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第一章
act 6 結婚という名の鎖
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賢司が最初に薬に手を出したのは、19の時だった。
それから数年後に逮捕された。
賢司には既に20年の使用歴があった。
薬に対してもかなりの知識を持っていて、見ただけで良し悪しが判る。
そんな賢司が何故今回初めて瞳に薬を使ったのか?
それは。
ノーマルなSEXでは、物足りない事。
自分だけが薬を使っていたのでは、瞳にとってSEXそのものが苦痛になってしまう事。
そして。
瞳が決して自分から離れなくなる事が最大の目的だった。
その思惑は、成功した。
瞳は今までに何度か、賢司からのプロポーズを断っていた。
まだ仕事を辞めたくない、そう言っては結婚を断り続けてきた。
それが今や二つ返事でOKしたのだった。
そう。
これでいい。
秘密は共有出来る。
誰にも知られる危険は、ない。
「瞳、もっと俺好みの女にしてやるよ。時間は無限にあるんだからな」
「えっ....?どういう意味?」
記憶のない瞳には、自分の身体の変化に気付く筈がなかった。
それから瞳は、嫌でも自分の身体の変化を認識する事になるとは、この時は思いもよらなかっただろう。
「おはようございます。すみませんでした」
賢司と瞳が5日振りに出勤して来た。
やっと薬が抜けて、何とか睡眠も食事も摂れる様になった。
「瞳、大丈夫なの?随分痩せたんじゃない?」
「うん....、熱が高くて殆ど食べられなかったから」
本当は、薬の作用で睡眠も食事も摂れなかったんだけど。
瞳はその事を知らない。
賢司が上司に何か話しているのが、目に入った。
「....はい、それで仲人をお願いしたく....」
「そうか、決まったのか。いや、おめでとう。喜んで引き受けさせて貰うよ」
「ありがとうございます、部長」
あぁ....。
これで独身時代も終わるのね。
「瞳、結婚するって本当なの?」
同期の尚美が聞いて来た。
「うん....」
「?な~に?あんまり嬉しそうじゃないわね?」
怪訝そうに見つめる尚美に、瞳は我に返った。
「あ、嬉しいけどさ、自由がなくなっちゃうじゃない?」
「そっか、マリッジブルーってやつね」
ほ....。
背中に賢司の視線を感じていた。
あたしは....。
もう戻れないんだわ。
「瞳!」
背後から賢司の声がした。瞳はスローモーションの様に、ゆっくりと振り返った。
「....何?」
「何だよ、機嫌悪いな。仲人部長に頼んだからな」
「そう....」
いつもは愛想の良い瞳が、不機嫌さを隠しもせずに、ただ返事だけした。
切れ目か....。
機嫌が悪いのは、薬が抜けて感情のコントロールが出来なくなっているのだろう。
瞳は判らないだろうが。
「どうした?気分でも悪いのか?」
「別に....」
それだけを言って瞳は、休憩室に入っていった。
喉が渇く....。
気だるさもまだ続いていた。
ふと、体重計が目に付いた。
瞳はその体重計に乗って、目を疑った。
6㎏も落ちてる....。
(これじゃ、尚美に痩せたって言われる筈だわ)
でも、食べる気になれない。
口に入る物は水分だけだった。
これでは体力が保てる筈がない。
「瞳?お前帰った方がいいんじゃねぇか?」
「でも、仕事が溜まってるから」
「今日だけ早退して、帰ったら睡眠薬を飲んで寝ろ。そしたら食える様になるからな」
(賢司は理由を知っててそう言ってるんだわ)
「判った、今日はそうする」
瞳は賢司に言われるままに、会社を早退して家に帰った。
だるさはまだ続いている。食欲も、ない。
『帰ったら、睡眠薬を飲んで寝ろよ』
賢司の言葉を噛み締めて、睡眠薬を探した。
賢司の机の引き出しを掻き回していて、瞳はビニール袋に入った白っぽい粉を見つけた。
「何かしら....?」
まさか?
これが媚薬なのかしら....?
そんな事を今は詮索している状態じゃ、なかった。
先程からひどく頭痛がする。
とにかく睡眠薬を飲んで寝よう。
引き出しの中に、数種類の薬の入った紙袋を見つけた。
「これかな....?」
瞳は頭痛から逃れる様に、その薬を飲んだ。
暫くして、目眩にも似た感覚が瞳を襲う。
ふらふらと、ベッドに倒れ込みそのまま深い眠りに堕ちていった。
ぐっすりと眠る瞳に、会社から帰って来た賢司が近付く。
その手には、二本の注射器が握られていた....。
それから数年後に逮捕された。
賢司には既に20年の使用歴があった。
薬に対してもかなりの知識を持っていて、見ただけで良し悪しが判る。
そんな賢司が何故今回初めて瞳に薬を使ったのか?
それは。
ノーマルなSEXでは、物足りない事。
自分だけが薬を使っていたのでは、瞳にとってSEXそのものが苦痛になってしまう事。
そして。
瞳が決して自分から離れなくなる事が最大の目的だった。
その思惑は、成功した。
瞳は今までに何度か、賢司からのプロポーズを断っていた。
まだ仕事を辞めたくない、そう言っては結婚を断り続けてきた。
それが今や二つ返事でOKしたのだった。
そう。
これでいい。
秘密は共有出来る。
誰にも知られる危険は、ない。
「瞳、もっと俺好みの女にしてやるよ。時間は無限にあるんだからな」
「えっ....?どういう意味?」
記憶のない瞳には、自分の身体の変化に気付く筈がなかった。
それから瞳は、嫌でも自分の身体の変化を認識する事になるとは、この時は思いもよらなかっただろう。
「おはようございます。すみませんでした」
賢司と瞳が5日振りに出勤して来た。
やっと薬が抜けて、何とか睡眠も食事も摂れる様になった。
「瞳、大丈夫なの?随分痩せたんじゃない?」
「うん....、熱が高くて殆ど食べられなかったから」
本当は、薬の作用で睡眠も食事も摂れなかったんだけど。
瞳はその事を知らない。
賢司が上司に何か話しているのが、目に入った。
「....はい、それで仲人をお願いしたく....」
「そうか、決まったのか。いや、おめでとう。喜んで引き受けさせて貰うよ」
「ありがとうございます、部長」
あぁ....。
これで独身時代も終わるのね。
「瞳、結婚するって本当なの?」
同期の尚美が聞いて来た。
「うん....」
「?な~に?あんまり嬉しそうじゃないわね?」
怪訝そうに見つめる尚美に、瞳は我に返った。
「あ、嬉しいけどさ、自由がなくなっちゃうじゃない?」
「そっか、マリッジブルーってやつね」
ほ....。
背中に賢司の視線を感じていた。
あたしは....。
もう戻れないんだわ。
「瞳!」
背後から賢司の声がした。瞳はスローモーションの様に、ゆっくりと振り返った。
「....何?」
「何だよ、機嫌悪いな。仲人部長に頼んだからな」
「そう....」
いつもは愛想の良い瞳が、不機嫌さを隠しもせずに、ただ返事だけした。
切れ目か....。
機嫌が悪いのは、薬が抜けて感情のコントロールが出来なくなっているのだろう。
瞳は判らないだろうが。
「どうした?気分でも悪いのか?」
「別に....」
それだけを言って瞳は、休憩室に入っていった。
喉が渇く....。
気だるさもまだ続いていた。
ふと、体重計が目に付いた。
瞳はその体重計に乗って、目を疑った。
6㎏も落ちてる....。
(これじゃ、尚美に痩せたって言われる筈だわ)
でも、食べる気になれない。
口に入る物は水分だけだった。
これでは体力が保てる筈がない。
「瞳?お前帰った方がいいんじゃねぇか?」
「でも、仕事が溜まってるから」
「今日だけ早退して、帰ったら睡眠薬を飲んで寝ろ。そしたら食える様になるからな」
(賢司は理由を知っててそう言ってるんだわ)
「判った、今日はそうする」
瞳は賢司に言われるままに、会社を早退して家に帰った。
だるさはまだ続いている。食欲も、ない。
『帰ったら、睡眠薬を飲んで寝ろよ』
賢司の言葉を噛み締めて、睡眠薬を探した。
賢司の机の引き出しを掻き回していて、瞳はビニール袋に入った白っぽい粉を見つけた。
「何かしら....?」
まさか?
これが媚薬なのかしら....?
そんな事を今は詮索している状態じゃ、なかった。
先程からひどく頭痛がする。
とにかく睡眠薬を飲んで寝よう。
引き出しの中に、数種類の薬の入った紙袋を見つけた。
「これかな....?」
瞳は頭痛から逃れる様に、その薬を飲んだ。
暫くして、目眩にも似た感覚が瞳を襲う。
ふらふらと、ベッドに倒れ込みそのまま深い眠りに堕ちていった。
ぐっすりと眠る瞳に、会社から帰って来た賢司が近付く。
その手には、二本の注射器が握られていた....。
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