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第4話 法則を超越した怪物たち
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「・・・いつまで隠れて見てんだこの変態ッ!! 次お前の番だぞ、グラウディオス」
ルチアーノは数秒の沈黙の後、空に向かってそう呟く。
すると次の瞬間、空から真っ黒な塊が落下してきて建物の真上に落下して砂煙が舞い上がった。
「あ~あ、また瓦礫が増えちまったじゃねえか。お前らもっとお淑やかに戦争できねえのか、、、」
「フフッ、元から廃墟同然の町だっただろう。解体作業を肩代わりしてやたっただけだ、後は金を払って摩天楼を建築すれば良い。おっと、其方は我々と違って財政難でこのボロ小屋が限度だったか」
砂煙の中から返答が帰ってきて、真っ黒なコートを羽織った金髪の男が表れた。
先ほどの兵士達とは明らかに纏う空気感が違い、無知故の無謀では無くしっかり相手が何者なのかを理解した上で真っ直ぐ視線を返している。
「ボロ小屋の方がお前達の甘ったるいドラッグ臭がこびり付いたビルより数倍増しだわ」
ルチアーノは相手の嫌味に舌を出して応じた。
「・・・一つ言って良いか?」
「何だよ」
「私はグラウディオスでは無く、クラウディオだ!! もう十度以上お前とは戦っただろう! いい加減敵の最高幹部の名前くらい覚えたらどうだッ!!」
クラウディオスもといクラウディオはルチアーノを指差し叫んだ。
「あ、そうそうグラウディオだったね。ちょっとした言い間違いじゃん、怒んなよ」
「『グ』じゃなくて『ク』」
「・・・どうでも良くない?」
ルチアーノは突然興味を失った様にバッサリと会話を切った。
「どうしても俺に正しく名前を呼ばせたければ力で屈服させてみろよ。俺に一撃でも与えられた人間は稀だからな、、、もし攻撃を当てる事が出来れば俺の脳内メモリーに深くお前の名が刻み込まれるだろう」
「ふん、比喩では無く実際に首を切断しナイフで頭蓋骨に刻んでやろう。とびきり切れ味の悪いナイフでな」
「それは楽しみだな~」
突如二人の周囲を暴風が駆け抜け、辺りの温度が急降下し始める。
常人には僅かに空気感が変わった様に感じるだけだろう。しかし『則』を感知できる者であれば驚愕した筈だ、二人の体を包み込んだ膨大なエネルギーの塊に。
「開幕の一撃は、、、此方が貰うぞルチアーノッ!!」
クラウディオが沈黙を破り地面に手を当てる。
その瞬間地面が隆起し、数百の剣が湧き出ているかの様に鋭利な突起としてルチアーノに襲い掛かった。
「地面にエネルギーを流して隆起させたか、、、無駄に小綺麗で結構!!」
しかし大地の剣がルチアーノに届く事は無い、彼の体は既に空中に在ったのだ。
則のコントロールを極めれば人外の跳躍や空中浮遊など造作もない。
「敵のいないお庭で一人シコシコ作り上げた技だろうが、予備動作と地面が隆起するまでの時間がデカすぎて欠伸が出るわ!!」
ルチアーノは空中から煽り散らかす。
「『尖った岩を下から突き上げたら強いんじゃね?』とか考えたのか? 所詮卓上論だ、ガキの妄想だな!! 攻撃ってのはシンプルイズベストなんだよッ!!」
ルチアーノはまるでお手本でも示すかの様に空中から無骨で強力な斬撃を叩きこんだ。
「チッ、嘗めるなァァァッ!!」
額にうっすらと脂汗を浮かべ、クラウディオは五つの爪で宙を切り裂いた。
するとその残像に従って五つの斬撃が発生し、クラウディオの斬撃と衝突して重低音が響く。
「・・・クソッ! 化け物が!!」
クラウディオは一瞬追撃の構えを見せたが即座に解き、慌てて回避行動を取って地面を転がる。
その瞬間、不可視の斬撃が彼の一秒前まで立っていた場所を抉った。
(五つの斬撃を受けて相殺するどころか、威力を殆ど殺す事も出来ないのか・・・!! 本当に同じ人間なのか疑いたく成るぞ)
直撃すれば確実に死んでいたであろう斬撃の爪痕を凝視するクラウディオの前に、空からルチアーノが降りてきた。
その表情は渾身の一撃を放って満身創痍という訳では無く余裕と自信に満ち溢れており、全てが癪に障る。
「そうだな、、、グラウディオス君。地面から攻撃する最大のメリットは何だと思う?」
ニヤニヤしながらルチアーノは地面に突っ伏しているクラウディオに質問を投げ掛ける。
クラウディオは(もうコイツわざと名前間違えてるな)と思いながらも、何故か返答を返してしまった。
「・・・敵の意表を突ける。地面は人間にとって身近過ぎる故、人間は地面を警戒する事が出来ない」
「その通り! ザッツライッ!!」
クラウディオが返答した瞬間地面が突然隆起し、彼の体は宙に打ち上げられる。
「カハ、、、ッ!!」
彼は空中で一回転して無様に地面に叩きつけられる事と成った。
地面を隆起させる攻撃は則を使える者であれば比較的に容易に使用であきる攻撃法であり、予想外の攻撃という訳では無い。
しかしルチアーノの攻撃は全てが異質、通常であれば容易に回避できていた攻撃が全て強力で必中となり襲い掛かるのだ。
攻撃全てに尋常でない量のスキルが練り込まれている。
「地面からの攻撃最大のメリットが不意を突ける事なら、その攻撃にアクセスするまでの過程が最も需要だ。どんな凄腕の殺し屋も背中にロケットランチャーを担いでちゃ潜入何てできない、爪は隠してこそ意味が有る」
地面で今度は寝転がる事に成ったクラウディオを見下ろしながらルチアーノの話は続く。
「フレンドリーに話掛けて敵意が無い振りをしても良い。怯え震えて心砕かれた振りをしても良い。最も強いのは強者の姿をした強者ではなく、弱者の皮を被った強者である」
(弱者の振りをした、、、強者、、、)
クラウディオは自分を見下ろしている男の姿を見て、正にその通りだと思った。
マフィアのボスとはとても思えない質素な服装、三十代後半にも関わらず少年にしか見えない見た目、威厳の欠片も無い口調、威圧感を感じさせない体格、、、見た者全てが侮るであろう。
そしてルチアーノの正体を知る者であっても其れは同様、知らず知らずの内に侮ってしまう不思議な力がこの男には有るのだ。
(強さの極致は弱者の中に有るか、、、)
クラウディオは世の中の何とも皮肉が効いた結論に嘲笑を向け、震える足で立ち上がった。
「いいぞー、良く立ち上がった。じゃあ次はお前が俺の意表を突いてみろ」
(私が、奴の意表を突く、、、)
正直言って無理難題だ。
クラウディオの性格も実力も思惑も全て相手に知られた状態で弱者の振りなどしても意味が無い。
(だがしかし、弱者とは文字通り力無き精神脆弱な者という訳ではない。自らの武器を隠し通し、悟られない様にその武器が最大限効力を発揮しするシチュエーションを生み出す事、、、)
「ならば、私がすべき事はッ、、、」
彼の到達した答えは言葉と成って外界に出る事は無かった。
何故なら完全に自分が攻撃する側だと思い込んでいたクラウディオの腹部を隆起した地面が突き上げ、宙に打ち上げたからだ。
ルチアーノは初めから相手に攻撃のターンを与えるつもりなど無かったのである。
「おいおい、さっき言ったばかっりじゃないか。爪は隠してこそ意味が有る、敵意が無いアピールをしろってな」
敵と正面から向き合って、一切の油断をしていなかったにも関わらずクラウディオは二度も完璧な不意打ちを喰らう事になった。
相手が生み出した隙を突くのでは無く、自ら主体的に隙を生み出していく高等テクニック。
「あ~、、、今回は随分と高く飛んだな~」
ルチアーノは苦痛と屈辱によって顔を赤く染めながら宙を舞うクラウディオを呑気に眺めながら呟いた。
ドンッという衝突音を上げてクラウディオは再び地面に叩きつけられる。
(ダメだ、、、戦闘能力も則のコントロールも心理戦も、全てにおいて奴の方が格上ッ)
クラウディオはレヴィアスファミリーに次ぐビッグファミリーの『グレイズファミリー』最高幹部であり№2だ。
当然彼の実力は人域を遥かに超えており、その気に成れば30分で街一つを消せる実力者なのだが上には上がいるというのが世の常。
今目の前に居る男が正しくそうで、ルチアーノが本気を出せば30秒で街が消えるだろう。
(私は人生において強くなる為に全てを捧げ、一度も手を抜いた事は無い。しかし何だこの奈落の如き差は、大して年も変わらないこの男と私が何処で差を付けられたというのだ・・・ッ!!)
ルチアーノが伝説と言われる数々の偉業を成し遂げきた事は知っている、しかし彼も同等の修羅場を数々超えて地獄の訓練を絶え凌いで今ここに居る。
その差が付いたとするならば、其れは生まれた瞬間以外に有り得ない。
(笑えるじゃないか。生まれた瞬間に全てが決まっていたとすれば、私が乗り越えた地獄の日々は? 鈍い痛みを発し続ける傷の意味は? 切り捨て来たモノ達は何の為にあった?)
彼の身体・記憶・心に刻まれた『過去』という傷が一斉に熱を発し始める。
いずれ誰よりも強くなり誰にも後ろ指刺される事無く誇れる日が来ると信じて隠し続けた傷は、気付けば化膿して壊死寸前であった。
傷が開き膿が漏れ出し、戦う理由が分からなく成る。
しかし、たった一つの言葉が彼に腐り落ちた建前の代わりに新たな本音を与える。
「どうした? その顔、さては自分の戦う意味とか下らない事を考えてるんだろ??」
何故かルチアーノはドンピシャでクラウディオの脳内を当てた。
「お前みたいな脳味噌で考えないと行動できない坊ちゃんに良い事を教えてやる。正義の為だとか強者は気高いとか下らない理由を語る奴も多いがな、人間はお前たちの想像の何倍も単純なんだよ。シンプルに『自分より強い奴がムカつく』でいいじゃねえか。『戦うのが楽しいから』で良いじゃねえか、、、脳味噌じゃなくて一度心で体を動かしてみろ」
この言葉を受けた瞬間クラウディオの中で何かが壊れる。
(そうか、、、戦う事に理由はいらない。始まりはそうだった、只管に強さに憧れた。自分よりも強い相手に挑み勝利する感動を知った。自分が今世界のどの位置に立っているのか知る事が楽しかったのだ)
そして喜びと狂気が混じった、もうこの世の全てがどうでも良くなった様な笑顔を浮かべて立ち上がった。
「そうだ、、、小綺麗なお題目など必要ない。醜い自尊心と理性が醜い凶暴性を隠していただけ、初めから獣に成っていれば良かった、、、」
クラウディオの空気感が変化し、体から血の匂いが溢れる。
「俺は強者と戦う事が好きだッ!! 肉を裂きッ骨を砕きッ命を擦り減らす事が好きだッ!! 勝利のビジョンも見えぬ強敵に挑み、そして打倒した死体を足蹴にする事に至高の喜びを感じる!!」
一人称が変化し、体は雷に貫かれて感電しているかの様に痙攣していた。
「これは殺意では無い感謝だ、親愛なる最強の敵に俺の全てを注ぎ込んだ思考の攻撃を捧げる」
血走った目でクラウディオが向けた人差し指をルチアーノは不敵な笑みを浮かべて見詰める。
「出てこい我が則獣ッ『プレディオーネ』!!」
クラウディオがそう叫んだ瞬間、彼の背後に時計を核として全身を無数の歯車や蒸気機関で構築された怪物が出現して空を巨大な隕石が覆った。
ルチアーノは数秒の沈黙の後、空に向かってそう呟く。
すると次の瞬間、空から真っ黒な塊が落下してきて建物の真上に落下して砂煙が舞い上がった。
「あ~あ、また瓦礫が増えちまったじゃねえか。お前らもっとお淑やかに戦争できねえのか、、、」
「フフッ、元から廃墟同然の町だっただろう。解体作業を肩代わりしてやたっただけだ、後は金を払って摩天楼を建築すれば良い。おっと、其方は我々と違って財政難でこのボロ小屋が限度だったか」
砂煙の中から返答が帰ってきて、真っ黒なコートを羽織った金髪の男が表れた。
先ほどの兵士達とは明らかに纏う空気感が違い、無知故の無謀では無くしっかり相手が何者なのかを理解した上で真っ直ぐ視線を返している。
「ボロ小屋の方がお前達の甘ったるいドラッグ臭がこびり付いたビルより数倍増しだわ」
ルチアーノは相手の嫌味に舌を出して応じた。
「・・・一つ言って良いか?」
「何だよ」
「私はグラウディオスでは無く、クラウディオだ!! もう十度以上お前とは戦っただろう! いい加減敵の最高幹部の名前くらい覚えたらどうだッ!!」
クラウディオスもといクラウディオはルチアーノを指差し叫んだ。
「あ、そうそうグラウディオだったね。ちょっとした言い間違いじゃん、怒んなよ」
「『グ』じゃなくて『ク』」
「・・・どうでも良くない?」
ルチアーノは突然興味を失った様にバッサリと会話を切った。
「どうしても俺に正しく名前を呼ばせたければ力で屈服させてみろよ。俺に一撃でも与えられた人間は稀だからな、、、もし攻撃を当てる事が出来れば俺の脳内メモリーに深くお前の名が刻み込まれるだろう」
「ふん、比喩では無く実際に首を切断しナイフで頭蓋骨に刻んでやろう。とびきり切れ味の悪いナイフでな」
「それは楽しみだな~」
突如二人の周囲を暴風が駆け抜け、辺りの温度が急降下し始める。
常人には僅かに空気感が変わった様に感じるだけだろう。しかし『則』を感知できる者であれば驚愕した筈だ、二人の体を包み込んだ膨大なエネルギーの塊に。
「開幕の一撃は、、、此方が貰うぞルチアーノッ!!」
クラウディオが沈黙を破り地面に手を当てる。
その瞬間地面が隆起し、数百の剣が湧き出ているかの様に鋭利な突起としてルチアーノに襲い掛かった。
「地面にエネルギーを流して隆起させたか、、、無駄に小綺麗で結構!!」
しかし大地の剣がルチアーノに届く事は無い、彼の体は既に空中に在ったのだ。
則のコントロールを極めれば人外の跳躍や空中浮遊など造作もない。
「敵のいないお庭で一人シコシコ作り上げた技だろうが、予備動作と地面が隆起するまでの時間がデカすぎて欠伸が出るわ!!」
ルチアーノは空中から煽り散らかす。
「『尖った岩を下から突き上げたら強いんじゃね?』とか考えたのか? 所詮卓上論だ、ガキの妄想だな!! 攻撃ってのはシンプルイズベストなんだよッ!!」
ルチアーノはまるでお手本でも示すかの様に空中から無骨で強力な斬撃を叩きこんだ。
「チッ、嘗めるなァァァッ!!」
額にうっすらと脂汗を浮かべ、クラウディオは五つの爪で宙を切り裂いた。
するとその残像に従って五つの斬撃が発生し、クラウディオの斬撃と衝突して重低音が響く。
「・・・クソッ! 化け物が!!」
クラウディオは一瞬追撃の構えを見せたが即座に解き、慌てて回避行動を取って地面を転がる。
その瞬間、不可視の斬撃が彼の一秒前まで立っていた場所を抉った。
(五つの斬撃を受けて相殺するどころか、威力を殆ど殺す事も出来ないのか・・・!! 本当に同じ人間なのか疑いたく成るぞ)
直撃すれば確実に死んでいたであろう斬撃の爪痕を凝視するクラウディオの前に、空からルチアーノが降りてきた。
その表情は渾身の一撃を放って満身創痍という訳では無く余裕と自信に満ち溢れており、全てが癪に障る。
「そうだな、、、グラウディオス君。地面から攻撃する最大のメリットは何だと思う?」
ニヤニヤしながらルチアーノは地面に突っ伏しているクラウディオに質問を投げ掛ける。
クラウディオは(もうコイツわざと名前間違えてるな)と思いながらも、何故か返答を返してしまった。
「・・・敵の意表を突ける。地面は人間にとって身近過ぎる故、人間は地面を警戒する事が出来ない」
「その通り! ザッツライッ!!」
クラウディオが返答した瞬間地面が突然隆起し、彼の体は宙に打ち上げられる。
「カハ、、、ッ!!」
彼は空中で一回転して無様に地面に叩きつけられる事と成った。
地面を隆起させる攻撃は則を使える者であれば比較的に容易に使用であきる攻撃法であり、予想外の攻撃という訳では無い。
しかしルチアーノの攻撃は全てが異質、通常であれば容易に回避できていた攻撃が全て強力で必中となり襲い掛かるのだ。
攻撃全てに尋常でない量のスキルが練り込まれている。
「地面からの攻撃最大のメリットが不意を突ける事なら、その攻撃にアクセスするまでの過程が最も需要だ。どんな凄腕の殺し屋も背中にロケットランチャーを担いでちゃ潜入何てできない、爪は隠してこそ意味が有る」
地面で今度は寝転がる事に成ったクラウディオを見下ろしながらルチアーノの話は続く。
「フレンドリーに話掛けて敵意が無い振りをしても良い。怯え震えて心砕かれた振りをしても良い。最も強いのは強者の姿をした強者ではなく、弱者の皮を被った強者である」
(弱者の振りをした、、、強者、、、)
クラウディオは自分を見下ろしている男の姿を見て、正にその通りだと思った。
マフィアのボスとはとても思えない質素な服装、三十代後半にも関わらず少年にしか見えない見た目、威厳の欠片も無い口調、威圧感を感じさせない体格、、、見た者全てが侮るであろう。
そしてルチアーノの正体を知る者であっても其れは同様、知らず知らずの内に侮ってしまう不思議な力がこの男には有るのだ。
(強さの極致は弱者の中に有るか、、、)
クラウディオは世の中の何とも皮肉が効いた結論に嘲笑を向け、震える足で立ち上がった。
「いいぞー、良く立ち上がった。じゃあ次はお前が俺の意表を突いてみろ」
(私が、奴の意表を突く、、、)
正直言って無理難題だ。
クラウディオの性格も実力も思惑も全て相手に知られた状態で弱者の振りなどしても意味が無い。
(だがしかし、弱者とは文字通り力無き精神脆弱な者という訳ではない。自らの武器を隠し通し、悟られない様にその武器が最大限効力を発揮しするシチュエーションを生み出す事、、、)
「ならば、私がすべき事はッ、、、」
彼の到達した答えは言葉と成って外界に出る事は無かった。
何故なら完全に自分が攻撃する側だと思い込んでいたクラウディオの腹部を隆起した地面が突き上げ、宙に打ち上げたからだ。
ルチアーノは初めから相手に攻撃のターンを与えるつもりなど無かったのである。
「おいおい、さっき言ったばかっりじゃないか。爪は隠してこそ意味が有る、敵意が無いアピールをしろってな」
敵と正面から向き合って、一切の油断をしていなかったにも関わらずクラウディオは二度も完璧な不意打ちを喰らう事になった。
相手が生み出した隙を突くのでは無く、自ら主体的に隙を生み出していく高等テクニック。
「あ~、、、今回は随分と高く飛んだな~」
ルチアーノは苦痛と屈辱によって顔を赤く染めながら宙を舞うクラウディオを呑気に眺めながら呟いた。
ドンッという衝突音を上げてクラウディオは再び地面に叩きつけられる。
(ダメだ、、、戦闘能力も則のコントロールも心理戦も、全てにおいて奴の方が格上ッ)
クラウディオはレヴィアスファミリーに次ぐビッグファミリーの『グレイズファミリー』最高幹部であり№2だ。
当然彼の実力は人域を遥かに超えており、その気に成れば30分で街一つを消せる実力者なのだが上には上がいるというのが世の常。
今目の前に居る男が正しくそうで、ルチアーノが本気を出せば30秒で街が消えるだろう。
(私は人生において強くなる為に全てを捧げ、一度も手を抜いた事は無い。しかし何だこの奈落の如き差は、大して年も変わらないこの男と私が何処で差を付けられたというのだ・・・ッ!!)
ルチアーノが伝説と言われる数々の偉業を成し遂げきた事は知っている、しかし彼も同等の修羅場を数々超えて地獄の訓練を絶え凌いで今ここに居る。
その差が付いたとするならば、其れは生まれた瞬間以外に有り得ない。
(笑えるじゃないか。生まれた瞬間に全てが決まっていたとすれば、私が乗り越えた地獄の日々は? 鈍い痛みを発し続ける傷の意味は? 切り捨て来たモノ達は何の為にあった?)
彼の身体・記憶・心に刻まれた『過去』という傷が一斉に熱を発し始める。
いずれ誰よりも強くなり誰にも後ろ指刺される事無く誇れる日が来ると信じて隠し続けた傷は、気付けば化膿して壊死寸前であった。
傷が開き膿が漏れ出し、戦う理由が分からなく成る。
しかし、たった一つの言葉が彼に腐り落ちた建前の代わりに新たな本音を与える。
「どうした? その顔、さては自分の戦う意味とか下らない事を考えてるんだろ??」
何故かルチアーノはドンピシャでクラウディオの脳内を当てた。
「お前みたいな脳味噌で考えないと行動できない坊ちゃんに良い事を教えてやる。正義の為だとか強者は気高いとか下らない理由を語る奴も多いがな、人間はお前たちの想像の何倍も単純なんだよ。シンプルに『自分より強い奴がムカつく』でいいじゃねえか。『戦うのが楽しいから』で良いじゃねえか、、、脳味噌じゃなくて一度心で体を動かしてみろ」
この言葉を受けた瞬間クラウディオの中で何かが壊れる。
(そうか、、、戦う事に理由はいらない。始まりはそうだった、只管に強さに憧れた。自分よりも強い相手に挑み勝利する感動を知った。自分が今世界のどの位置に立っているのか知る事が楽しかったのだ)
そして喜びと狂気が混じった、もうこの世の全てがどうでも良くなった様な笑顔を浮かべて立ち上がった。
「そうだ、、、小綺麗なお題目など必要ない。醜い自尊心と理性が醜い凶暴性を隠していただけ、初めから獣に成っていれば良かった、、、」
クラウディオの空気感が変化し、体から血の匂いが溢れる。
「俺は強者と戦う事が好きだッ!! 肉を裂きッ骨を砕きッ命を擦り減らす事が好きだッ!! 勝利のビジョンも見えぬ強敵に挑み、そして打倒した死体を足蹴にする事に至高の喜びを感じる!!」
一人称が変化し、体は雷に貫かれて感電しているかの様に痙攣していた。
「これは殺意では無い感謝だ、親愛なる最強の敵に俺の全てを注ぎ込んだ思考の攻撃を捧げる」
血走った目でクラウディオが向けた人差し指をルチアーノは不敵な笑みを浮かべて見詰める。
「出てこい我が則獣ッ『プレディオーネ』!!」
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しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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