もう恋なんてしない

竹柏凪紗

文字の大きさ
16 / 185

第16話 お前がいないと無理

しおりを挟む
「たとえ行方不明者届を出せたとしても、事件性ナシと判断されれば積極的な捜査はしてもらえない。それは白藤拓人をあぶり出したい俺たちにとっては無意味なんだよね」

相師はそう言ってさらに続ける。

「その点、飛鷹も言ってたとおり香村さんはパーフェクトなんだ。まず2人の関係性は恋人になって1年。そして白藤拓人が行方不明になったのはちょうど香村さんと食事の約束をしていたタイミング。直前までメッセージのやり取りもしていた」

確かに。
振り返ってみれば、そのとおり。

「でも、それがどうしてパーフェクト?」

「1年という交際期間は恋人としては十分だし、約束をしていた相手が待ち合わせ場所に現れずそのまま姿を消すなんて事件性アリでしょ。それに、そのやり取りはメッセージに残っている」

そう相師に言われ、
「そうだけど…。たぶん私、最初から拓人に騙されていたんだと思うんです。きのう連絡が取れなくなったあと拓人の家だって聞いていたマンションへ行ってみたら知らない夫婦が出てきてびっくりしたし…」
昨日のことを思い出して凹む沙那。

「…あ、それは警察には言わないほうがいいかもね」
「え?ウソをつくってことですか?」

「聞かれなければこっちから言う必要はないし、ウソをついたことにもならないよ」
「でも、そのあたりは聞くんじゃないか?」

意見する飛鷹に対して
「まぁ、そこは賭けだね。香村さんが50万円のことを考えすぎて刑事さんたちの話を聞き逃してうまく返事できなかったとかいうパターンもあるかもしれないし」
うまく誤魔化すようそれとなく促してくる相師。

やさしく微笑みながら言った相師を軽く睨みながら
「行方不明者届を出すのはお前…あんたがいないと無理なんだから、嫌なら断ったほうがいい」
飛鷹は少し厳しい表情で沙那に言った。

…あれ…?
飛鷹さん…。

もしかして意外と私のことや気持ちもきちんと考えてくれてる…?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国王一家は堅実です

satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。 その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。 国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。 外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。 国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

らっきー♪

市尾彩佳
恋愛
公爵家の下働きをしているアネットと、その公爵の息子であるケヴィン。同じ邸で育ちながら、出会ったのはケヴィン16歳の年。しかもふかふかなベッドの中。 意思の疎通の食い違いから“知り合い”になった二人。互いに結ばれることがないとわかっているからこそ、頑なに距離を保ち続けていたはずが──。「これがわたしの旦那さま」の過去編です。本編をお読みでなくても大丈夫な書き方を目指しました。「小説家になろう」さんでも公開しています。

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

エリザは恋について考えていた

通木遼平
恋愛
 「シューディルくんのこと好きじゃないなら、彼に付きまとうのはやめてほしいの」――名前も知らない可愛らしい女子生徒にそう告げられ、エリザは困惑した。シューディルはエリザの幼馴染で、そういう意味ではちゃんと彼のことが好きだ。しかしそうではないと言われてしまう。目の前の可愛らしい人が先日シューディルに告白したのは知っていたが、その「好き」の違いは何なのだろう? エリザはずっと考えていた。 ※他のサイトにも掲載しています

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

処理中です...