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第51話 唯一で最高な答え
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(恐らく此処にいる兵士達は前線で任務に就いていた者達、この流れの速い運河で小型の船を利用すればエンジン無しで速度が出る事を知らないッ)
トムハットは敵兵士達の様子からそう推理した。
燃料を抜いたのでもう安心とばかりに警備の目が緩くなり、殆どの兵士が船着き場の入り口付近を警戒して燃料を積んだタンクの場所は殆ど警戒されていなかったのである。
(コレなら何とかタンクの方まで辿り着ける。後はレバーを回して燃料を漏れ出させ、其処に火を付ければ大爆発が起きるはずだッ)
トムハットは監視の目を掻い潜り、タンクへ辿り着く為のルートまで完璧に計画していた。
しかしたった一つだけ問題があった。
それはタンクを爆発させた後に自分がどうやって逃げるのかという点が、全く思い付いていないという問題であった。
爆発が即座に発生すれば確実に巻き込まれるし、運良く爆発までラグが発生しても集まってきた兵士達によって殺されるだろう。
(だが、それが如何した!!)
トムハットは端から自分の命など勘定に入れてはいなかった。
ディーノを預かったその日から、自らの時間も命も全てこの子の為に使おうと決めていたのだ。
爆発に巻き込まれてバラバラになる? 敵に見つかって蜂の巣にされる? 全て予定通りで望んだ結末である。
いずれ世界を背負い、誰も成し得なかった偉業を遂げる最後の英雄に全てを捧げられた事だけが彼の人生の誇りであった。
「よし、行くぞッ」
トムハットは薄笑いを浮かべ、自らの有終の美を飾るために動き始めた。
遙か昔、まだ彼が本気で兵士を目指していた頃に習った技術やその当時習っても出来なかった技術をフル活用して監視の目を突破していく。
片足にも関わらず音も無く移動し、投石で兵士の注意を逸らして隙を生み出し、動き続ける兵士の位置に合わせてルートを常に最適な状態へ更新していくのだ。
(まさか自分で言った事を自分で実感するとはな…守る人がいるから限界を超えられるか)
ルチアーノの身を心配するディーノの為に掛けた言葉、其れはトムハットが即席で作った言葉であった。
ディーノに一先ず脇目も振らず逃げさせる為に作った言葉、本当に人間が限界を超えられると確信を持っていた訳も無い。
しかし言霊とは不思議な物で、その言葉に幾度も救われて今日だけは本当にヒーローに成れた様な気分だった。
(待ってろよディーノ。お前がヒーローと呼んでくれた事に恥じない様、私が全力でお前を助けてやるからな!!)
彼にとって、ディーノと過ごしたこの数年間は身に余る様な幸福であった。
誰かに必要とされ、誰かを死に向けて送り出す事しかできなかった自分が誰かの為に自分の命を捧げる事が出来る。
とても幸せであった。
そして等々、トムハットは片足にも関わらず人間離れした動きで燃料タンクまで辿り着いた。
大胆に行動したにも関わらず、素晴らしい隠密テクニックによって巡回を掻い潜り全ての兵士を出し抜いて辿り着いたのである。
(よし、これで後はレバーを回して燃料に火を付けるだけッ……)
トムハットは人生最大の使命を果たすため、タンクに取り付けられた赤色のレバーに手を掛けようとする。
しかし此処で突如神を呪いたくなる様な出来事が起こった。
レバーが回転しない様に金属製の鎖によってガチガチに固定され、人力で開けられない様に成っていたのだ。
想定外の自体に、興奮で赤く染まっていた顔が一瞬で真っ青に変化する。
(おいッ! おい嘘だろッ!! ここまで来てッここまで来て何でッ!!)
レバーに絡み付いた鎖を外そうと力の限り引っ張るが、手の皮が捲れて血が吹き出しても全く外れる兆しは見られない。
固く結ばれた金属の鎖を人間の力だけで外すのは不可能であった。
だが当然トムハットは諦めず、ズボンのポケットからナイフを取り出して鎖に叩き付ける。
しかし果物を切る程度の力しかないナイフでは、金属製の鎖を断ち切る事は不可能であった。
虚しく跳ね返された刃の上半分がへし折られて宙を舞う。
「クッソォォォッ!! 如何してッ何で今時に限って!!!!」
トムハットは鎖を切ることは諦め、タンクに直接穴を開けようと折れたナイフをタンクに叩き付ける。
しかしドンドンッという低い音が出るだけで、全く穴は開かず跳ね返された。
こうなると彼の焦りはピークに達する。
もう既にディーノは船に乗り込んだ筈であり、このまま自分が爆発を起こせず兵士の注意を引かなければ確実にディーノが撃ち殺されてしまう。
其れだけは何としてでも回避しなくてはならない。
その時、背後から声がした。
「おい貴様ッ!! 何をしている!!」
其れはトムハットが出した絶叫とタンクにナイフを叩き付ける音を聞きつけた兵士の声であった。
その声を聞いた瞬間、トムハットの脳内に一つのアイディアが浮かんだ。
(私ごと背後のタンクを銃で撃たせれば……爆発が発生して注意を引けるのでは?)
トムハットは敵兵士達の様子からそう推理した。
燃料を抜いたのでもう安心とばかりに警備の目が緩くなり、殆どの兵士が船着き場の入り口付近を警戒して燃料を積んだタンクの場所は殆ど警戒されていなかったのである。
(コレなら何とかタンクの方まで辿り着ける。後はレバーを回して燃料を漏れ出させ、其処に火を付ければ大爆発が起きるはずだッ)
トムハットは監視の目を掻い潜り、タンクへ辿り着く為のルートまで完璧に計画していた。
しかしたった一つだけ問題があった。
それはタンクを爆発させた後に自分がどうやって逃げるのかという点が、全く思い付いていないという問題であった。
爆発が即座に発生すれば確実に巻き込まれるし、運良く爆発までラグが発生しても集まってきた兵士達によって殺されるだろう。
(だが、それが如何した!!)
トムハットは端から自分の命など勘定に入れてはいなかった。
ディーノを預かったその日から、自らの時間も命も全てこの子の為に使おうと決めていたのだ。
爆発に巻き込まれてバラバラになる? 敵に見つかって蜂の巣にされる? 全て予定通りで望んだ結末である。
いずれ世界を背負い、誰も成し得なかった偉業を遂げる最後の英雄に全てを捧げられた事だけが彼の人生の誇りであった。
「よし、行くぞッ」
トムハットは薄笑いを浮かべ、自らの有終の美を飾るために動き始めた。
遙か昔、まだ彼が本気で兵士を目指していた頃に習った技術やその当時習っても出来なかった技術をフル活用して監視の目を突破していく。
片足にも関わらず音も無く移動し、投石で兵士の注意を逸らして隙を生み出し、動き続ける兵士の位置に合わせてルートを常に最適な状態へ更新していくのだ。
(まさか自分で言った事を自分で実感するとはな…守る人がいるから限界を超えられるか)
ルチアーノの身を心配するディーノの為に掛けた言葉、其れはトムハットが即席で作った言葉であった。
ディーノに一先ず脇目も振らず逃げさせる為に作った言葉、本当に人間が限界を超えられると確信を持っていた訳も無い。
しかし言霊とは不思議な物で、その言葉に幾度も救われて今日だけは本当にヒーローに成れた様な気分だった。
(待ってろよディーノ。お前がヒーローと呼んでくれた事に恥じない様、私が全力でお前を助けてやるからな!!)
彼にとって、ディーノと過ごしたこの数年間は身に余る様な幸福であった。
誰かに必要とされ、誰かを死に向けて送り出す事しかできなかった自分が誰かの為に自分の命を捧げる事が出来る。
とても幸せであった。
そして等々、トムハットは片足にも関わらず人間離れした動きで燃料タンクまで辿り着いた。
大胆に行動したにも関わらず、素晴らしい隠密テクニックによって巡回を掻い潜り全ての兵士を出し抜いて辿り着いたのである。
(よし、これで後はレバーを回して燃料に火を付けるだけッ……)
トムハットは人生最大の使命を果たすため、タンクに取り付けられた赤色のレバーに手を掛けようとする。
しかし此処で突如神を呪いたくなる様な出来事が起こった。
レバーが回転しない様に金属製の鎖によってガチガチに固定され、人力で開けられない様に成っていたのだ。
想定外の自体に、興奮で赤く染まっていた顔が一瞬で真っ青に変化する。
(おいッ! おい嘘だろッ!! ここまで来てッここまで来て何でッ!!)
レバーに絡み付いた鎖を外そうと力の限り引っ張るが、手の皮が捲れて血が吹き出しても全く外れる兆しは見られない。
固く結ばれた金属の鎖を人間の力だけで外すのは不可能であった。
だが当然トムハットは諦めず、ズボンのポケットからナイフを取り出して鎖に叩き付ける。
しかし果物を切る程度の力しかないナイフでは、金属製の鎖を断ち切る事は不可能であった。
虚しく跳ね返された刃の上半分がへし折られて宙を舞う。
「クッソォォォッ!! 如何してッ何で今時に限って!!!!」
トムハットは鎖を切ることは諦め、タンクに直接穴を開けようと折れたナイフをタンクに叩き付ける。
しかしドンドンッという低い音が出るだけで、全く穴は開かず跳ね返された。
こうなると彼の焦りはピークに達する。
もう既にディーノは船に乗り込んだ筈であり、このまま自分が爆発を起こせず兵士の注意を引かなければ確実にディーノが撃ち殺されてしまう。
其れだけは何としてでも回避しなくてはならない。
その時、背後から声がした。
「おい貴様ッ!! 何をしている!!」
其れはトムハットが出した絶叫とタンクにナイフを叩き付ける音を聞きつけた兵士の声であった。
その声を聞いた瞬間、トムハットの脳内に一つのアイディアが浮かんだ。
(私ごと背後のタンクを銃で撃たせれば……爆発が発生して注意を引けるのでは?)
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