仄暗い部屋から

神崎真紅

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第一章

act 5 過去

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  賢司は、以前に薬物の急性中毒で、死にかけた子を見た事があった。
  まだ未成年だったその少女は、彼氏と喧嘩をした直後に、知り合いの女性にこう言っていたらしい。

 「これ打ったら死ねるかな....」

  女性はそのまま少女に薬を打った。
  突然の異変。
  少女は胸を仰け反らせて、喉元を掻きむしった。

 そして....。
  呼吸が止まった。
  女性は怖くなって、賢司に電話を掛けて来た。
  賢司がそのホテルに呼ばれて行った時には、少女の心臓は止まり、呼吸も停止していた。
  咄嗟に救急車を呼ぼうとしたら、女性はそのまま放置して逃げてしまった。

  警察に捕まるのが恐かったのだろう。
  けれど、それでは賢司が逮捕されてしまう。
  賢司は必死で少女に蘇生を始めた。
  医師でもない賢司が、人口呼吸を繰り返し、心臓マッサージを施した。

 やがて....。
 少女の心臓は脈を打ち始め、息を吹き返した。
  それからが大変だった。
  少女はまだ悪夢の中にいた。
  幻覚、幻聴....。
  些細な事が、少女には全て恐怖になって襲って来る。
  いくらラブホテルとは言っても、部屋中を叫びながら暴れ回ったのでは、フロントから苦情の電話も鳴る。
  それがまた少女をパニックに陥れた。
   賢司は必死で少女をベッドに押さえつけて、枕で声を塞いでいたが限界があった。

  友達の彼女に頼んで、バスタブに熱いお湯を入れて貰い、一緒に入って貰った。
  とにかく、一刻も早く体内から薬を抜かなければならない。
 それには熱い風呂で汗をかかすしか、方法がない。
  悪夢の様な時間が過ぎて、少女は漸く(ようやく)自分を取り戻した。

 「賢司さん?何してるんですか?」

   少女の記憶には、何も刻まれていなかった....。
   自分の心臓が止まった事すらも。
  これが急性薬物中毒の症状だった。


  『ニンゲンヤメマスカ?ヤクブツヤメマスカ?』



----------....


瞳の花芯から、流れ出す白密を指に絡めて、賢司は言った。

 「瞳、何だ?この厭らしいモノは」
 「あ....、け、ん....」

  瞳の身体はまだ震えている。
 汗は、滝の様に流れ落ちているのに....。

 「さ、む....」
 「まだ寒いか?じゃあ今度はこっちの穴に入れてみるか?」

 賢司はそう言うと、瞳の後ろの穴に指を入れた。

 「ひっ....い、た....」
 「痛いのか?少しずつ拡げてやるか」

 取り出したのは、拡張用のバイブだ。
それを瞳の後ろの穴に、少しずつ挿入してゆく。

 「あ....あ....」

  瞳の震えが、一層強くなる。
  歯がカチカチと音を立てる。

 「感じるだろ?後ろの穴もな」 
 「ひっ....い、ひっ....」

 漏れ聞こえるのは、瞳の吐息の様な嗚咽だけ。
 何も話せない....。
このままあたしはどうなるの....?


 既にふたりは2日間、一睡もしていない。
 薬が効いている間は、眠気も来ない。
 無論、食事も丸2日食べてない。
 食欲も抑制される。
それでも瞳は、ただ快楽に溺れていった....。

 「ひっ....、ひっ....」
 「気持ちいいんだろ?瞳、お前は俺の奴隷だ」

ど、れ、い....?
な、に....? 

 「ほら、どうだ?逝かせて欲しくなるだろう?」

 前と後ろ、同時に責められて、瞳の声が部屋中に響いた。

 「ひっ....ひぃ~、いい....。もっと、し、て....」
 「もっとか?本当に淫乱な女になって来たな」

くっくっと、笑いながら賢司は瞳の花芯の中で、固く突起した部分にローターを押し付けた。

 「ひぃっ....い、くっ....」

 身体を仰け反らせて、瞳はまた達した。
もう何度逝かされたのだろうか?
 瞳の花弁が赤く腫れ上がっていた。
それでも瞳は、求め続ける。

まるで....。
 壊れたマリオネットの様に見える。

 「瞳、お前がそうやって狂って行く姿が見たかった」

ぽつりと、賢司が呟いた。
 賢司は瞳を狂わせたかったのか?

 真偽は判らない。
それは、賢司の中にしかないからだった。
ただ....。
 狂わせた身体は、二度と元には戻れない。
 瞳が賢司にしか感じなくなる事こそが、賢司の思惑だったのだろうか?

 「ひっ....あぁっ!もっと....」

 乳首を掴み捻られながら、身悶えする瞳を嬉しそうに苛めていた。

 「ほら、どうだ?気持ちいいんだろ?」
 「ひっ....ひぃ~っ....」
 「まだ逝くのは、早いぜ....」

 快感にその身を任せていた瞳から、賢司の手が離れてゆく。

 「あ....、あ....、もっと....」
 「苛めて欲しくておかしくなりそうか?」
 「あ....」
 「ちゃんと言ったら、してやるぜ。瞳?」



 3日が過ぎていた。
やっと賢司自身が使い物になって来た。

 「瞳、欲しいだろ?」
 「うぅ....、欲し、い....」

 入り口付近で焦らされて、瞳の腰が揺らめく。
 一気に貫いて....。

 「俺も限界だなぁ~」
 「け…んじ、おね、がい」
 「判ったよ、俺だって瞳の中に入れたくて、ウズウズしてんだ」

それから賢司は、瞳の濡れそぼった花芯へと、その身を突き進めた。

 「きつく締まってて、最高だぜ。瞳」
 「くっ....、はぁ~ん....」

 瞳の快感も尋常じゃない。
 賢司の腰が動く度に、最高頂に達してしまう。
その波が、留まる事を知らぬかの様に瞳を襲う。
 意識を保てる筈がない。
 声にならない程の快感。

かつて、味わった事のない異次元の世界に引き摺り込まれてゆく....。
 首が千切れる程、激しく左右に振りながら、瞳は数十回は絶頂に達した。
そのまま....。
 動けなくなった。

 「瞳、気絶か....」

 賢司もまた、瞳の熱くて蕩けそうな花芯に埋もれて、やっとの思いで射精した....。



…―…朝。

 仄かな陽射しが、部屋の窓を照らしていた。

 「瞳、大丈夫か?」
 「賢司....?あたし....どうして....」
 「憶えてないか?仕方ねぇな」
 「賢司、会社は?」
 「あぁ、二人ともインフルエンザに患かった事になってるぜ」

 何故そんな嘘を....?
 起き上がろうとして、瞳は理解した。
 立ち上がれない....。
どうして?

 「賢司....、あたし力が入らない」
 「そりゃそうだろうな。三日も何も食ってねぇし、寝てねぇしな」

 三日....?
そんなに時間が経ってるの?
 瞳の困惑が伝わって来る。

 「何か食えそうか?食って寝れば元に戻るけど」
 「....無理かも....」

 「じゃあ水分だけは摂れよ?」
 「ん....、喉が渇いた」
 「待ってろ」

 賢司は冷蔵庫から、スポーツドリンクを取り出し瞳に渡した。

 「ありがと....」

 何か言いたそうな、瞳の表情を見て、賢司が言った。

 「瞳、結婚するか?」
 「えっ?」
 「どうせもうお前は俺だけのものだ。このまま籍を入れよう」

 瞳を手放したくない....。
はっきりと感じた。
 俺には瞳が必要だ、と。
 無論、瞳も俺から離れる事など出来る筈がない。
その為に狂わせたんだからな....。
まだ瞳自身気付いてはいないだろうけどな。

 「....いきなりのプロポーズね?」
 「返事は?」
 「判った、OKよ」

 断わる筈がなかった。
あたしは、賢司なしでは生きられない。
 瞳の、心の奥底で誰かがそう言っていた気がした。
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