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第四章
act 10 トリップ
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賢司は、立て続けに怪我をしてから、まるで人が変わった様に真面目になった。
今までがあんまりにも不真面目だったから、余計にそう感じるだけなのかも、知れないけど。
とにかく、瞳にとっては平和な日々が続いていた。
やっぱり、出来る事なら覚醒剤はやらないで暮らしたい。
身体に入っていたら、逃げも隠れも出来ない事実になっちゃうんだし。
いつまた何かの拍子で逮捕されちゃう事だって、あるんだから。
瞳は、例え任意であったにしても、尿検査された時、本当に終わった、と、思っていたからだった。
これで自分も逮捕されてしまうんだ・・・・と考えたら、本当に怖かった。
あの時、どうして瞳の尿から、覚醒剤の反応が出なかったのか?
今考えても、この世の七不思議としか、思えない。
度重なる芸能人の、覚醒剤使用の現実から、男=女の方程式が出来上がりつつあった。
瞳にとって、こんなに迷惑な事は、ない。
賢司=瞳という方程式は、簡単に出来上がるのだから。
・・・・賢司の腰の怪我は、例え強くても、痛み止めの薬を飲んで何とか我慢が出来るのなら、オペはしない方がいいという事になった。
椎間板ヘルニアのオペは、一度しか出来ないのだと主治医に言われたらしい。
それに、時間をかけてだが、ある程度は、はみ出した椎間板も戻るらしい。
つまりは本来すべての動物が持つ、自然治癒力に賭けるわけだ。
まぁ、賢司がオペなんて事になったら、うるさくて仕方ないだろうから瞳は内心ほっとしていた。
災いとは、忘れた頃にやってくるものなのだろうか?
賢司が立て続けに怪我をしてから、何か月か過ぎた春の頃。
いつもご飯を食べたらすぐに寝てしまう賢司が、まだ自分の部屋で起きていた。
普段閉めないドアを閉めて、明らかに様子が怪しかった。
瞳は、うすうす、という半端なものじゃなくて、より確信的に気付いていたのだが、仕事がある。
明日のシフトは早朝6時出勤だった。
賢司と目を合わせないようにしながら、自分の部屋に行き、慌てて睡眠薬を飲み、そのまま逃げるように寝た。
新居に引っ越してからは、賢司と瞳は、それぞれ個室を持った。
その理由が、お互いのいびきが煩くて眠れないから、というのは賢司の表向きの理由に他ならなかった。
瞳も、自由にしていられる私室が持てるのは、有難かった。
賢司は、いつでも覚醒剤を使える部屋、という唯一の、けれどとても大事な事であるくらい、瞳が気付かない筈が、ない。
でももうこの頃には、瞳は賢司が薬をやったやらないで咎める事も、なかったのだけれど。
何も言わなければ、賢司は瞳に隠す必要も、なくなる。
尤も賢司が覚醒剤を使った事を、どんなに瞳に隠そうとしても、ダダ漏れなのだ。
賢司の顔を見れば、瞳には文字通り顔に書いてある様なものに見える。
無論、賢司もそれは承知の上の事。
無理に隠す事もなくなった。
その事自体は、賢司にとっては、気楽になったのだろう。
冗談交じりに、瞳に話せるまでに、なった。
そうして一日目だけは賢司はひとりで覚醒剤を打つようになった。
が、やっぱり瞳にもやりたい、一緒にやりたい欲求は留まる事なく賢司の心を突き動かす。
