6 / 7
ろく
しおりを挟む
周りの女の子達の発育が進みだすと、私は絶望した。周りの子はみんな小ぶりであれ、ささやかでも膨らみがあったのに、私は本当に成長の兆しも見えずブラもスポブラかAAカップ。なんで私の胸こんなにないの?え?私の胸小さすぎーーー?
「絶対生まれ変わったら巨乳になる!!!!」
前世からの切なる願いを無意識に叫んだようだ。自分の叫びで目が覚めた。
目が覚めたのは見たこともない部屋だった。施設のシンプルだが機能的な部屋とは違う。壁紙は淡いグリーンで家具もなんだか丁度いい具合に可愛らしい。
「目が覚めましたか実摘?心配しましたよ」
聞き覚えのある声だ。低くてうっとりするサミュエルさんの声だ。
「サミュエルさん…?」
「はい。気分はどうですか?」
少し体を起こすと、ベッドの横にある椅子に、サミュエルさんが腰掛けて優しい顔でこちらを見ていた。
「気分は、特に悪くもないです。でも…」
「それはよかったです。気絶してなかなか目を覚さないので心配しましたよ」
「そうでしたか、それはすいません。それで、あの、ここはどこなんでしょうか?それに聞きたいことが山程あるんですが」
おずおずと切り出すと、サミュエルさんは口角を上げて上機嫌に言った。
「ここはこれから実摘が暮らす家の中の、実摘のために用意した部屋ですよ」
「私の暮らす家?私の部屋?」
よく理解出来なくてぼんやり復唱する。
「はい。実摘は転生せずに、このままこの世界で私と夫婦になり暮らすんです」
益々理解が追いつかない。転生しないで夫婦?そんな話聞いたこともないし考えたこともない。いくら推しで神とはいえ、これは中々理解出来ないし納得できない。
「あの、私転生を諦めたつもりもないですし、サミュエルさんとお付き合いした記憶もないです。夫婦になるって一体どういう」
「転生はもう諦めてください。実は一目見た時から、私はあなたを妻にして共に生きると決めたんです」
なんだその勝手な決定は。私の意見は?サミュエル教やめようかな。
「そんな勝手な…」
「実摘、私が生まれて初めて手放したくない、自分だけのものにしたいと思った相手があなたです。絶対に逃さないようにここまで準備したんです。こんなに欲しいと思ったのは、あなただけだ」
真っ直ぐ見つめられて、ものすごい事を言われてしまった。どうしよう。内容に若干不穏なものがあったけど、めちゃくちゃ好みの外見の、しかも推しにこんなこと言われて、1ミリも動揺しない人いる?私のささやか過ぎる胸の中の小さな心臓は、驚きやら照れやらで今にも爆発しそうだ。
「黒髪が見られなくなるのは残念ですが、それ以上に側から離したくない、ずっと腕の中に閉じ込めておきたいと思い、あなたを食事に誘いました。あの日は本当に素晴らしい日でした」
それに関しては同意する。食事の日は本当に良い日だった。
「あなたの前世の世界に、よもつへぐいという言葉があると思います。この世界でも似たようなルールがあって、あの日食事に誘ったのは実摘をこの世界に留めておく為です」
よもつへぐいって、黄泉の世界の食べ物を口にすると現世へ戻れなくなるってやつ?でも私ここにきて普通に飲食してたけど、妹尾さんもそうだったし…
「転生前の方が入る施設で、口に入れるものは全て用意されていたでしょう?あれは特別なんです。それ以外のものを口にすると、この世界に留まるという意思表示になりいつまでも滞在できるようになります」
ここでサミュエルさんは、笑みをさらに濃くして言った。
「さらにアルコールを口にすることで、この世界から出て行くことが出来なくなるんです。…あの時のシャンパン、本当に美味しかったですね」
思い出しているのか私から少し視線を外して、蕩けるような表情を浮かべる様子を見て、私はぞくりとした。
「もう、あなたは私から逃げられません。髪の色も変わってきているでしょう?この世界で生きていくものは、皆金髪になるんです。ここまで多少苦労はありましたが、親である狭間の世界の代表にも報告し認められ、私たちは正式に夫婦となりました」
実摘、と甘い声で呟き私の頬に手を添える。そんならサミュエルさんを、私はぼんやりした頭と目で眺めている。髪の毛の根本の色、気のせいじゃなかったのかー。この凡庸な顔に金髪似合うのかな?
視界に影が差し、唇に何かが触れたと理解したところで、私はまた気絶した。
私は絶対に転生して、このまな板体型を卒業したかったのに!!!!!
どうしてこうなった???
「絶対生まれ変わったら巨乳になる!!!!」
前世からの切なる願いを無意識に叫んだようだ。自分の叫びで目が覚めた。
目が覚めたのは見たこともない部屋だった。施設のシンプルだが機能的な部屋とは違う。壁紙は淡いグリーンで家具もなんだか丁度いい具合に可愛らしい。
「目が覚めましたか実摘?心配しましたよ」
聞き覚えのある声だ。低くてうっとりするサミュエルさんの声だ。
「サミュエルさん…?」
「はい。気分はどうですか?」
少し体を起こすと、ベッドの横にある椅子に、サミュエルさんが腰掛けて優しい顔でこちらを見ていた。
「気分は、特に悪くもないです。でも…」
「それはよかったです。気絶してなかなか目を覚さないので心配しましたよ」
「そうでしたか、それはすいません。それで、あの、ここはどこなんでしょうか?それに聞きたいことが山程あるんですが」
おずおずと切り出すと、サミュエルさんは口角を上げて上機嫌に言った。
「ここはこれから実摘が暮らす家の中の、実摘のために用意した部屋ですよ」
「私の暮らす家?私の部屋?」
よく理解出来なくてぼんやり復唱する。
「はい。実摘は転生せずに、このままこの世界で私と夫婦になり暮らすんです」
益々理解が追いつかない。転生しないで夫婦?そんな話聞いたこともないし考えたこともない。いくら推しで神とはいえ、これは中々理解出来ないし納得できない。
「あの、私転生を諦めたつもりもないですし、サミュエルさんとお付き合いした記憶もないです。夫婦になるって一体どういう」
「転生はもう諦めてください。実は一目見た時から、私はあなたを妻にして共に生きると決めたんです」
なんだその勝手な決定は。私の意見は?サミュエル教やめようかな。
「そんな勝手な…」
「実摘、私が生まれて初めて手放したくない、自分だけのものにしたいと思った相手があなたです。絶対に逃さないようにここまで準備したんです。こんなに欲しいと思ったのは、あなただけだ」
真っ直ぐ見つめられて、ものすごい事を言われてしまった。どうしよう。内容に若干不穏なものがあったけど、めちゃくちゃ好みの外見の、しかも推しにこんなこと言われて、1ミリも動揺しない人いる?私のささやか過ぎる胸の中の小さな心臓は、驚きやら照れやらで今にも爆発しそうだ。
「黒髪が見られなくなるのは残念ですが、それ以上に側から離したくない、ずっと腕の中に閉じ込めておきたいと思い、あなたを食事に誘いました。あの日は本当に素晴らしい日でした」
それに関しては同意する。食事の日は本当に良い日だった。
「あなたの前世の世界に、よもつへぐいという言葉があると思います。この世界でも似たようなルールがあって、あの日食事に誘ったのは実摘をこの世界に留めておく為です」
よもつへぐいって、黄泉の世界の食べ物を口にすると現世へ戻れなくなるってやつ?でも私ここにきて普通に飲食してたけど、妹尾さんもそうだったし…
「転生前の方が入る施設で、口に入れるものは全て用意されていたでしょう?あれは特別なんです。それ以外のものを口にすると、この世界に留まるという意思表示になりいつまでも滞在できるようになります」
ここでサミュエルさんは、笑みをさらに濃くして言った。
「さらにアルコールを口にすることで、この世界から出て行くことが出来なくなるんです。…あの時のシャンパン、本当に美味しかったですね」
思い出しているのか私から少し視線を外して、蕩けるような表情を浮かべる様子を見て、私はぞくりとした。
「もう、あなたは私から逃げられません。髪の色も変わってきているでしょう?この世界で生きていくものは、皆金髪になるんです。ここまで多少苦労はありましたが、親である狭間の世界の代表にも報告し認められ、私たちは正式に夫婦となりました」
実摘、と甘い声で呟き私の頬に手を添える。そんならサミュエルさんを、私はぼんやりした頭と目で眺めている。髪の毛の根本の色、気のせいじゃなかったのかー。この凡庸な顔に金髪似合うのかな?
視界に影が差し、唇に何かが触れたと理解したところで、私はまた気絶した。
私は絶対に転生して、このまな板体型を卒業したかったのに!!!!!
どうしてこうなった???
0
あなたにおすすめの小説
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
推しであるヤンデレ当て馬令息さまを救うつもりで執事と相談していますが、なぜか私が幸せになっています。
石河 翠
恋愛
伯爵令嬢ミランダは、前世日本人だった転生者。彼女は階段から落ちたことで、自分がかつてドはまりしていたWeb小説の世界に転生したことに気がついた。
そこで彼女は、前世の推しである侯爵令息エドワードの幸せのために動くことを決意する。好きな相手に振られ、ヤンデレ闇落ちする姿を見たくなかったのだ。
そんなミランダを支えるのは、スパダリな執事グウィン。暴走しがちなミランダを制御しながら行動してくれる頼れるイケメンだ。
ある日ミランダは推しが本命を射止めたことを知る。推しが幸せになれたのなら、自分の将来はどうなってもいいと言わんばかりの態度のミランダはグウィンに問い詰められ……。
いつも全力、一生懸命なヒロインと、密かに彼女を囲い込むヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:31360863)をお借りしております。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―
喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。
そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。
二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。
最初は手紙も返ってきていたのに、
いつからか音信不通に。
あんなにうっとうしいほど構ってきた男が――
なぜ突然、私を無視するの?
不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、
突然ルイスが帰還した。
ボロボロの身体。
そして隣には――見知らぬ女。
勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、
私の中で何かが壊れた。
混乱、絶望、そして……再起。
すがりつく女は、みっともないだけ。
私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。
「私を簡単に捨てられるとでも?
――君が望んでも、離さない」
呪いを自ら解き放ち、
彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。
すれ違い、誤解、呪い、執着、
そして狂おしいほどの愛――
二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。
過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない
柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。
バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。
カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。
そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。
愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる