聖女が片っ端から結婚退職するので地味で本オタクの私が聖女に任命されました

厚焼タマゴ

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 わが国は、慢性的な聖女不足に陥っている。

 何をいきなりと思われるかもしれないが、事実なのだからしょうがない。正確に言うと、聖女を希望する淑女は後を絶たないが、皆長続きしないのだ。

 ここで、わが国における聖女の定義と役割について説明しておこうと思う。

 聖女とは、原則十六歳以上の清らかな精神と清らかな肉体を有する女性である。その尊い祈りは人の世と神の世の境界を貫いて聖なる御心と繋がる……要は祈りによって神の世界からエネルギーを引っ張ってくることのできる乙女が聖女だ。

 加護の効果は個々の資質や魂の純度、洗礼を受けた教会などによって左右されるが、詳しい説明をすると書物が何冊あっても足りないため割愛する。

 とにかく、聖女は清く正しく美しい。

 神と人を繋ぐ選ばれし者。率いるは生涯を信仰を捧げた聖騎士達。純白の法衣を身にまとい、たおやかに微笑む姿は神の名代に相応しい。民は熱狂し、貴族や王族すらもが目を奪われる。
 
 つまり。
 この世のあらゆる職種のなかで一番求愛されるのが聖女と言っても過言ではない。

 ここ十年の聖女の三年以内の離職率はまさかの八割。これは過酷で知られる第十四区菫結晶洞窟魔法陣保護任務を超える数値であり、三年以上続けているのはよほど本人が真面目で信心深いか、出逢いに恵まれない辺境の地で役目についているかのどちらかだ。

 恋人ができたので加護が維持できません。危険な仕事はやめろと言われたので。結婚します。一人の女性に戻りたいのです。

 あまりにもそんな申し出が相次ぐものだから国は聖女に最低三年の任期を求めたが、既成事実という名の力技による引退が増えただけだった。ならばと多額の税金を投入して異世界から召喚した二人の聖女は、一年後隣国の皇帝陛下および騎士団長とそれぞれ大恋愛の末に結ばれた。

 まあ、わかる。わかりますとも。

 聖女って響き、素敵ですよね。清らかでひたむきで、殿方ってそういうの好きですよね。だからといって選抜及び育成その他諸々にかけた手間や費用について考えずに求愛してしまうのは、些か分別がないかと思いますが。
 ましてや相手はうら若き乙女。貴族だの王族だのに言い寄られて心が揺らがないわけがないのだから。

 信仰の機関である修道院に所属する女性、いわゆる修道女は基本的に異性との接触を絶っているため、聖女の候補にはならない。そもそも彼女達は神に祈り、尽くすものであって、その力によって荒事を行うわけではない。

 というわけで、国は聖女不足に悩んでいた。役目を投げ出さず、求愛の嵐に晒されようとも恋に落ちず、最低限の信仰心を有している清き女性を求めていた。

 ――だから、本の保管に適しているという理由で最果てじみた土地に建てられた王立図書館にひっそり勤務する、同年代の異性と知り合う機会などなければ興味もなく、結果的に清らかな肉体の持ち主になってしまった私二十四歳なんなら今年で二十五歳のもとに聖女のスカウトがやってきたのである。
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