114 / 120
第116話 重心を掴む
しおりを挟む
先ず始めはフーマが行っていたコマの回し方を真似して小さな皿の上にコマを置き、両手でそれを挟んで素早く回転させた。
すると最初はコマの質量が想像以上に重くて回すのに失敗したが、2回目で直ぐに修正して上手に回転させる事に成功する。
「凄え、本当に回転がブレねえ……」
初めて自らの手で上手く回ったコマを見て、ディーノの口から自然とそう言葉が漏れ出た。
キューンッという静かで研ぎ澄まされた音が零れ、平面では一切揺らぐ事無く一点に留まって回転を続けて居る。
この状態であれば本当に1時間位回り続けていそうだ。
「おしッ、じゃあ次行くか」
ディーノはずっとコマの回転を眺めていたいという感情も覚えたが、其れでも修行の為の時間が一秒でも削れる事に口惜しさを感じた。
其処で次の段階、指にコマを乗せるという段階に至る為にコマが乗っている小皿を持ち上げる。
そして指先目掛けて皿を傾け、ゆっくり慎重にコマを移動させて無事指の先にコマを乗せることに成功した。
(予想はしてたけど、想像以上に重いなッ)
指先から伝わるズッシリとした重さに顔をしかめなが、ディーノは全神経を指先に注いで回転にブレが生じないよう耐え続けた。
その時、フーマが開けっぱなしにしていた窓から風が吹き込んできて、コマが小さく左側に状態が崩れる。
ディーノは慌ててそのブレを修正する為に自らの指自体を左側に移動させた。
しかしその加減を見誤ってしまったのか、今度は逆に右側へブレてしまう。
「クッ……フ、うおッ……ぐぬぬ……」
立て直せば立て直すほどブレが大きくなり、結局ディーノはコマに振り回される形となって忙しなく指を動かす事となった。
しかし幾ら立て直してもブレが大きく成るばかりである。
そしてそのタイミングで再び風が吹きトドメとなった、立て直しが不可能なほど揺らいだコマ指からこぼれ落ちる。
そしてガンッガンという落下音を響かせて床を転がったのだった。
「はあ、クッソ難しい……何分保った?」
ディーノは部屋に付けられていた時計を見て、自分が何分間コマをキープできたのかチェックする。
すると時計の長針は指の上で回し始めた時に比べて1メモリしか進んでいなかったのだ。
想像の何倍も進んでいなかった時間にディーノは絶句する。
「嘘だろ、60分の1じゃねえか……!!」
そう言ってディーノは凄まじい脱力感を覚えてベッドに背中を預ける。
この修行が一筋縄ではいかないと悟り、何か戦略を立てて挑まなければ確実に達成出来ないと理解したからだ。
天井に付いている鼠色の染みを眺めながらジックリと思考を開始する。
(コマが揺らいだらその方向に指を動かせば良いって話じゃない、一回一回の揺らぎ毎にブレの具合が違う。そして其れに対応する匙加減で帳尻を合わせねえと逆にブレが大きくなる……)
正直最初の感覚だけで言えば蝋燭の修行と同等の難易度に感じた。
此れが初歩の初歩だというが、この先に待っているアノ超スピードを手に入れるまでの課程にどれだけの苦難が待っているのだろうか。
この世の幸福は有限だが、苦難には限りが無いらしい。
しかし幾ら悲観的になっても仕方が無い。
この数日間の修行でどれだけ早足でも階段は一歩ずつしか上れないという事を学んだ、先ずは自分の熟すべき課題を具体化しよう。
そして一つずつ消化していくのだ。
(必要なのは軸のブレ具合を即座に察する感覚、そしてそのブレに合わせて最適な身体の動きを実現する指の細やかな動き……)
この瞬間、自分が目指すべきゴールがハッキリと見えた。
そして同時に分かったのは、そのゴールに到達する為に必要なのは頭を捻る事でも目を瞑って身体を休める事でも無い。
とにかく我武者羅にコマを回し続け、重心の感覚と指先の感覚を掴む事が最優先事項であるという事。
若干現実逃避の為に一人作戦会議を開いたわけだが、結局体当たりで考え無しに手を伸ばすのが自分は一番向いているらしい。
何も差し出さずに済む裏技を探すより、時間と身体を削ってその対価に成長を得る方がギブアンドテイクがしっかりしていて安心できる。
「仕方ねえ、一先ず日が沈んで眠く成るまでコマを回し続けるか。今日はぐっすり眠れるぞ~」
静か過ぎる部屋に一人の声が響き、ディーノは返って寂しさが増す。
しかしその感情を振り切りコマと向かい合って真っ向勝負を挑むその目には迷いがなかった。
師匠達が示してくれる修行に対して疑念は一切無い、何故なら今まで与えてくれた修行全てが目覚ましい成果を自分に与えてくれたから。
その実績と信頼があるから、迷わずどんな修行にでも向き合う事ができる。
この数日間で彼等とディーノの間には強固な信頼関係が出現していたのだ。
その夜、結局ディーノは日が落ちても無心でコマを回し続け、真っ暗になった建物の中でコマの回転するシャーッという音と、コマが床に落ちたゴトッという音が響き続けた。
そして日付が変わった頃、ようやくディーノの集中が限界を迎えて気絶する様に眠ったのである。
すると最初はコマの質量が想像以上に重くて回すのに失敗したが、2回目で直ぐに修正して上手に回転させる事に成功する。
「凄え、本当に回転がブレねえ……」
初めて自らの手で上手く回ったコマを見て、ディーノの口から自然とそう言葉が漏れ出た。
キューンッという静かで研ぎ澄まされた音が零れ、平面では一切揺らぐ事無く一点に留まって回転を続けて居る。
この状態であれば本当に1時間位回り続けていそうだ。
「おしッ、じゃあ次行くか」
ディーノはずっとコマの回転を眺めていたいという感情も覚えたが、其れでも修行の為の時間が一秒でも削れる事に口惜しさを感じた。
其処で次の段階、指にコマを乗せるという段階に至る為にコマが乗っている小皿を持ち上げる。
そして指先目掛けて皿を傾け、ゆっくり慎重にコマを移動させて無事指の先にコマを乗せることに成功した。
(予想はしてたけど、想像以上に重いなッ)
指先から伝わるズッシリとした重さに顔をしかめなが、ディーノは全神経を指先に注いで回転にブレが生じないよう耐え続けた。
その時、フーマが開けっぱなしにしていた窓から風が吹き込んできて、コマが小さく左側に状態が崩れる。
ディーノは慌ててそのブレを修正する為に自らの指自体を左側に移動させた。
しかしその加減を見誤ってしまったのか、今度は逆に右側へブレてしまう。
「クッ……フ、うおッ……ぐぬぬ……」
立て直せば立て直すほどブレが大きくなり、結局ディーノはコマに振り回される形となって忙しなく指を動かす事となった。
しかし幾ら立て直してもブレが大きく成るばかりである。
そしてそのタイミングで再び風が吹きトドメとなった、立て直しが不可能なほど揺らいだコマ指からこぼれ落ちる。
そしてガンッガンという落下音を響かせて床を転がったのだった。
「はあ、クッソ難しい……何分保った?」
ディーノは部屋に付けられていた時計を見て、自分が何分間コマをキープできたのかチェックする。
すると時計の長針は指の上で回し始めた時に比べて1メモリしか進んでいなかったのだ。
想像の何倍も進んでいなかった時間にディーノは絶句する。
「嘘だろ、60分の1じゃねえか……!!」
そう言ってディーノは凄まじい脱力感を覚えてベッドに背中を預ける。
この修行が一筋縄ではいかないと悟り、何か戦略を立てて挑まなければ確実に達成出来ないと理解したからだ。
天井に付いている鼠色の染みを眺めながらジックリと思考を開始する。
(コマが揺らいだらその方向に指を動かせば良いって話じゃない、一回一回の揺らぎ毎にブレの具合が違う。そして其れに対応する匙加減で帳尻を合わせねえと逆にブレが大きくなる……)
正直最初の感覚だけで言えば蝋燭の修行と同等の難易度に感じた。
此れが初歩の初歩だというが、この先に待っているアノ超スピードを手に入れるまでの課程にどれだけの苦難が待っているのだろうか。
この世の幸福は有限だが、苦難には限りが無いらしい。
しかし幾ら悲観的になっても仕方が無い。
この数日間の修行でどれだけ早足でも階段は一歩ずつしか上れないという事を学んだ、先ずは自分の熟すべき課題を具体化しよう。
そして一つずつ消化していくのだ。
(必要なのは軸のブレ具合を即座に察する感覚、そしてそのブレに合わせて最適な身体の動きを実現する指の細やかな動き……)
この瞬間、自分が目指すべきゴールがハッキリと見えた。
そして同時に分かったのは、そのゴールに到達する為に必要なのは頭を捻る事でも目を瞑って身体を休める事でも無い。
とにかく我武者羅にコマを回し続け、重心の感覚と指先の感覚を掴む事が最優先事項であるという事。
若干現実逃避の為に一人作戦会議を開いたわけだが、結局体当たりで考え無しに手を伸ばすのが自分は一番向いているらしい。
何も差し出さずに済む裏技を探すより、時間と身体を削ってその対価に成長を得る方がギブアンドテイクがしっかりしていて安心できる。
「仕方ねえ、一先ず日が沈んで眠く成るまでコマを回し続けるか。今日はぐっすり眠れるぞ~」
静か過ぎる部屋に一人の声が響き、ディーノは返って寂しさが増す。
しかしその感情を振り切りコマと向かい合って真っ向勝負を挑むその目には迷いがなかった。
師匠達が示してくれる修行に対して疑念は一切無い、何故なら今まで与えてくれた修行全てが目覚ましい成果を自分に与えてくれたから。
その実績と信頼があるから、迷わずどんな修行にでも向き合う事ができる。
この数日間で彼等とディーノの間には強固な信頼関係が出現していたのだ。
その夜、結局ディーノは日が落ちても無心でコマを回し続け、真っ暗になった建物の中でコマの回転するシャーッという音と、コマが床に落ちたゴトッという音が響き続けた。
そして日付が変わった頃、ようやくディーノの集中が限界を迎えて気絶する様に眠ったのである。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる