69 / 87
第四章
act 6 連鎖
しおりを挟む
瞳は、仕事のシフトが入っていたので、休みと合わせて二日間、賢司に付き合って薬を使い、いつものドラッグセックスを一睡もせずににやった。
初日は仕事が終わってから、真っ先に逸る(はやる)心を抑える様に、賢司の待つ新居に向かった。
どんなにキレイ事を並べても、覚せい剤という麻薬の味を覚えてしまった瞳には、その誘惑に勝てるわけもなく、また一分一秒が途轍(とてつ)もなく長く感じた。
待ちくたびれた様に、賢司は瞳の左内肘に針を刺した。
用意周到な賢司の事、新居に着いた時には、既に二人分の薬は作ってあった。
賢司は必ず瞳に先に打って、様子を見てから自分に打つ。
注射器を見ただけで、フラッシュバックを起こす。
もう、止められない。
賢司に全てを委ねた。
そして始まるお決まりのセックス。
この時、既に瞳の脳裏に『仕事』の文字は掻き消えていた。
それでもまだ救いだったのが、明日休みだったという事。
そして二日間、ぶっ通しで何度も薬を打ちながら、何処までも深い暗闇と言いようのない快楽に沈んでゆく。
そして、三日目。
瞳はこの日仕事が入っていた。
二日間一睡もせずに、仕事に行ったのは瞳にとって初めての事だった。
それは、当然起こるべきことのように起こった。
問題が、それも一番厄介な問題が起きてしまった。
それは新居に引っ越して間もなくの頃だった。
賢司がひとりで走り出した。
毎日毎日、尽きる事無く薬を使い始めた。
最悪の展開だった。
この時瞳が一緒に付き合ったのは、始めの二日と、その後仕事が終わってからの一日だけだった。
そんなに眠らずに仕事に行けば、何かしら失敗をするかも知れない。
そして・・・・。
誰かにバレやしないか?と、考えてしまう。
覚醒剤特有の、汗の臭いと、くぐもった様に低くなる、声のトーン。
瞳が働いているのは、コンビニだ。
国道沿いにあるこの店には、頻繁にスピード違反で捕まったり、事故で警官が立ち寄る事が多いのだ。
瞳はそれが怖かった。
そう言っては聞こえがいいが、現実には賢司から誘われたら断れない、自分自身の弱さから逃げていただけの事。
賢司に誘われる前に急くように睡眠薬を飲んでベッドに入った。
「瞳・・・・」
賢司の呼ぶ声が、遠のく意識の向こうから聞こえた。
そのまま睡眠薬の力で、瞳の意識は沈んでいった。
諦めた賢司が取った行動は、瞳に対する腹いせの様なものに近かった。
一体どれだけの量の覚醒剤を持っていたのだろう?
その日から賢司は、一週間続けて薬を使い続けた。
そして、またおかしな妄想に囚われていった。
「瞳、犬があんまり吠えるからさ俺、携帯を庭に置いて録画してみたんだよ。そしたらな、変な人影らしきものが写ってたんだ」
「え、やだ。誰か庭に入って来てるの?」
「いや、俺は違うと思うんだ。ほら、これ観てみろよ。人影が赤いライトを持って動いてるから」
その映像を見たけれど、確かに赤いライトの様なものが動いてるのは写っていた。
けれど、賢司の言うような人影らしきものは、瞳には見えなかった。
「そうだね、何だろう?この赤い点?」
「瞳、お前本当に知らないのか?」
「は?何を?」
またおかしな妄想話に付き合わされるのかと、瞳の声のトーンが、明らかに変わった。
「何を怒ってるんだよ?俺は瞳に知らないか、って聞いただけだろ?」
「そんなのあたしが知ってるわけないよ。それより本当に誰か庭に入って来てるんなら警察呼ばなきゃ」
少し、賢司に皮肉った言い方をした瞳に対して、賢司はやはり怒りを隠しながらも答えた。
「俺は警察の事なんか一言も言ってないぞ?何でそんな話しになるんだよ?」
「だって、他人がうちの庭に入って来てるんなら犯罪でしょ?」
「本当に他人なのか俺には信じられないけどな」
あぁ、やっぱりこの展開か・・・・。
不毛な言い争いをする気なんてないのに。
あんな赤い点なんて、賢司がスマホで録画してたんだったら、その光が窓ガラスに反射していただけだと思うのに。
