転生したいのに、何故か邪魔されてます!

麻野 繊維

文字の大きさ
5 / 7

しおりを挟む

 狭間の世界でポイントを貯め始めてから、今日で7ヶ月めになる。あれ??あれれ??



 あの日のサミュエルさんとの食事は、正直言って最高だった。お酒も料理もとても美味しく、職場の休憩時間では中々話せないような、お互いの趣味や好みなどの話をする終始穏やかな時間。うっかりボンキュッボンの夢を諦めて、サミュエル教の信者としてこの時をずっと過ごしたいと思ったりもした。施設に帰りシャワー浴びてサッパリする頃には、やっぱり最低でもFカップという希望は捨てられないと思い直したけど。そもそもここにずっといられるわけないしね。
 あの日確かにサミュエルさんは、順調にポイントも貯まってるって言ってた。なのにどうして6ヶ月過ぎてもここに残ってるんだろう。もしかして、望みが高すぎて必要な徳が他の人より多いの??
 うんうん唸りながら1人悩む。もう一つ気になることがあって、6ヶ月を過ぎてから、気のせいかもしれないけど髪の毛の根本の色素が薄くなっているみたいなのだ。この世界の金髪美人たちと同じような色に見える。1センチくらいだから、ハッキリとは言えないけど、元々地毛が真っ黒な私の毛とはよく見ると色が違うみたい。
 色々なことが気になって悶々とした日々を過ごす。サミュエルさんは相変わらずとても優しいし、職場の金髪美人たちも、私の頭を見て一瞬驚いたり微妙な顔をしたりする以外は、以前と変わらない。
「花園さん」
 とにかく誰かに相談したい。でも誰に…?
「花園実摘さん」
「?はい?」
 考え事をしていてすぐ反応出来なかったが、誰かに話しかけられている。声の方へ顔を向けると、狭間の世界に来て初めて会った綺麗すぎる金髪美人が立って手招きをしていた。
「仕事を抜ける旨は了承を得ています。大事なお話がありますのでこちらへ」
「は、はいっ!」


 連れてこられた部屋は、意識を取り戻した時の豪華な部屋だった。椅子を勧められて、腰掛ける。
「花園さん、あなたは転生せずにこの世界に残ることにしたのですね」
 おもむろにかけられた言葉に、思考が停止した。
「サミュエルから聞きましたよ。貴女にとっては大変な決断だったでしょう。未練を乗り越え、転生を諦めたのですから」
 え???聞いた?何を?転生を諦めた???そんな話してないし、なにこれ現実???てか諦めるとかそんなことできるんだね???
 混乱する私をよそに、金髪美人の話は続く。
「貴女のような決断をする方は、本当に少ないので驚きましたが、この世界のことを思えば喜ばしいことです。この世界の代表としてお祝いとお礼をお伝えしたくて、この場へお呼びしました」
 いや、待って?決断してないよ。いや、したけどそれはやっぱりFカップ以上の胸を持つボンキュッボンになるっていう決断はしたけど!ここに残るってどういう???
 驚きが凄すぎて、口から声が出てこない。恐らく私は今、とてもアホな顔をしていることだろう。
「初めは冗談かと思いましたが、貴女のその毛髪を見れば本当だと思い直しました。我々は寿命が長く老化も緩やかな分、子孫が残しにくい生命体です。貴女のような、他の世界から来た方が残ってくれるのは本当に嬉しいことです」
「あ、あの」
 なんとか絞り出した声は、か細すぎて相手に届かない。
「きっと戸惑うことも多いでしょう。でも前世での生活と違う点も多くありますが、反対に似ているところも勿論ありますし、安心してこの世界に残っていただきたい。サポートもいたしますし、」
 ここで狭間の世界の代表らしい金髪美人は、私を見てにこりと笑みを浮かべた。綺麗すぎて見惚れる。
「元より誰かと結婚してくれると思っていなかった息子の、サミュエルの伴侶になってくれるなんて、本当にありがとう」


む!?息子????!!!!
伴侶??????伴侶?!?!


驚きが大きすぎたせいか、私はそこで前世含めて人生初となる気絶を経験したのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

推しであるヤンデレ当て馬令息さまを救うつもりで執事と相談していますが、なぜか私が幸せになっています。

石河 翠
恋愛
伯爵令嬢ミランダは、前世日本人だった転生者。彼女は階段から落ちたことで、自分がかつてドはまりしていたWeb小説の世界に転生したことに気がついた。 そこで彼女は、前世の推しである侯爵令息エドワードの幸せのために動くことを決意する。好きな相手に振られ、ヤンデレ闇落ちする姿を見たくなかったのだ。 そんなミランダを支えるのは、スパダリな執事グウィン。暴走しがちなミランダを制御しながら行動してくれる頼れるイケメンだ。 ある日ミランダは推しが本命を射止めたことを知る。推しが幸せになれたのなら、自分の将来はどうなってもいいと言わんばかりの態度のミランダはグウィンに問い詰められ……。 いつも全力、一生懸命なヒロインと、密かに彼女を囲い込むヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:31360863)をお借りしております。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない

柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。 バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。 カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。 そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。 愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

処理中です...