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第四章
act 20 夏樹が死んだ
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それは突然の出来事であったにもかかわらず、必然のように全てが用意されていた。
その日、瑠花の従姉妹の結芽(ゆめ)ちゃんが、家に来ていた。
そして、まるでそれを知っているかのように、夏樹の元カノのちえから結芽ちゃんの携帯に着信が入った。
『賢司さんと連絡取りたいんだけど』
「ちえ姉ちゃん、どうしたの?」
『夏樹が携帯の電源も切ったままもう三日も連絡が取れなくて、今夏樹のアパートまで来てるんだけど…車はあるのに部屋に灯りがついてないの』
「分かったよ、ちえ姉ちゃんに連絡するように言うよ」
それより以前から、夏樹は時々不安定になり「死にたい」と言うことが頻繁になっていた 。
夏樹はうつ病になっていた。
死にたいと口にするうつ病患者は、ひとりにしたら死のうとばかりする。
うつ病患者を、ひとりにしてはダメ。
そう言って、瞳は家に連れて来るように言ったこともあったけど、その時は賢司が夏樹のアパートに行って、悩み相談やら仕事の愚痴やら聞いて、それで落ち着いたので賢司は帰って来た時もあった。
その後特に変わった様子もなかった……と言っても、四六時中一緒にいる訳ではないから、夏樹の本当の苦しみは誰にも分からなかった。
ちえが合鍵は持ってるけど、中で首でも吊ってたら、って思ったら怖くてひとりで入れない、そう賢司に言ってきた。
賢司も、嫌な予感がしたのだろう。
「分かったよ、今からアパート行くから待ってて」
そう言って「俺、ちょっと行ってくるわ。あいつもしかしたら……」語尾は聞こえなかった。
そのままちえと賢司ふたりで、夏樹のアパートの鍵を開け中に入った瞬間、賢司に向かってぶわっ!っと熱風が吹いてきたらしい。
案の定、夏樹は、ドアノブにぶら下がる、と言うよりは、そこに座って寝ているようにしか見えなかったらしいけど。
本当に首を吊っていた。
享年34才。
余りにも突然で、そして早すぎた夏樹の人生の終焉。
死後三日ほど経っていたらしいのに、この炎天下の中、腐りもしないでまるで寝ているような穏やかな死に顔だった、と賢司が話していた。
瑠花は、天敵と言いながらも「夏樹にいちゃん」と慕っていたから、自分でもびっくりするくらいショックだったらしい。
そして夏樹は帰る場所を間違えて、何故かうちに住みついている。
時折、廊下を歩く足音や、夏樹の声が聞こえてくる。
その数日前から、瑠花の夢には毎晩夏樹が登場してくるらしい。
夏樹は、本当に死ぬ気はなかったと、瞳にそう話しかけてくる。
『俺、なんで死んじゃったんですかね?』
いや、それ、私に聞かれても分からんし。
ただ一つだけ確かなことがある。
それは、もう二度と夏樹には会えないっていう真実。
瞳は思う。
夏樹は、覚醒剤の闇に飲み込まれてしまったんだと。
だって夏樹、あんたの周り、真っ暗だよ?
果てしない闇が拡がってるだけだもん。
だから、それが、人間辞めますか?
って事なんじゃないのかな。
そして夏樹が瞳に言う。
『俺独りで淋しいんで賢司さんこっちに来てもらってもいいですか?』
それは賢司次第なんじゃないの?
夏樹の闇に飲み込まれてしまえばそっちに行くだろうし、こっちにまだ大切だと思えるものがあるのならば踏みとどまるだろうしね。
結局、瞳にも賢司の心の闇がどのくらい深く広がっているのかは何となくでしか分からなかった。
それに、それを言うならば、瞳の心にも闇はあるのだから。
その日、瑠花の従姉妹の結芽(ゆめ)ちゃんが、家に来ていた。
そして、まるでそれを知っているかのように、夏樹の元カノのちえから結芽ちゃんの携帯に着信が入った。
『賢司さんと連絡取りたいんだけど』
「ちえ姉ちゃん、どうしたの?」
『夏樹が携帯の電源も切ったままもう三日も連絡が取れなくて、今夏樹のアパートまで来てるんだけど…車はあるのに部屋に灯りがついてないの』
「分かったよ、ちえ姉ちゃんに連絡するように言うよ」
それより以前から、夏樹は時々不安定になり「死にたい」と言うことが頻繁になっていた 。
夏樹はうつ病になっていた。
死にたいと口にするうつ病患者は、ひとりにしたら死のうとばかりする。
うつ病患者を、ひとりにしてはダメ。
そう言って、瞳は家に連れて来るように言ったこともあったけど、その時は賢司が夏樹のアパートに行って、悩み相談やら仕事の愚痴やら聞いて、それで落ち着いたので賢司は帰って来た時もあった。
その後特に変わった様子もなかった……と言っても、四六時中一緒にいる訳ではないから、夏樹の本当の苦しみは誰にも分からなかった。
ちえが合鍵は持ってるけど、中で首でも吊ってたら、って思ったら怖くてひとりで入れない、そう賢司に言ってきた。
賢司も、嫌な予感がしたのだろう。
「分かったよ、今からアパート行くから待ってて」
そう言って「俺、ちょっと行ってくるわ。あいつもしかしたら……」語尾は聞こえなかった。
そのままちえと賢司ふたりで、夏樹のアパートの鍵を開け中に入った瞬間、賢司に向かってぶわっ!っと熱風が吹いてきたらしい。
案の定、夏樹は、ドアノブにぶら下がる、と言うよりは、そこに座って寝ているようにしか見えなかったらしいけど。
本当に首を吊っていた。
享年34才。
余りにも突然で、そして早すぎた夏樹の人生の終焉。
死後三日ほど経っていたらしいのに、この炎天下の中、腐りもしないでまるで寝ているような穏やかな死に顔だった、と賢司が話していた。
瑠花は、天敵と言いながらも「夏樹にいちゃん」と慕っていたから、自分でもびっくりするくらいショックだったらしい。
そして夏樹は帰る場所を間違えて、何故かうちに住みついている。
時折、廊下を歩く足音や、夏樹の声が聞こえてくる。
その数日前から、瑠花の夢には毎晩夏樹が登場してくるらしい。
夏樹は、本当に死ぬ気はなかったと、瞳にそう話しかけてくる。
『俺、なんで死んじゃったんですかね?』
いや、それ、私に聞かれても分からんし。
ただ一つだけ確かなことがある。
それは、もう二度と夏樹には会えないっていう真実。
瞳は思う。
夏樹は、覚醒剤の闇に飲み込まれてしまったんだと。
だって夏樹、あんたの周り、真っ暗だよ?
果てしない闇が拡がってるだけだもん。
だから、それが、人間辞めますか?
って事なんじゃないのかな。
そして夏樹が瞳に言う。
『俺独りで淋しいんで賢司さんこっちに来てもらってもいいですか?』
それは賢司次第なんじゃないの?
夏樹の闇に飲み込まれてしまえばそっちに行くだろうし、こっちにまだ大切だと思えるものがあるのならば踏みとどまるだろうしね。
結局、瞳にも賢司の心の闇がどのくらい深く広がっているのかは何となくでしか分からなかった。
それに、それを言うならば、瞳の心にも闇はあるのだから。
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