もちろん瞳も、そんな状態の賢司を見れば、一緒にやりたくなってしまう。
それが、覚醒剤というものの怖さ、なのかも知れない。
瞳の脳裏に焼き付いた、覚醒剤の快感は、多分死ぬまで忘れる事は出来ないのだろう。
それも、瞳の選んだ人生、なのだ。
後戻りの出来ない人生を、賢司と一緒に歩いて行こう、と。
ふたりは夫婦、運命共同体なのだから。
瞳の仕事は、早朝から始まって、大体午前中で終わる。
賢司がこんな状態の時の瞳は、やっぱりそわそわと、落ち着かなくなる。
仕事に穴を開けたくはない、という割とまともな思考回路が、今の瞳には装備されていた。
だから、仕事には行く。
賢司にも、ちゃんとそう言うと、無理強いはしなくなった。
その代り、賢司は瞳が仕事から帰ってくるのを、首をキリンの様に伸ばせるだけ伸ばして待っていてくれる。
瞳が帰って来たら、そこからはもう、止まる事すら忘れたふたりは、覚醒剤の甘い誘惑の虜になる。
賢司が瞳の左内肘の血管を探す。
その、仕草だけでもうフラッシュバック状態だ。
わくわくが止まらない。
チクリ・・・・。
針が刺さるのを、瞳はずっと見ている。
注射器の中に赤黒い血液が入って来たら、賢司はゆっくりと注射器を押してゆく。
次の瞬間、全身の血管に沿って、熱が駆け巡る。
「あ、あつ・・・・」
「熱いか?ちょっと多いぞ」
「え・・・?」
賢司は、何度も注射器を押したり引いたりを繰り返す。
その度に、駆け巡る熱。
心臓は、飛び出しそうな程、早鐘を打つ。
瞳の花弁が熱く、焼け付くような感覚に陥る。
そこまでして、漸く賢司は瞳に刺さった注射器を抜く。
もう、目も開けていられない。
その様子を見た賢司は、素早く自分にも覚醒剤を打ってそして、瞳のわきに横たわる。
「どうだ?目が回るだろ?今のはかなり濃かったからな」
そんな事を打ってから言われても、後の祭り、だろう。
瞳は、自分の量なんて全く知らないのだから。
ただ、効き方が尋常じゃない事くらい、辛うじて解った程度だった。
「乳首、舐めてくれよ」
「あぅ・・・・、う、ん・・・・」
覚醒剤を打つと、賢司は乳首を舐めらせるのが、大好きだ。
物凄く気持ちがいいらしい。
しかも、それは瞳が舐めるのが、これまでの中でダントツなんだそうだ。
・・・・あんまり聞いても、素直に喜べないのは、やはり嫉妬の感情渦巻くせいなのだろうか?
ここから瞳に異変が起こる。
強すぎたのだろう、瞳は夢の中へと堕ちていった・・・・。
自分が誰で、ここは何処なのか、全く分からない。
花が咲いていた。
死んだ筈のねねがいた。
元気な、でも二足で立ち、人間のようだった。
ねねと瞳は、何の疑問も持たずに、そこで一緒に遊び、話していた。
その間、賢司は瞳の身体を玩具の様に弄んでいた。
乳首をぐりぐりと、執拗に責め、クリトリスに何かを挟んだ。
痛みだけは、夢の中の瞳に届いた。
「いた、い・・・・、や、だ・・・・」
「瞳、またそれかよ。そんなに俺とやるのが嫌なのかよ?」
痛い、としか言わなくなった瞳に、賢司は怒りを露わにして言った。
そう賢司が怒っていても、肝心の瞳には、賢司の存在すら解らない所に飛んでしまっていた。
瞳の口から出る言葉は、多分賢司が聞いてても、意味不明に違いない。
賢司も、まだ正気じゃ、ない。
瞳が飛んじゃった事に、気付いてはいなかったのだ。
いや!と言われると逆に責めたくなるのがS性の特徴なのか?
瞳が何を言おうとお構いなしに、責める、責め続ける。
それを瞳は、自分の世界の中でその身に拷問を受けている様に感じていた。
何が何だか解らないまま、花弁に痛みを感じれば、針やらカミソリやらを押し込まれている悪夢に変わる。
乳首を責められれば、ハサミで切り落とされる悪夢を見る。
痛いと言うな!という方が無理というものだった。
こんな風に、強すぎて飛んじゃった状態が、一番怖いのかも知れない。
本人は、自分が誰で、何をやっているのかすらもう、判っていない。
今までがあんまりにも不真面目だったから、余計にそう感じるだけなのかも、知れないけど。
とにかく、瞳にとっては平和な日々が続いていた。
やっぱり、出来る事なら覚醒剤はやらないで暮らしたい。
身体に入っていたら、逃げも隠れも出来ない事実になっちゃうんだし。
いつまた何かの拍子で逮捕されちゃう事だって、あるんだから。
瞳は、例え任意であったにしても、尿検査された時、本当に終わった、と、思っていたからだった。
これで自分も逮捕されてしまうんだ・・・・と考えたら、本当に怖かった。
あの時、どうして瞳の尿から、覚醒剤の反応が出なかったのか?
今考えても、この世の七不思議としか、思えない。
度重なる芸能人の、覚醒剤使用の現実から、男=女の方程式が出来上がりつつあった。
瞳にとって、こんなに迷惑な事は、ない。
賢司=瞳という方程式は、簡単に出来上がるのだから。
・・・・賢司の腰の怪我は、例え強くても、痛み止めの薬を飲んで何とか我慢が出来るのなら、オペはしない方がいいという事になった。
椎間板ヘルニアのオペは、一度しか出来ないのだと主治医に言われたらしい。
それに、時間をかけてだが、ある程度は、はみ出した椎間板も戻るらしい。
つまりは本来すべての動物が持つ、自然治癒力に賭けるわけだ。
まぁ、賢司がオペなんて事になったら、うるさくて仕方ないだろうから瞳は内心ほっとしていた。
災いとは、忘れた頃にやってくるものなのだろうか?
賢司が立て続けに怪我をしてから、何か月か過ぎた春の頃。
いつもご飯を食べたらすぐに寝てしまう賢司が、まだ自分の部屋で起きていた。
普段閉めないドアを閉めて、明らかに様子が怪しかった。
瞳は、うすうす、という半端なものじゃなくて、より確信的に気付いていたのだが、仕事がある。
明日のシフトは早朝6時出勤だった。
賢司と目を合わせないようにしながら、自分の部屋に行き、慌てて睡眠薬を飲み、そのまま逃げるように寝た。
新居に引っ越してからは、賢司と瞳は、それぞれ個室を持った。
その理由が、お互いのいびきが煩くて眠れないから、というのは賢司の表向きの理由に他ならなかった。
瞳も、自由にしていられる私室が持てるのは、有難かった。
賢司は、いつでも覚醒剤を使える部屋、という唯一の、けれどとても大事な事であるくらい、瞳が気付かない筈が、ない。
でももうこの頃には、瞳は賢司が薬をやったやらないで咎める事も、なかったのだけれど。
何も言わなければ、賢司は瞳に隠す必要も、なくなる。
尤も賢司が覚醒剤を使った事を、どんなに瞳に隠そうとしても、ダダ漏れなのだ。
賢司の顔を見れば、瞳には文字通り顔に書いてある様なものに見える。
無論、賢司もそれは承知の上の事。
無理に隠す事もなくなった。
その事自体は、賢司にとっては、気楽になったのだろう。
冗談交じりに、瞳に話せるまでに、なった。
そうして一日目だけは賢司はひとりで覚醒剤を打つようになった。
が、やっぱり瞳にもやりたい、一緒にやりたい欲求は留まる事なく賢司の心を突き動かす。
もちろん瞳も、そんな状態の賢司を見れば、一緒にやりたくなってしまう。
それが、覚醒剤というものの怖さ、なのかも知れない。
瞳の脳裏に焼き付いた、覚醒剤の快感は、多分死ぬまで忘れる事は出来ないのだろう。
それも、瞳の選んだ人生、なのだ。
後戻りの出来ない人生を、賢司と一緒に歩いて行こう、と。
ふたりは夫婦、運命共同体なのだから。
瞳の仕事は、早朝から始まって、大体午前中で終わる。
賢司がこんな状態の時の瞳は、やっぱりそわそわと、落ち着かなくなる。
仕事に穴を開けたくはない、という割とまともな思考回路が、今の瞳には装備されていた。
だから、仕事には行く。
賢司にも、ちゃんとそう言うと、無理強いはしなくなった。
その代り、賢司は瞳が仕事から帰ってくるのを、首をキリンの様に伸ばせるだけ伸ばして待っていてくれる。
瞳が帰って来たら、そこからはもう、止まる事すら忘れたふたりは、覚醒剤の甘い誘惑の虜になる。
賢司が瞳の左内肘の血管を探す。
その、仕草だけでもうフラッシュバック状態だ。
わくわくが止まらない。
チクリ・・・・。
針が刺さるのを、瞳はずっと見ている。
注射器の中に赤黒い血液が入って来たら、賢司はゆっくりと注射器を押してゆく。
次の瞬間、全身の血管に沿って、熱が駆け巡る。
「あ、あつ・・・・」
「熱いか?ちょっと多いぞ」
「え・・・?」
賢司は、何度も注射器を押したり引いたりを繰り返す。
その度に、駆け巡る熱。
心臓は、飛び出しそうな程、早鐘を打つ。
瞳の花弁が熱く、焼け付くような感覚に陥る。
そこまでして、漸く賢司は瞳に刺さった注射器を抜く。
もう、目も開けていられない。
その様子を見た賢司は、素早く自分にも覚醒剤を打ってそして、瞳のわきに横たわる。
「どうだ?目が回るだろ?今のはかなり濃かったからな」
そんな事を打ってから言われても、後の祭り、だろう。
瞳は、自分の量なんて全く知らないのだから。
ただ、効き方が尋常じゃない事くらい、辛うじて解った程度だった。
「乳首、舐めてくれよ」
「あぅ・・・・、う、ん・・・・」
覚醒剤を打つと、賢司は乳首を舐めらせるのが、大好きだ。
物凄く気持ちがいいらしい。
しかも、それは瞳が舐めるのが、これまでの中でダントツなんだそうだ。
・・・・あんまり聞いても、素直に喜べないのは、やはり嫉妬の感情渦巻くせいなのだろうか?
ここから瞳に異変が起こる。
強すぎたのだろう、瞳は夢の中へと堕ちていった・・・・。
自分が誰で、ここは何処なのか、全く分からない。
花が咲いていた。
死んだ筈のねねがいた。
元気な、でも二足で立ち、人間のようだった。
ねねと瞳は、何の疑問も持たずに、そこで一緒に遊び、話していた。
その間、賢司は瞳の身体を玩具の様に弄んでいた。
乳首をぐりぐりと、執拗に責め、クリトリスに何かを挟んだ。
痛みだけは、夢の中の瞳に届いた。
「いた、い・・・・、や、だ・・・・」
「瞳、またそれかよ。そんなに俺とやるのが嫌なのかよ?」
痛い、としか言わなくなった瞳に、賢司は怒りを露わにして言った。
そう賢司が怒っていても、肝心の瞳には、賢司の存在すら解らない所に飛んでしまっていた。
瞳の口から出る言葉は、多分賢司が聞いてても、意味不明に違いない。
賢司も、まだ正気じゃ、ない。
瞳が飛んじゃった事に、気付いてはいなかったのだ。
いや!と言われると逆に責めたくなるのがS性の特徴なのか?
瞳が何を言おうとお構いなしに、責める、責め続ける。
それを瞳は、自分の世界の中でその身に拷問を受けている様に感じていた。
何が何だか解らないまま、花弁に痛みを感じれば、針やらカミソリやらを押し込まれている悪夢に変わる。
乳首を責められれば、ハサミで切り落とされる悪夢を見る。
痛いと言うな!という方が無理というものだった。
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