ディスる彼氏と褒める彼

竹柏凪紗

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第29話 脱げねぇの?

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「だって…お風呂もまだ入ってない…。嫌…かも。汚いし」

睨まれながら抵抗するにはそれだけ言うのが精一杯。

「もっと怒らせたいの?」

そう迫られたらもう、何も言えなくなった。

ケンカしたいわけでも怒らせたいわけでもない。
だけどいま言われていることって、ちょっと違うんじゃないかと。

それでも
「なに嫌そうな表情してんの?そもそも疑われるような男のニオイをプンプンさせてかえってくる稲穂が悪いだろ」
怪訝な表情を浮かべたまま言われると、そうなのかもしれないと思ってしまう。

誤解させるようなことをしたから怜央は怒っているだけ。
私のことを好きだからヤキモチを妬いてくれた。

間違ってないよね?

だったら、応えなきゃ。
怜央の機嫌を直して信じてもらえるように。

稲穂はゴクリと息を呑み込んでじっと睨んだままの怜央に見られながら上着のボタンに手をかけた。

「そうそう。できるじゃん?」

少しだけ怜央の機嫌が直ったことが嬉しい。
ふと緩んだ口元も褒め言葉も。

こんなときはいつも出会った頃の楽しかったことを思い出してしまう。

「重いだろ?俺が持ってやるって」

なんて、ぜんぜん重くもない買い物袋を率先して持ってくれたこと
「稲穂、可愛い」
やさしく微笑んでいっぱい抱きしめてくれたこと。

思い出しているうちに自分の気持ちを自覚する。
やっぱり怜央のことが好き。

あんなにやさしかった怜央を変えてしまったのは私かもしれない。

いつもそのうち自責の念に駆られて
「続けろよ」
意地悪な言葉にさえも従ってしまう。
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