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第四章
act 13 入院
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瞳は帰れずにそのまま入院、明日緊急オペという事になった。
なんであたしだけがこんなにも恥ずかしくて、痛い思いをしなきゃならないの?
呪いかな?
何の呪いだろ?
なんて、そんなの薬のせいだって、分かり切ってる事だよね。
でもどんなに悲しんでも既にまな板の上の鯉なのだから、もう覚悟を決めるしかない。
その夜、瞳は酷い寒気に襲われて、看護師に布団を何枚かもよく分からないけれど、寒いと言って足して貰った。
眠剤は処方して貰ったけれど、普通の総合病院に瞳が飲んでいる様な強い眠剤などある筈もなく、ただうとうとしていただけだった。
そして、瞳の身体に付けられた心電図が、頻繁にブザーを鳴らしていた。
それも睡眠の邪魔になった要因の一つだった。
殆ど眠れないまま朝になった。
賢司は午後になると言っていたけど、午前中のうちに来てくれた。
「大丈夫か?何か看護師に言われたものひと通り揃えて来たんだけどさ、病院で貸してくれるものとかもあるらしいんだわ」
「こんな大袈裟な入院とかオペとか初めてだし、分かんないよね」
ふたりの話しを周りの看護師が聞いている、と、瞳は感じた。
そこから瞳の脳裏にひとつの疑惑が顔をもたげた。
警察?通報?
もしかしたら瞳の尿や血液から覚醒剤の成分が出るのではないか?
いや、間違いなく出ている筈だ。
そうなったら賢司が捕まってしまう。
とにかく賢司をここから遠ざけなければならない。
その時はただそれしか瞳の頭にはなかった。
病院には守秘義務があるなんて、この時の瞳にはその答えにたどり着く事など有り得なかった。
そう、だってまだ瞳は悪夢の中にいたのだから。
薬は抜けてない。
喉が渇く。
賢司が危ない。
この時の瞳はすっかり被害妄想に囚われていたのだった。
そして賢司にそっと耳打ちした。
「さっき警察みたいな人が来てたよ。多分私の身体から薬物反応出たんだよ。だから賢司はここから逃げて」
「え?マジでか?分かった俺ちょっとガラかわすから何かあったらLINEで教えてな」
「うん、とにかく逃げて」
やっぱり賢司を守りたい。
どんなに自分が傷ついても、守りたいと思うのはただひとり賢司だけ。
瞳はそう感じていた。
もう二度と離れたくはなかったから。
賢司が突然いなくなったので、看護師やら医師やらが慌てていた。
「旦那さん何処に行ったの?」
「あ~なんか仕事でどうしても行かないとならなくなったとか言ってました」
「え?奥さんオペがあるのに?」
「私は大丈夫です。仕事終わったら来るって言ってましたし」
「でも、原因は旦那さんが作ったのに?」
「えぇ、でもそんなに騒ぐ事でもないですし」
多分その瞳の反応の薄さに看護師も医師も驚いていた。
そして医師からこう告げられた。
「あのね、今回のこのケガね、旦那さんを傷害で訴える事も出来るんだよ」
「は??傷害なんて大げさですよ」
瞳はそう言ってけらけらと笑った。
そんな瞳の様子に、医師は不満そうに「変わってるね」と吐き捨てるように言ってその場を離れた。
それよりも喉が渇くのが辛いんですけど。
「あの、飲み物欲しいんですけど」
この時瞳の膀胱には穴が空いている状態なのだから、無論水分など摂らせて貰える筈はなかったのだ。
けれどよく回らない頭で考える事は、水分すら摂らせてくれないなんて酷いわ、こんなに喉が渇いているのに、だった。
内臓というのは、細菌にとても弱く脆いらしい。
つまり、今の瞳の身体は、内臓におしっこが漏れている状態な訳で、放っておいたら腹膜炎を起こして命の危険が迫っていたのだった。
だから緊急オペになったわけなのだけれど、瞳は自分の身体がそんな状態にあるなんて医師が大袈裟なだけ、としか思っていなかった。
つまるところいきなり命の危険があるなんて言われても、大抵の人なら信じられないのが普通だと思う。
だから、瞳の反応は恐らくほとんどの人がそうなる事だろうし、瞳が特別変わってるとは思わなかった。
でも、普通の人って、どんな人?
なんであたしだけがこんなにも恥ずかしくて、痛い思いをしなきゃならないの?
呪いかな?
何の呪いだろ?
なんて、そんなの薬のせいだって、分かり切ってる事だよね。
でもどんなに悲しんでも既にまな板の上の鯉なのだから、もう覚悟を決めるしかない。
その夜、瞳は酷い寒気に襲われて、看護師に布団を何枚かもよく分からないけれど、寒いと言って足して貰った。
眠剤は処方して貰ったけれど、普通の総合病院に瞳が飲んでいる様な強い眠剤などある筈もなく、ただうとうとしていただけだった。
そして、瞳の身体に付けられた心電図が、頻繁にブザーを鳴らしていた。
それも睡眠の邪魔になった要因の一つだった。
殆ど眠れないまま朝になった。
賢司は午後になると言っていたけど、午前中のうちに来てくれた。
「大丈夫か?何か看護師に言われたものひと通り揃えて来たんだけどさ、病院で貸してくれるものとかもあるらしいんだわ」
「こんな大袈裟な入院とかオペとか初めてだし、分かんないよね」
ふたりの話しを周りの看護師が聞いている、と、瞳は感じた。
そこから瞳の脳裏にひとつの疑惑が顔をもたげた。
警察?通報?
もしかしたら瞳の尿や血液から覚醒剤の成分が出るのではないか?
いや、間違いなく出ている筈だ。
そうなったら賢司が捕まってしまう。
とにかく賢司をここから遠ざけなければならない。
その時はただそれしか瞳の頭にはなかった。
病院には守秘義務があるなんて、この時の瞳にはその答えにたどり着く事など有り得なかった。
そう、だってまだ瞳は悪夢の中にいたのだから。
薬は抜けてない。
喉が渇く。
賢司が危ない。
この時の瞳はすっかり被害妄想に囚われていたのだった。
そして賢司にそっと耳打ちした。
「さっき警察みたいな人が来てたよ。多分私の身体から薬物反応出たんだよ。だから賢司はここから逃げて」
「え?マジでか?分かった俺ちょっとガラかわすから何かあったらLINEで教えてな」
「うん、とにかく逃げて」
やっぱり賢司を守りたい。
どんなに自分が傷ついても、守りたいと思うのはただひとり賢司だけ。
瞳はそう感じていた。
もう二度と離れたくはなかったから。
賢司が突然いなくなったので、看護師やら医師やらが慌てていた。
「旦那さん何処に行ったの?」
「あ~なんか仕事でどうしても行かないとならなくなったとか言ってました」
「え?奥さんオペがあるのに?」
「私は大丈夫です。仕事終わったら来るって言ってましたし」
「でも、原因は旦那さんが作ったのに?」
「えぇ、でもそんなに騒ぐ事でもないですし」
多分その瞳の反応の薄さに看護師も医師も驚いていた。
そして医師からこう告げられた。
「あのね、今回のこのケガね、旦那さんを傷害で訴える事も出来るんだよ」
「は??傷害なんて大げさですよ」
瞳はそう言ってけらけらと笑った。
そんな瞳の様子に、医師は不満そうに「変わってるね」と吐き捨てるように言ってその場を離れた。
それよりも喉が渇くのが辛いんですけど。
「あの、飲み物欲しいんですけど」
この時瞳の膀胱には穴が空いている状態なのだから、無論水分など摂らせて貰える筈はなかったのだ。
けれどよく回らない頭で考える事は、水分すら摂らせてくれないなんて酷いわ、こんなに喉が渇いているのに、だった。
内臓というのは、細菌にとても弱く脆いらしい。
つまり、今の瞳の身体は、内臓におしっこが漏れている状態な訳で、放っておいたら腹膜炎を起こして命の危険が迫っていたのだった。
だから緊急オペになったわけなのだけれど、瞳は自分の身体がそんな状態にあるなんて医師が大袈裟なだけ、としか思っていなかった。
つまるところいきなり命の危険があるなんて言われても、大抵の人なら信じられないのが普通だと思う。
だから、瞳の反応は恐らくほとんどの人がそうなる事だろうし、瞳が特別変わってるとは思わなかった。
でも、普通の人って、どんな人?
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