キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

文字の大きさ
3 / 120

第3話 『則』、それは世界を統べる力

しおりを挟む
 この世界は法則で回っている。

 リンゴが木から落ちるのも、風で木々が揺れるのも、日差しで体が熱を得るのも全て法則だ。



 そして法則が連動し、繋がってこの巨大な半径6371kmの天体を形作っている。

 水が蒸発し、空に昇って氷の粒に成り、粒が集まって雲と成り、重くなって雨に成り、地面に落ちて植物に吸われ、結実し熟れて地に落ち、人が食して体を巡りまた繰り返す、、、



 こうしてみると人間は複雑な法則の集合体で、法則の一部だ。

 『ストークスの法則』『ドルトンの法則』『マクスウェルの速度分布則』『エネルギー等分布の法則』『エントロピー増大の法則』『力学的エネルギー保存の法則』、、、何一つ欠けても人体は成立しない。

 まさに法則の総合芸術、個人の体内には法則の宇宙が広がっている、、、



 しかし人体が法則の一部だと捉えるのならば、法則は人体の一部だとも捉える事ができる。

 法則が人体に影響を及ぼすことが出来るのならば、人体の側から法則に影響を及ぼせえる筈だ。

 もし何かのきっかけで大昔に忘れてしまったていた法則との繋がりを思い出したのなら、、、其れは人類の進化か、はたまた退化か。



◇ ◇ ◇



「お前たちがもし生まれ変わった時の為にさ~、一つ良い事を教えといてやるよ」



 ルチアーノは震えながら我武者羅にマシンガンを連射してくる敵の攻撃を全て見えない刃で斬り落とし、最後に右手を軽く振って首を斬り飛ばしながら呟いた。

 当然だれもその言葉にリアクションを返す訳が無く、敵は間髪入れずに次々と弾丸が撃ち込み続ける。



「ちぇ、聞いてないか、、、まあ良いや。勝手に喋るからあの世で暇になったら一考しといてくれ」



 廃墟ビルの屋上から放たれたスナイパーライフルの弾丸をノールックでキャッチし、左手を軽く振ってビルを倒壊させた後にルチアーノは一人で話し始めた。



「俺達人間には13対の脳神経が有る。この脳神経っていうのは目とか鼻とかの器官を補助したり、器官と脳を繋いだり、脳と脳を繋いだり、とにかく様々な役割を果たしてるんだ」



 突如手榴弾が投げ込まれた。

 ルチアーノは一瞬爆炎に包まれるが爆炎すらも目視不能の刃で切り裂き四散させ、埃を払う様に小さく手を振った瞬間に手榴弾を投げた敵兵士の上半身が斜めに斬り裂かれる。

 トスンッという余りに軽い音を残して命がまた消えた。



「そしてこの13対のうち12対が機能解明されていて、残りの一対ッ通称『第13神経』は謎のまま、、、滅茶苦茶ロマン有るよな!!」



 熾烈な攻撃を受けてもなおベラベラと喋り続けるルチアーノの前に一本の刀を持った兵士が現れた。

 兵士は返り血で模様を付けた着物を着て、ゆらりとした力み一つない足取りでルチアーノに近づく。そして日の光を反射しキラリと輝く刀身を抜きはらった。



「しかし25年前、とある天才科学者が遂にこの神経の正体を突き止めた。その正体とは、唯一体外へと繋がっていた神経!!」



「キエェェイッ!!」



 ルチアーノが第13神経の正体を明かしたのと同時に兵士は残像が発生する速度で斬撃を放つ。

 しかしスルリと斬撃を回避しながらルチアーノは話を続けたのだった。



「どうりで分からない筈だよね、、、凡百の科学者達は皆その第13神経に電気が流れた瞬間、体の何処が反応するのかだけを注視していたんだ。しかし天才は違った。第13神経に電流が流れた瞬間、体外のエネルギーの流れがどう変化するのかを見ていたッ!!」



 言葉の最後ではテンションが上がったのか踊るように攻撃を回避しだし、クライマックスで拳を刃に叩きつけてへし折った。



「思い返せば体外・体内の区別なんて人間が勝手に考えた概念だ。空にも、海にも、大地にも!! 何処にも『体内と体外は区別する』なんて明記されていないんだよ!!」



 地面の刀を叩きおられた兵士はヘナヘナと地面にへたり込んで意気消沈してしまい、数メートル先で眩しい光を放つ折れた刀身を見つめる。



「だから体外に干渉する器官が存在しても何もおかしい事は無い、、、そして事実存在した!! 第13神経は体外に繋がってエネルギーの流れ方や現れ方という法則に干渉していたんだよ」



 ルチアーノは嬉しそうに叫び散らかし、依然刀を折られたショックから立ち直れていない兵士を指さす。

 そしてゆーっくりと指を横に動かしてそれに合わせて兵士の首に切れ目が入っていき、最後はゴロリと兵士の首が落下し新たな噴水が出現した。



「しかし実際には、この神経は全人類平等に機能している訳ではない。これは人類が唯我的で外界と孤立した進化を歩む過程で錆び付いてしまった神経なのだよ」



 ルチアーノは絶望の雰囲気で満ちる戦場の中心で、突如上半身を反らし天を仰いだ。

 もう銃声は聞こえない、残った兵士は銃を構えたままプルプルと震え続けるのみ。



「自らを万物の霊長だと驕り昂った故に失われた世界との絆、、、しかし世界は我々と異なり寛容だ!! 選ばれし者が本気で力を求めたときッ世界は固く閉ざした門を僅かに開く!!」



 細かい瓦礫と硝煙交じりの風が吹く広場にルチアーノの声だけが響く。



「自らの全てを捧げても逃れ得ない絶望と憎しみに襲われた時、脳の偏桃体から強烈な電気信号が発生して錆び付いた第13神経を突き破り外界へと繋がって、、、奇跡を起こす」



 突如上半身を元に戻したルチアーノに周囲の兵士全員がビクンッ!!と小さく跳ねる。



「世界の法則全てが味方するんだ。此処では差し当たって脳が繋がった法則の力を『則』と呼ぼう。則を人為的のコントロールする事によって全ての事象を再現・制御できる」



 ルチアーノは右手平を宙に向けた。



「空間は常に量の差異こそ有れどエネルギーに満ちている。そのエネルギーの流れ方という法則に干渉すれば、、、」



 宙に向けた右手平の上の空間が歪み始める。



「容易に人体を破壊する力となる」



 そう言った瞬間、ルチアーノは自分の左側で棒立ちと成っていた兵士に歪みを投げつけた。

 ドウンッという重鈍な衝撃音と共に投げつけられた兵士が吹き飛び、壁に衝突して濁音を発し赤色の染みに変化する。



「ウッ、、、ウワァァァァァ!!」



 目の前で繰り広げられている出来事にリアリティーを感じられなく成っていた兵士達は、仲間の染みを見てこれが悪夢ではなく現実であると思い出した。

 そしてリアルな物として目の前に迫っている死を振り払う為に全ての火器を叩き込むが、何一つルチアーノに傷を負わせる事は出来ない。



「今のは運動エネルギー。エネルギーの発現方法っていうのは一つじゃなくて複数通り有るんだ、例えば熱・光・音・電気とかだね」



 ルチアーノはぶつぶつと喋り続けながら話題に上がった種類のエネルギー弾を生み出し、敵に打ち込んでいく。

 全身を焼かれる・体に大穴が開く・破裂四散する、一瞬で黒焦げに成る、、、過程に差異こそ有れど皆一様に死という結末を迎えて倒れていった。



「そして此処からは応用編」



 ルチアーノは血海の中で失禁している兵士をまっすぐ見据えなが言葉を発する。



「安心してくれ、最初は同じだ。先ずはさっきと同じようにエネルギーの流れを自分の手の平に集中させる、、、」



 手平の上が再び歪み始める。



 つい先ほどその歪みを叩きつけられ壁の染みと化した仲間の様子が目に焼き付いている兵士は、声に成らない高音を発して後退った。

 しかし血糊が摩擦を奪い上手く逃げる事が出来ない。



「此処からエネルギーを細く長く引き伸ばす。点では無く線、零次元から一次元への展開だ」



 ルチアーノは歪みに左手を被せ、ゆっくり持ち上げると其れを追って歪みが伸びて空中に歪みの線が出現した。



「此処で問題だ。このエネルギーの伝わる方向を一方向に固定したら如何なると思う?」



 ルチアーノはまるで子供向けに実験教室でも開いているかの様に質問を投げかけるが、投げ掛けられた本人は血海の中で藻掻く事に夢中で気付かない。



「正解は不可視の斬撃、無限の刃」



 固定されていたエネルギーが行き場を与えられ凄まじい速度で兵士の体を通り過ぎた。

 そして一秒ラグの後に柔らかい内臓から固い頭蓋骨まで美しく二分された、人間の開きが誕生したのだった。



「エネルギーを一点に集めたり、引き伸ばして研ぎ澄ましたり、進行方向を固定して無駄を無くすのは人間の得意分野だ」



 そう言いなが一段惨殺のペースを上げ、つい先ほどタネ明かしされた見えない斬撃を連射する。

 しかしタネが分かった所で回避出来る者など存在する筈も無く、みるみる内に屍山の標高は上がっていった。



「素晴らしいじゃないか! 森羅万象の象徴である法則と人類の特徴である最適化の融合、、、もはや芸術の域に達している」



 ルチアーノは摩擦を奪う血海の中で舞を踊る様に斬撃を放ち、世界への感謝を伝える生贄を捧げる。



「・・・つまり俺が何を言いたいかと言うと」



 もう悲鳴すら聞こえなくなった頃、ルチアーノは真っ赤に染まった世界の中でようやく動きを止めた。



「俺達世界そのものを銃刀で殺せる訳が無いんだよ、、、次生まれ変わった時は喧嘩は人間とだけするんだな」



 誰もいなくなった戦場で、辺りを埋め尽くすタンパク質の塊を灯の消えた目で見ながら呟いた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...