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よん
しおりを挟む物凄いところに来てしまった。
サミュエルさんが連れてきてくれたレストランは、この服で本当に入って良いのか?本当にここの支払い私に請求しない?これドッキリ?と頭を抱えて、なんなら逃げ出したくなるような店構えだった。
「サミュエル様、本日はご予約ありがとうございます。ご案内いたします」
「あぁ、よろしくお願いします」
お店のドア横に立っていた、職場ではあまり見かけないダンディなタイプの金髪美人が恭しく出迎え個室へ案内してくれる。名乗ってもいないのに、名前を呼ばれて案内されてるの凄すぎ。気に入ってる店ってレベルではない。もう常連レベルだ。
一度私を見て、ダンディの表情が固まった気がしたけど気のせいだよね?私ここ入っちゃいけない格好だったとか?
「実摘、大丈夫ですよ。手と足が同じ方がでてますけど、落ち着いて」
「ひ、ひゃい」
そう言われて、同時に前に出ていた右手と右足が動きを一度止め、左右正常な動きへ戻る。恥ずかしい。もしかしてこの動きを見て、ダンディに引かれた?ショック…
いくつかのドアを通り過ぎ、廊下の突き当たりでダンディが足を止める。
「こちらです。」
豪華な内装の一室に通され、椅子を引かれ席に着く。
「先にお飲み物をお伺いします」
「最初はシャンパンでお願いします。その後は、料理に合うアルコールでおすすめのものを。彼女にも同じものを」
アルコールと聞いて、嬉しくなる。生前もたくさんは飲めないが、お酒は好きだった。ここにきてから口にするのは初めてだ。
「は、はい。かしこまりました」
何故か少し動揺したダンディ。私こんなツルペタですけど、顔は別に童顔でもないしちゃんと成人してますよ!
すぐに表情を戻したダンディが退室すると、サミュエルさんがゆったりと話かけてきた。
「ここはお任せのコースのみで、その日のいい食材を使ったものが出てくるんです。もし苦手なものがあったらすいません」
「いえ!私好き嫌いはあまりありませんし、こんな豪華なところ生前行ったこともないので今日はとても嬉しいです!」
「そうですか、それは良かった」
また心臓に悪い蕩ける笑みが繰り出された。レストランの凄さへの緊張もあって、胸がバクバクする。
「あの、こんなところに連れてきていただいてお聞きするのもなんですが、今日はなぜ私と?」
ずっと気になっていたことを聞いてみる。バクバクが倍になる。
「あぁ、理由ですか?あなたが来てもう5ヶ月になりますし、いつも頑張っていて、ポイントも必要分まであと少しになってきましたのでね。」
なんで良い上司!!!頑張りを認めて、その上こんな素敵なご褒美まで!!!転生してもあなたのこと絶対忘れないでいて、崇め奉ります!サミュエル教を作って布教します!
「ありがとうございます。本当に嬉しいです」
「いえ、それに私が実摘とゆっくり話したいと思ったのが一番の理由ですから、気にしないでください」
気遣いも完璧だ。
「サミュエルさん、とてもモテそうですね」
うっかり本音がポロリ。何故か少し表情が強張ったサミュエルさんをみて、私は焦る。もしかして、こーゆー話嫌いだった?!
「す、すいません!サミュエルさん格好いいし仕事もすごいし、気遣いもすごくてっ」
ほぼすごいしか言ってない。もっと良いこと言えないのか私!自分を叱咤しながら、頭の中で何か良い言い訳を!と焦り考えていると、
「そんなことありませんよ。恋人もいませんし、親にももう諦められているくらいです」
と、柔らかい笑みと言葉をくれる。何そのちょっと恥ずかしそうなでも嬉しそうな顔。まじ神。前世で流行ってた推しって言葉、使ったことなかったけど今使いたい。来世で一生推したい。絶対忘れないよ!神上司を生涯推すよ!なんてことを考えていたら一杯目の飲み物が届いた。
「失礼いたします。シャンパンをお持ちしました。こちらはーーー」
給仕係の人が何やらシャンパンの説明をしているが、ここに来て5ヶ月の間職場と宿泊施設の往復しかない私には、地方やら品種やら言われても全くピンと来ない。給仕係が退室し、また室内に2人だけになるとサミュエルさんがにこりと微笑んでグラスを傾けた。
「記念すべき今日の日に」
記念?なんの記念?私のポイントもうすぐ貯まりますね記念?ちょっと不思議に思ったが、言い間違いかもしれないと思い疑問は仕舞い込む。
私も同じように、グラスを持ち少し傾けた。サミュエルさんがグラスに口をつけるのを見てから、自分も口をつける。5ヶ月ぶりの、しかも恐らくとても高級であろうアルコール。最高。
シャンパンを飲む私を、サミュエルさんは瞬きもせずじっと見ている。どこか変?勢いよく飲みすぎた?
「美味しいですか?」
「はい!本当に美味しいです。これから出てくるお料理もすごく楽しみです」
それは良かった、とサミュエルさんは今日何度目かになる蕩ける笑みを浮かべた。
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