もう恋なんてしない

第14話 強引に連れて行かれた先

「2人の関係性、白藤拓人が行方不明になったタイミングやシチュエーション、そして事件性を示唆するような直前のメッセージ。これだけ条件が揃うことは珍しいからな」

今月の返済について軽く脅されるとともにそんなことを言ってくる飛鷹。

私、どうしてこんな目に遭っているんだろう…？

泣きそうになる沙那の腕を引っ張り、グングンと歩く飛鷹。
その後ろを相師が続く。

営業企画部の由衣に頼まれて広報部に資料を持って行っただけだよ？
それなのに、いきなり第4倉庫に連れ込まれたかと思ったら50万円と引き換えに協力を求められ、いまは強引にどこかへ連れて行かれそうになっている。

同じ会社の人たちだし、さすがに変なことはされないよね？
そうは思いながらも大きくなっていく不安。

何度も泣きそうになって、大声で周囲の人たちに助けを求めたくなった。
けれどそれはそれで勇気がいる。

気づいたまわりの人たちが助けてくれなかったら？
そう考えると、助けを求めるだけの勇気が出ない。

そのうち恐怖と不安からか意識もぼんやりしはじめたのだけれど。

「着いたぞ」

飛鷹に言われてはっきりとした意識で目の前にある建物を見た沙那は
「…え？」
変な声を出して2人を二度見した。

「…ここって…？」
「警察署だ」

「…えっと…」

「だから言っただろ。合法で簡単なことだと」
「え、で、でも、私、ここで何をすればいいの…？」

到着した場所を見て確かに安堵した。
ここならいつでも助けを求められそうだし、入っていくのだって抵抗もない。

でも、一体こんなところで何をさせるつもりなんだろ？
しかも飛鷹さんや上原さんにはできなくて、私にしかできないことって…。

戸惑っている沙那に
「行くぞ」
声をかけ飛鷹が促した。