仄暗い部屋から

神崎真紅

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第四章

act 1 プロローグ

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 やっと戻って来た賢司が自宅に着いた時、瞳の頭上で爆弾が破裂した。



 「・・・・何この部屋?お前三年間何やってたんだ?」
 「ごめん。この惨状はあたしにはもうどうしていいのか判らない。だからもう謝るしかないと思って」
 「多少は覚悟してたけどな、ここまで酷いとは俺の予想のはるか斜め上をいってるよ。どうすんだ?って片付けなきゃ住めねぇわな」

  瞳は全く片付けが出来ない。
  どこをどうすれば片付くのか、という基本がまず全く分らない。
  瞳は実家で家事など一切やった事がなかった。
  無論、部屋の掃除は何故か父がやっていたのだ。

  賢司は既に行動開始していた。
  なんでそんなに次から次へと出来るんだろ?
  素朴な、と言うか常人ならまずそんな疑問は持たないのだろうけど、瞳にとってはそれこそが最大の疑問だったのだ。

  賢司とふたり、一週間かけて片付けた部屋は、こんなに広かったのかと感心する程全てがきちんと整理されていた。
  この状態を維持出来ればいいのだけれど・・・・。

  この一週間、毎日外食だった。
  まだ働いてもいない賢司がなぜお金を持っているのか、瞳は不思議に思い聞いてみた。
  懲役なので、刑務所の中で働いた分は一応賃金が貰えるらしい。
  出所しても、誰も迎えに来ない人もいるのだ。
  そんな人の為に、一日数百円程度の給料が出るらしい。
  賢司は出所の時点で14万くらい持っていたらしい事を、教えてくれた。
  だから羽振りがよかったのか、と、納得した。

  それから数日後。
  賢司は、今までとは全く違う仕事に就いた。
  農家のビニールハウス建て、という極めて珍しい仕事だが、出所の前からここの社長さんが声を掛けてくれていた。

  塀の中にいる間に仕事が決まっているという事は、仮釈に大きく響く。
  しかし、真夏の炎天下での慣れない作業は、賢司にとってかなりきつかったのだろう。

  それでも賢司は絶対に瞳には、仕事がきついとか辛いとか泣き言ひとつ、洩らさなかった。
  だから気付けなかった。
  賢司の心が瞳から少しずつ離れていた事に・・・・。
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