悪役令嬢の妹は自称病弱なネガティブクソヒロイン

音無砂月

文字の大きさ
38 / 43
第3章 決着

XXXVIII.

しおりを挟む
 セシルが目を覚ましたのは事件から3日後のことだった。
 熱も退き、毒も完全に抜けたのでもう大丈夫だろうと先生から言われた。

 何が起きたのかはジークに教えてもらった。

 私に毒を盛ったグロリアは表向きは病死したことにして修道院へ行かせたそうだ。
 その為の墓も立てたそうだ。
 クリス様との婚約話も立ち消えた。
 お父様はクリス様に謝罪し、お詫びの品もたくさん用意したのだが「元々こうなる可能性も視野に入れていたのでお気になさらず。セシル嬢、早く良くなると良いですね」と言われたそうだ。
 クリス様には友として何か用意をしておこうと思う。
 グロリアの姉として最後にできる仕事だろう。

 ミハエル様はグロリアに刺されて亡くなったそうだ。
 ミハエル様と関係を持ち、この事件に加担したメイドはこれは伯爵家にとっても公にできない事件なので処刑するわけには行かず、流刑地によく使われる島に秘密裏に流したそうだ。
 そこは処刑を免れた悪人の流刑地にされている島なのでそこに女が1人で取り残されたらどうなるかぐらいは想像は容易い。
 ある意味死んだほうがましなのかもしれないが。

 「お嬢様、まだ病み上がりなのですからもう暫くお休みください」
 「相も変わらず心配性ね」
 「毒を盛られた上に三3日も意識不明の重体だったんですから当然です」
 「ごめん」
 「いいえ。私も油断をしておりましたし、これは誰にも予想のできなかったことです」

 まぁ、誰もグロリアが毒殺を企むなんて思いもしなかっただろう。
 あの子にそんな頭はないと誰もが思っていたのだから。

 「お嬢様」
 「ん?」

 ギシリとベッドが軋む音がした。
 「っ!?」
 どうしたのだろうと思ったら私はジークに抱きしめられていた。
 細い線なのに筋肉がしっかりとついていて思ったよりも硬い彼の胸板に自分の体が密着していると考えるだけで顔に一気に熱が溜まる。
 折角良くなったのに再熱しそうだ。

 「ジ、ジーク、ど、どうしたの?」
 「申し訳ありません。ですが、もう暫くこのままでいさせてください」
 「ジーク?」
 ジークの体は震えていた。
 「あなたが生きていると実感したいのです。
 この3日間、生きた心地がしませんでした」
 「・・・・・ジーク、ごめん」

 私はジークの大きくて広い背中に手を回した。
 記憶の最後に抱きしめたジークはとても小さかった。
 自分も小さかったのだが。
 いつの間にかこんなに大きくなっていた。
 私もジークも大人になったのだ。

 ややあって、ジークは私から離れた。
 そのことを寂しいと思ったが私はいつも通りの笑顔を浮かべて見せた。

 「申し訳ありません、執事としてあるまじき行為を致しました」

 ジークも何でもないことのように振舞う。

 「ううん。それだけ心配をかけたってことよね。
 暴漢の件といいこれで2回目ね。
 もう少し自分でも注意をしておくべきだったと思うわ」
 「私もお嬢様を守れるように細心の注意を払いたいと思います」

 そう言って笑い合っているところにルルが来て、イサック殿下がお見舞いに来られたと言って来た。

 「取り敢えず、手初めに羽虫の駆除でも致しますか」
 笑いながら怖いことを言うジーク
 彼はどうもイサック殿下のことをお気に召さないようだ。
 「ほどほどにね」
 「はい」
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢は断罪の舞台で笑う

由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。 しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。 聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。 だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。 追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。 冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。 そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。 暴かれる真実。崩壊する虚構。 “悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

無自覚万能王女様は、今日も傲慢な転生者を悪気なく退治している。

卯月ましろ@低浮上
ファンタジー
このハイドランジア王国には「王の至宝」と呼ばれるものが3つあります。 まず1つめは豊かな資源溢れるこの国そのもの。2つめは国の柱を支えてくれるハイドランジアの民衆たち。 そして3つめは、28人の子をもつ王の末娘……エヴァンシュカ・リアイス・トゥルーデル・フォン・ハイドランジア王女――いえ、言いたい事はよく分かりますよ。もう本当に長いので、エヴァ王女とでも覚えて頂ければ結構です。 これは、ご自身の能力が人よりも秀でている事を全く理解されていないエヴァ王女――「エ万能王女」の恋と、ワタシワ・オトメゲーノ・ヒロインナノヨと名乗る少々傲慢な少女を取り巻く愉快なアレコレなどを観察した物語でございます。 申し遅れましたが、わたくしはハイド。エヴァ王女専属のしがない護衛騎士兼観察者にございます。どうぞ以後、お見知りおきを。 ※小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+、エブリスタ(敬称略)でも掲載しています。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)

浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。 運命のまま彼女は命を落とす。 だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。

処理中です...