転生したいのに、何故か邪魔されてます!

麻野 繊維

文字の大きさ
7 / 7
その後の2人

転生出来なかった女と手に入れた男

しおりを挟む

「実摘、ほら起きてください」
 優しい声と手が私を揺らし起こそうとする。
「まだ、眠い、です」
「また敬語が出てますよ。ほら、起きてください。朝食をとらないと」
 自分は常に敬語のくせに、私にはそれをやめろだなんて、勝手なんだから。


 私、花園実摘は前世で拗らせすぎた体型へのコンプレックスが強い未練となり、転生時に望みを叶えてもらえる制度を受け入れ、この狭間の世界で臨時で働いていた。そこでなぜか上司であった現夫のサミュエルに気に入られ、知らないうちに転生キャンセルの上結婚までさせられていた。
 もう逃げられないように、と逃げ道を無くされた後に教えられた事実に、衝撃が走ったのはいうまでもない。私に一目惚れしていたこと、私を絶対に転生させないためにこの世界のアルコールを口にさせたこと、親や周りには了承の上での行動で自分達は愛し合う恋人同士だと説明していたこと、などなど驚愕することばかりだ。
 しばらくは心の整理がつかず、サミュエルに対しても冷たい態度ばかりとっていたが、あまりの私への想いの強さというか執着具合に折れ、手回しの良さに諦め、毎日愛を囁かれ最終的に受け入れてしまい、現在は意外と穏やかで落ち着いた日々を送っている。

「サミュエル、私は今日お休みだからまだ寝てたい」
「まだ寝ぼけてますね。私もお休みですよ。だって今日は結婚式じゃないですか」
「はっ!!!!」
 がばっと体を起こし、ベッドから抜け出す。そうだった!紆余曲折あったが、現在愛し合う夫婦になった私たちは、前世で私も憧れていたことと、幸運にもこちらの世界に同じ文化があったことで、結婚式を挙げることにしたのだ。
 私の知人は同じ職場の休憩仲間くらいしかいないので、新婦側の招待客は多くないが、サミュエルの親がまたとんでもなく偉い立場の人なので新郎側はものすごいことになった。
「そうだった!今日だ!準備しなきゃ!!!」
「そうですよ。あぁ、今日は人生で3番目に素晴らしい日になりそうです」
 朝から目に毒なほどの、甘ったるい顔を見てしまった。ドキドキ。というか3番目?1番と2番目はなんだったんだろ?



慌てて朝食をとり、式場へと向かう。ドレスアップや段取りの最終確認を行い、緊張と興奮をなんとか抑えこみ、式はつつがなく進行していく。


「新郎 サミュエル、貴方はこの女性を妻とし、生涯愛し、守り、共に生きることを誓いますか?」
「誓います」
「新婦 実摘、貴女はこの男性を夫とし、生涯愛し、守り、共に生きることを誓いますか?」
「誓います」
「これより、2人は夫婦となりました。この度は、誠におめでとうございます」

 緊張したが、噛まずに無事台詞を言えてホッとする。これで式は終わり、この後は、私たち夫婦と客人とともに立食パーティーとなる。
「実摘、愛しています。一生離しません」
 ボソリと耳元で囁かれ、照れながらも苦笑する。
「はい、わかってます。サミュエル、私も愛しています」
 私のセリフを聞いて、少し頬を染め笑みを浮かべるサミュエルを見て、私はぼんやり考えた。
 無茶苦茶なところがあるとは言え、外見もとても良く地位もあり、かなりの高スペック優良物件。こんな人が、私のどこに惚れてここまで執着しているのか未だに謎だ。

「ふふ、実摘。何を考えているのか、本当にわかりやすくて可愛いです。私が特に好きなのはあなたの感情の豊かさ、そのコロコロ変わる表情ですよ」
 まさかそんなにわかりやすかった?なんか好きと言われて嬉しいけど、手放しで喜べない自分もいる。
「そんなの、他の人でもいるでしょう」
「いいえ、こんなに私を高揚させるのは実摘だけです」
 不思議だ。彼が私にここまで想いを寄せる理由が、こんなに単純なことなんだろうか?これは恐らく永遠に謎のままかも。
「あぁ、もちろん」
 今までより更に密着して、声を潜めるとゆっくりと私に囁く。
「あなたのその慎ましやかな体も好ましいですよ」



声にならない悲鳴が上がり、自分の顔が真っ赤になるのがわかった。


「あぁ、その顔も最高です」


そんな私の様子を見て、うっとりと言う。
「あなたと出会った日が1番目、あなたと初めて2人で食事をした日が2番目、今日が私の人生で3番目に幸せな日です」

これからも幸せな日を、沢山作りましょうねと蕩ける笑みで言われて、何の言葉も出なくなった。



転生出来なくてボンキュッボンにはなれなかったけど、幸せにはなれそうです。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

処理中です...