51 / 120
第51話 唯一で最高な答え
しおりを挟む
(恐らく此処にいる兵士達は前線で任務に就いていた者達、この流れの速い運河で小型の船を利用すればエンジン無しで速度が出る事を知らないッ)
トムハットは敵兵士達の様子からそう推理した。
燃料を抜いたのでもう安心とばかりに警備の目が緩くなり、殆どの兵士が船着き場の入り口付近を警戒して燃料を積んだタンクの場所は殆ど警戒されていなかったのである。
(コレなら何とかタンクの方まで辿り着ける。後はレバーを回して燃料を漏れ出させ、其処に火を付ければ大爆発が起きるはずだッ)
トムハットは監視の目を掻い潜り、タンクへ辿り着く為のルートまで完璧に計画していた。
しかしたった一つだけ問題があった。
それはタンクを爆発させた後に自分がどうやって逃げるのかという点が、全く思い付いていないという問題であった。
爆発が即座に発生すれば確実に巻き込まれるし、運良く爆発までラグが発生しても集まってきた兵士達によって殺されるだろう。
(だが、それが如何した!!)
トムハットは端から自分の命など勘定に入れてはいなかった。
ディーノを預かったその日から、自らの時間も命も全てこの子の為に使おうと決めていたのだ。
爆発に巻き込まれてバラバラになる? 敵に見つかって蜂の巣にされる? 全て予定通りで望んだ結末である。
いずれ世界を背負い、誰も成し得なかった偉業を遂げる最後の英雄に全てを捧げられた事だけが彼の人生の誇りであった。
「よし、行くぞッ」
トムハットは薄笑いを浮かべ、自らの有終の美を飾るために動き始めた。
遙か昔、まだ彼が本気で兵士を目指していた頃に習った技術やその当時習っても出来なかった技術をフル活用して監視の目を突破していく。
片足にも関わらず音も無く移動し、投石で兵士の注意を逸らして隙を生み出し、動き続ける兵士の位置に合わせてルートを常に最適な状態へ更新していくのだ。
(まさか自分で言った事を自分で実感するとはな…守る人がいるから限界を超えられるか)
ルチアーノの身を心配するディーノの為に掛けた言葉、其れはトムハットが即席で作った言葉であった。
ディーノに一先ず脇目も振らず逃げさせる為に作った言葉、本当に人間が限界を超えられると確信を持っていた訳も無い。
しかし言霊とは不思議な物で、その言葉に幾度も救われて今日だけは本当にヒーローに成れた様な気分だった。
(待ってろよディーノ。お前がヒーローと呼んでくれた事に恥じない様、私が全力でお前を助けてやるからな!!)
彼にとって、ディーノと過ごしたこの数年間は身に余る様な幸福であった。
誰かに必要とされ、誰かを死に向けて送り出す事しかできなかった自分が誰かの為に自分の命を捧げる事が出来る。
とても幸せであった。
そして等々、トムハットは片足にも関わらず人間離れした動きで燃料タンクまで辿り着いた。
大胆に行動したにも関わらず、素晴らしい隠密テクニックによって巡回を掻い潜り全ての兵士を出し抜いて辿り着いたのである。
(よし、これで後はレバーを回して燃料に火を付けるだけッ……)
トムハットは人生最大の使命を果たすため、タンクに取り付けられた赤色のレバーに手を掛けようとする。
しかし此処で突如神を呪いたくなる様な出来事が起こった。
レバーが回転しない様に金属製の鎖によってガチガチに固定され、人力で開けられない様に成っていたのだ。
想定外の自体に、興奮で赤く染まっていた顔が一瞬で真っ青に変化する。
(おいッ! おい嘘だろッ!! ここまで来てッここまで来て何でッ!!)
レバーに絡み付いた鎖を外そうと力の限り引っ張るが、手の皮が捲れて血が吹き出しても全く外れる兆しは見られない。
固く結ばれた金属の鎖を人間の力だけで外すのは不可能であった。
だが当然トムハットは諦めず、ズボンのポケットからナイフを取り出して鎖に叩き付ける。
しかし果物を切る程度の力しかないナイフでは、金属製の鎖を断ち切る事は不可能であった。
虚しく跳ね返された刃の上半分がへし折られて宙を舞う。
「クッソォォォッ!! 如何してッ何で今時に限って!!!!」
トムハットは鎖を切ることは諦め、タンクに直接穴を開けようと折れたナイフをタンクに叩き付ける。
しかしドンドンッという低い音が出るだけで、全く穴は開かず跳ね返された。
こうなると彼の焦りはピークに達する。
もう既にディーノは船に乗り込んだ筈であり、このまま自分が爆発を起こせず兵士の注意を引かなければ確実にディーノが撃ち殺されてしまう。
其れだけは何としてでも回避しなくてはならない。
その時、背後から声がした。
「おい貴様ッ!! 何をしている!!」
其れはトムハットが出した絶叫とタンクにナイフを叩き付ける音を聞きつけた兵士の声であった。
その声を聞いた瞬間、トムハットの脳内に一つのアイディアが浮かんだ。
(私ごと背後のタンクを銃で撃たせれば……爆発が発生して注意を引けるのでは?)
トムハットは敵兵士達の様子からそう推理した。
燃料を抜いたのでもう安心とばかりに警備の目が緩くなり、殆どの兵士が船着き場の入り口付近を警戒して燃料を積んだタンクの場所は殆ど警戒されていなかったのである。
(コレなら何とかタンクの方まで辿り着ける。後はレバーを回して燃料を漏れ出させ、其処に火を付ければ大爆発が起きるはずだッ)
トムハットは監視の目を掻い潜り、タンクへ辿り着く為のルートまで完璧に計画していた。
しかしたった一つだけ問題があった。
それはタンクを爆発させた後に自分がどうやって逃げるのかという点が、全く思い付いていないという問題であった。
爆発が即座に発生すれば確実に巻き込まれるし、運良く爆発までラグが発生しても集まってきた兵士達によって殺されるだろう。
(だが、それが如何した!!)
トムハットは端から自分の命など勘定に入れてはいなかった。
ディーノを預かったその日から、自らの時間も命も全てこの子の為に使おうと決めていたのだ。
爆発に巻き込まれてバラバラになる? 敵に見つかって蜂の巣にされる? 全て予定通りで望んだ結末である。
いずれ世界を背負い、誰も成し得なかった偉業を遂げる最後の英雄に全てを捧げられた事だけが彼の人生の誇りであった。
「よし、行くぞッ」
トムハットは薄笑いを浮かべ、自らの有終の美を飾るために動き始めた。
遙か昔、まだ彼が本気で兵士を目指していた頃に習った技術やその当時習っても出来なかった技術をフル活用して監視の目を突破していく。
片足にも関わらず音も無く移動し、投石で兵士の注意を逸らして隙を生み出し、動き続ける兵士の位置に合わせてルートを常に最適な状態へ更新していくのだ。
(まさか自分で言った事を自分で実感するとはな…守る人がいるから限界を超えられるか)
ルチアーノの身を心配するディーノの為に掛けた言葉、其れはトムハットが即席で作った言葉であった。
ディーノに一先ず脇目も振らず逃げさせる為に作った言葉、本当に人間が限界を超えられると確信を持っていた訳も無い。
しかし言霊とは不思議な物で、その言葉に幾度も救われて今日だけは本当にヒーローに成れた様な気分だった。
(待ってろよディーノ。お前がヒーローと呼んでくれた事に恥じない様、私が全力でお前を助けてやるからな!!)
彼にとって、ディーノと過ごしたこの数年間は身に余る様な幸福であった。
誰かに必要とされ、誰かを死に向けて送り出す事しかできなかった自分が誰かの為に自分の命を捧げる事が出来る。
とても幸せであった。
そして等々、トムハットは片足にも関わらず人間離れした動きで燃料タンクまで辿り着いた。
大胆に行動したにも関わらず、素晴らしい隠密テクニックによって巡回を掻い潜り全ての兵士を出し抜いて辿り着いたのである。
(よし、これで後はレバーを回して燃料に火を付けるだけッ……)
トムハットは人生最大の使命を果たすため、タンクに取り付けられた赤色のレバーに手を掛けようとする。
しかし此処で突如神を呪いたくなる様な出来事が起こった。
レバーが回転しない様に金属製の鎖によってガチガチに固定され、人力で開けられない様に成っていたのだ。
想定外の自体に、興奮で赤く染まっていた顔が一瞬で真っ青に変化する。
(おいッ! おい嘘だろッ!! ここまで来てッここまで来て何でッ!!)
レバーに絡み付いた鎖を外そうと力の限り引っ張るが、手の皮が捲れて血が吹き出しても全く外れる兆しは見られない。
固く結ばれた金属の鎖を人間の力だけで外すのは不可能であった。
だが当然トムハットは諦めず、ズボンのポケットからナイフを取り出して鎖に叩き付ける。
しかし果物を切る程度の力しかないナイフでは、金属製の鎖を断ち切る事は不可能であった。
虚しく跳ね返された刃の上半分がへし折られて宙を舞う。
「クッソォォォッ!! 如何してッ何で今時に限って!!!!」
トムハットは鎖を切ることは諦め、タンクに直接穴を開けようと折れたナイフをタンクに叩き付ける。
しかしドンドンッという低い音が出るだけで、全く穴は開かず跳ね返された。
こうなると彼の焦りはピークに達する。
もう既にディーノは船に乗り込んだ筈であり、このまま自分が爆発を起こせず兵士の注意を引かなければ確実にディーノが撃ち殺されてしまう。
其れだけは何としてでも回避しなくてはならない。
その時、背後から声がした。
「おい貴様ッ!! 何をしている!!」
其れはトムハットが出した絶叫とタンクにナイフを叩き付ける音を聞きつけた兵士の声であった。
その声を聞いた瞬間、トムハットの脳内に一つのアイディアが浮かんだ。
(私ごと背後のタンクを銃で撃たせれば……爆発が発生して注意を引けるのでは?)
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる