と蜂蜜が混ざる音がした。
「んぅ……ん、」
レナは液体が溢れないようにアルベールの指を吸い、こくんと嚥下した。その様子を見たアルベールは一度指を引き抜き、指で皿の上の蜂蜜を掬って再びレナの口内に侵入させる。
彼が奥に引っ込んだレナの舌を掴まえて表面を撫でると、彼女は熱に浮かされたような表情で再びアルベールの指をちゅうちゅうと吸った。
「かわいい……」
アルベールがわざと指をレナの喉の奥まで突っ込む。
「……っ?! うぐっ?!」
しかしレナは苦しげに顔を歪めただけで、彼の指を吸うことは止めなかった。ちらちらとアルベールの顔色を窺いながら、遠慮がちに小さな舌をその指に這わせる。
その様子に、アルベールは満足げな笑みを浮かべた。
「今度はレナの口から食べさせて」
「……はい」
レナは言われるがまま皿から果実を取ると、それを口に咥えアルベールの唇に寄せた。
「ん、」
彼女が果実を落とさないように舌でアルベールの口内に押し込むと、彼は器用にレナの舌に自分の舌を絡めて果実ごと自らの口内に誘い入れた。
「ふっ、……ん」
噛み砕かれた果実の欠片が再びレナの口内に戻され、甘い果汁とフルーツの香りが彼女の口いっぱいに広がる。口の端から零れそうになった果汁を、アルベールは舌で舐め取って受け止めた。
「レナ、興奮してる?」
「っ、……そんな、こと……」
唇を離すと、彼はレナの下腹部を撫でた。
「本当に? 見せてみて」
「…………」
アルベールに言われ、レナはおずおずと自らのスカートの端をたくしあげ、胸下の辺りまで持ち上げた。
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