不自然な世界で不自然な僕

プロローグ

２０５５年に世界は革命的な技術躍進を遂げた。Select genes、通称SGと呼ばれるこの技術を用いることで、人工的に人間を作ることが可能になったのだ。SGは生み出される命の親となる二人の人間からそれぞれの遺伝子を選択し、命をデザインすることができる。つまり、両親のいいとこどりができるようになったのだ。開発当初は本来子供を作ることができなかった層、片方が子供を作ることができない体質の夫婦や、同性婚のカップル等に広まった。しかし、SGが広まるにつれSGで生み出された子供の方が優秀であることが明らかになった。考えてみれば当然である。両親のいいとこどりをしているのだから、両親のどの部分を受け継ぐかわからない従来の生まれ方をした子供よりも優秀なのは当たり前といえるだろう。このことからSGは一般的なカップルにおいても広く普及した。そしてSGが開発されてから２５年後の２０８０年、ついに生まれた赤ん坊の半数以上がSGを用いて生み出された赤ん坊となった。SGを用いて生み出された子供はSelect children、SCと呼ばれ、また従来の方法で母親から生まれてきた子供はNon select children、蔑称でNonと呼ばれるようになった。