キング・オブ・アウト　～半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す！！

NEOki

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第23話　襲撃の予定

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「襲撃の予定が決まった。10月3日の夜10時に襲撃を仕掛ける」

　薄暗い部屋の中でオールバックの男の声が響いた。

　その瞬間室内の温度が急降下し、会談に参加している人間達が吐く息が白くなり始める。

「マダム落ち着けよ、ルチアーノ殺す前に俺達を凍死させるつもりか？」

　サングラスの男がテーブルの対面に座っている少女に向かって話しかける。

　すると少女は血走って両目を眼球がこぼれ落ちそうな程見開き、鬼の形相でサングラスの男を睨み付けた。

「私に今話し掛けるな、、、誰でも良いからバラバラにしたい気分だッ」

　少女が呟いた瞬間彼女を中心として氷点下の暴風が発生し、彼女の周囲熱エネルギーが奪われて氷に呑み込まれていく。

　オールバックの男もサングラスの男も彼女が今危険な状態である事を理解し、椅子を立ってテーブルから距離を置いた。

　どうやら因縁深いルチアーノとの決戦を控えて感情が暴走している様だ。

　しかし確実にソッとして置いた方が良い少女に一つの影が奇妙なステップを踏みながら近づく。

　この空気の読め無さ、当然ピエロである。

　そして少女に右手を掲げながら無駄にドスの効いた声で叫んだ。

「アイスエ～イジッ！！　あらら、コリャ良い女に成ったな・・・ニコ・ロッ、、、、」

　ピエロはセリフを言い終える前に、少女が右手をピエロの方に振って凄まじい冷気が襲い掛かかり氷付けにされた。

　そして大きな氷像となったピエロを少女が蹴り付け、彼の身体はバラバラに砕け散る。

　余りにも無残な死に方だが、既にもう見慣れた光景に驚く者は誰もおらずサングラスの男のみが口笛を拭いて喜びを表した。

「はぁ、、、無駄なことに時間を割きたくは無いのだがね。良いか、内部からの情報によるとその日はルチアーノの息子ディーノが10才に成る誕生日だそうだ」

「Wow!! happy birthday Dino!! Can you marry me?」

　オールバッグが脱線した話を元に戻そうとした瞬間、何処からともなく現われたピエロが茶々を入れて再び分けの分からない事を言う。

　しかしもう誰も驚く事もせず、一体前のピエロを殺した張本人である少女まで完全無視したまま話は進んでいく。

「加えてこの翌日にディーノはVCF大将ライオネル・ウィンザーの元へ修業へ修業に出されるらしい。つまりこの日は親子が一緒に過ごせる最後の日という訳だ、、、この日に皆のファミリーから軍を出して、レヴィアスに攻撃を仕掛けて貰いたい」

「おいおい、その話だと親子の大切な日をぶち壊しにして嫌がらせをしようって話にしか聞こえないな！」

　今度はピエロでは無く、サングラスが口を挟んだ。

「ルチアーノへ嫌がらせができる事は素晴らしい事だ、最高だよ。だが俺が聞きたいのは確実にルチアーノを殺せる作戦であって、幸せな家庭をぶち壊す悪戯の計画じゃない」

　サングラスはルチアーノに対してかなりの恐怖を抱いているようで、確実に自分達がルチアーノを殺せるような作戦を求めていた。

　彼は確実に百回やって百回確実に勝利できる、そんな根拠が無ければ行動するつもりは無い。

　今回はピエロのように発言を無視され事は無く、オールバックが丁寧に回答を返す。

「済まない、中途半端な場所で言葉に間を作ってしまった。作戦はこうだ、、、」

◇　◇　◇

「こうして最低でも奴を孤立させる事が出来れば、後は我々で一斉放火して殺すだけだ。確実で簡単な作戦であると思うが、、、何か異論は有るか？」

　オールバックは説明を終えて異論を求める。

「良いんじゃねえか？　上手く行けば俺達はアノ化け物と戦う必要も無く、勝手に自殺させて完全勝利も可能な作戦、、、俺好みだねッ」

「集中砲火も自殺も許さない、、、奴が孤立したら私が直接殺してやる。お前達は奴を嵌めた瞬間速やかに消え失せろ、、、私は私一人だけで嘗ての屈辱を果たす。これは命令だ」

　サングラスは全面的にオールバックが示した作戦に賛成し、少女は最後の殺し方以外は受け入れてくれた様だった。

　少女の一騎打ちを望む要望に関しては、実際に暗殺が始まれば此処での約束など意味を成さないので適当な受け答えをしておけば充分であろう。

「ああ分かった、貴方が好きなように暴れられる様に我々は裏方に徹しよう。思う存分過去の因縁に決着を付けてくれ」

　そのオールバックの言葉に少女は何もリアクションを返す事は無く、只管黙って何も無い空間を見詰めていた。

　無言という事は肯定という意味である。

（自分の感情以外は全く興味の無いバトルマシン、取り扱いを誤れば私であっても危険だが扱い方さえ分かれば簡単だ。所詮は力が強いだけの人形風情、ルチアーノが消えた後はお前の番だッ）

　自らの感情を排除して紳士的に振る舞っていたオールバックの口端が僅かに上がった。

　彼の奥深くで買われている欲望と暴力性に溢れた怪物が、ルチアーノ暗殺が現実味を帯び始めて緩んだ心の檻から顔を出す。

　そんなオールバックの醜い内面を察知したのか、少女は身体の向きを一切変えないまま大きく見開いた両目を動かして睨みつけた。

（おっと、未だ油断は大敵だな、、、少なくとも今はマダムの力は必要不可欠だ）

　オールバックは表情を再び無表情に変え、この会談の進行役としての役割に戻り面倒事が起こる前にこの会議を終わらに入る。

　此処のメンバーの相性は何処を切り取っても最悪だ、1秒でも長居はしたくない。

「よし、今回は此れで話は終了だ。日時は皆覚えているな？」

「4月21日ッ！！」

　ピエロが月も日も全く被っていない日付を叫んだが、当然誰も反応しなかった。

　そもそも始めからピエロが日付を覚えてくれるとは思っていない、決行当日に迎えに行って『一度限りの願い』を利用し戦力を底上げしてくれれば其れで良い。

　信頼しているのはその力のみで、作戦行動など始めから期待していない。

「皆覚えている様だな。次会う時はルチアーノ暗殺当日だ、その時に備えて陽動攻撃の準備と世界最強と対峙する覚悟を決めておいてくれ。では、解散ッ」

　オールバッグの男はそう言った瞬間闇に姿を消した。

「しかし、まさか全世界を敵に回して暴れ回ったレヴィアスファミリーが内側から食い破られて滅びるとはなッ。感情等という不確実な物を頼るからこうなる、不完全な悪には死有るのみだ！」

　サングラスの男はその言葉と高笑いを残し、闇に呑まれて消えていった

「もうすぐだ、、、もうすぐ私が世界最強の座を手に入れる。最強は父でもルチアーノ・バラキアでも無い、この私だッ！！　数年前の屈辱、此処で百倍にして返すぞルチアーノッ！！」

　少女は堪えていた物が溢れ出した様に満面の笑みを浮かべ、拳を叩き付けて漆黒のテーブルを粉々に砕きながら叫んぶ。

　その声は凍て付く様な憎悪と歓喜が入り交じった複雑なモノであった。

　粉々に砕けちゃったテーブルを満足そうに見下ろした後、彼女の身体も闇に吸い込まれて消える。

　そして結局、今回もピエロが一人だけ取り残された。

「ようやくこの時が来たな、ホーガン。此処から世界は急展開を始めるぞ、、、果たして君は俺達を倒してボスを殺せるのかね？　ディーノきゅん！！」

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