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その後の2人
転生出来なかった女と手に入れた男
しおりを挟む「実摘、ほら起きてください」
優しい声と手が私を揺らし起こそうとする。
「まだ、眠い、です」
「また敬語が出てますよ。ほら、起きてください。朝食をとらないと」
自分は常に敬語のくせに、私にはそれをやめろだなんて、勝手なんだから。
私、花園実摘は前世で拗らせすぎた体型へのコンプレックスが強い未練となり、転生時に望みを叶えてもらえる制度を受け入れ、この狭間の世界で臨時で働いていた。そこでなぜか上司であった現夫のサミュエルに気に入られ、知らないうちに転生キャンセルの上結婚までさせられていた。
もう逃げられないように、と逃げ道を無くされた後に教えられた事実に、衝撃が走ったのはいうまでもない。私に一目惚れしていたこと、私を絶対に転生させないためにこの世界のアルコールを口にさせたこと、親や周りには了承の上での行動で自分達は愛し合う恋人同士だと説明していたこと、などなど驚愕することばかりだ。
しばらくは心の整理がつかず、サミュエルに対しても冷たい態度ばかりとっていたが、あまりの私への想いの強さというか執着具合に折れ、手回しの良さに諦め、毎日愛を囁かれ最終的に受け入れてしまい、現在は意外と穏やかで落ち着いた日々を送っている。
「サミュエル、私は今日お休みだからまだ寝てたい」
「まだ寝ぼけてますね。私もお休みですよ。だって今日は結婚式じゃないですか」
「はっ!!!!」
がばっと体を起こし、ベッドから抜け出す。そうだった!紆余曲折あったが、現在愛し合う夫婦になった私たちは、前世で私も憧れていたことと、幸運にもこちらの世界に同じ文化があったことで、結婚式を挙げることにしたのだ。
私の知人は同じ職場の休憩仲間くらいしかいないので、新婦側の招待客は多くないが、サミュエルの親がまたとんでもなく偉い立場の人なので新郎側はものすごいことになった。
「そうだった!今日だ!準備しなきゃ!!!」
「そうですよ。あぁ、今日は人生で3番目に素晴らしい日になりそうです」
朝から目に毒なほどの、甘ったるい顔を見てしまった。ドキドキ。というか3番目?1番と2番目はなんだったんだろ?
慌てて朝食をとり、式場へと向かう。ドレスアップや段取りの最終確認を行い、緊張と興奮をなんとか抑えこみ、式はつつがなく進行していく。
「新郎 サミュエル、貴方はこの女性を妻とし、生涯愛し、守り、共に生きることを誓いますか?」
「誓います」
「新婦 実摘、貴女はこの男性を夫とし、生涯愛し、守り、共に生きることを誓いますか?」
「誓います」
「これより、2人は夫婦となりました。この度は、誠におめでとうございます」
緊張したが、噛まずに無事台詞を言えてホッとする。これで式は終わり、この後は、私たち夫婦と客人とともに立食パーティーとなる。
「実摘、愛しています。一生離しません」
ボソリと耳元で囁かれ、照れながらも苦笑する。
「はい、わかってます。サミュエル、私も愛しています」
私のセリフを聞いて、少し頬を染め笑みを浮かべるサミュエルを見て、私はぼんやり考えた。
無茶苦茶なところがあるとは言え、外見もとても良く地位もあり、かなりの高スペック優良物件。こんな人が、私のどこに惚れてここまで執着しているのか未だに謎だ。
「ふふ、実摘。何を考えているのか、本当にわかりやすくて可愛いです。私が特に好きなのはあなたの感情の豊かさ、そのコロコロ変わる表情ですよ」
まさかそんなにわかりやすかった?なんか好きと言われて嬉しいけど、手放しで喜べない自分もいる。
「そんなの、他の人でもいるでしょう」
「いいえ、こんなに私を高揚させるのは実摘だけです」
不思議だ。彼が私にここまで想いを寄せる理由が、こんなに単純なことなんだろうか?これは恐らく永遠に謎のままかも。
「あぁ、もちろん」
今までより更に密着して、声を潜めるとゆっくりと私に囁く。
「あなたのその慎ましやかな体も好ましいですよ」
声にならない悲鳴が上がり、自分の顔が真っ赤になるのがわかった。
「あぁ、その顔も最高です」
そんな私の様子を見て、うっとりと言う。
「あなたと出会った日が1番目、あなたと初めて2人で食事をした日が2番目、今日が私の人生で3番目に幸せな日です」
これからも幸せな日を、沢山作りましょうねと蕩ける笑みで言われて、何の言葉も出なくなった。
転生出来なくてボンキュッボンにはなれなかったけど、幸せにはなれそうです。
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