この時の一件が、思いもよらない方向に話は進んでいった。
初日は仕事が終わってから、真っ先に逸る(はやる)心を抑える様に、賢司の待つ新居に向かった。
どんなにキレイ事を並べても、覚せい剤という麻薬の味を覚えてしまった瞳には、その誘惑に勝てるわけもなく、また一分一秒が途轍(とてつ)もなく長く感じた。
待ちくたびれた様に、賢司は瞳の左内肘に針を刺した。
用意周到な賢司の事、新居に着いた時には、既に二人分の薬は作ってあった。
賢司は必ず瞳に先に打って、様子を見てから自分に打つ。
注射器を見ただけで、フラッシュバックを起こす。
もう、止められない。
賢司に全てを委ねた。
そして始まるお決まりのセックス。
この時、既に瞳の脳裏に『仕事』の文字は掻き消えていた。
それでもまだ救いだったのが、明日休みだったという事。
そして二日間、ぶっ通しで何度も薬を打ちながら、何処までも深い暗闇と言いようのない快楽に沈んでゆく。
そして、三日目。
瞳はこの日仕事が入っていた。
二日間一睡もせずに、仕事に行ったのは瞳にとって初めての事だった。
それは、当然起こるべきことのように起こった。
問題が、それも一番厄介な問題が起きてしまった。
それは新居に引っ越して間もなくの頃だった。
賢司がひとりで走り出した。
毎日毎日、尽きる事無く薬を使い始めた。
最悪の展開だった。
この時瞳が一緒に付き合ったのは、始めの二日と、その後仕事が終わってからの一日だけだった。
そんなに眠らずに仕事に行けば、何かしら失敗をするかも知れない。
そして・・・・。
誰かにバレやしないか?と、考えてしまう。
覚醒剤特有の、汗の臭いと、くぐもった様に低くなる、声のトーン。
瞳が働いているのは、コンビニだ。
国道沿いにあるこの店には、頻繁にスピード違反で捕まったり、事故で警官が立ち寄る事が多いのだ。
瞳はそれが怖かった。
そう言っては聞こえがいいが、現実には賢司から誘われたら断れない、自分自身の弱さから逃げていただけの事。
賢司に誘われる前に急くように睡眠薬を飲んでベッドに入った。
「瞳・・・・」
賢司の呼ぶ声が、遠のく意識の向こうから聞こえた。
そのまま睡眠薬の力で、瞳の意識は沈んでいった。
諦めた賢司が取った行動は、瞳に対する腹いせの様なものに近かった。
一体どれだけの量の覚醒剤を持っていたのだろう?
その日から賢司は、一週間続けて薬を使い続けた。
そして、またおかしな妄想に囚われていった。
「瞳、犬があんまり吠えるからさ俺、携帯を庭に置いて録画してみたんだよ。そしたらな、変な人影らしきものが写ってたんだ」
「え、やだ。誰か庭に入って来てるの?」
「いや、俺は違うと思うんだ。ほら、これ観てみろよ。人影が赤いライトを持って動いてるから」
その映像を見たけれど、確かに赤いライトの様なものが動いてるのは写っていた。
けれど、賢司の言うような人影らしきものは、瞳には見えなかった。
「そうだね、何だろう?この赤い点?」
「瞳、お前本当に知らないのか?」
「は?何を?」
またおかしな妄想話に付き合わされるのかと、瞳の声のトーンが、明らかに変わった。
「何を怒ってるんだよ?俺は瞳に知らないか、って聞いただけだろ?」
「そんなのあたしが知ってるわけないよ。それより本当に誰か庭に入って来てるんなら警察呼ばなきゃ」
少し、賢司に皮肉った言い方をした瞳に対して、賢司はやはり怒りを隠しながらも答えた。
「俺は警察の事なんか一言も言ってないぞ?何でそんな話しになるんだよ?」
「だって、他人がうちの庭に入って来てるんなら犯罪でしょ?」
「本当に他人なのか俺には信じられないけどな」
あぁ、やっぱりこの展開か・・・・。
不毛な言い争いをする気なんてないのに。
あんな赤い点なんて、賢司がスマホで録画してたんだったら、その光が窓ガラスに反射していただけだと思うのに。
この時の一件が、思いもよらない方向に話は進んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる