もう恋なんてしない

第24話 ラブラブだね

業務時間が終わって由衣と一瞬だけ目が合って仲直りできるチャンスだと思ったのに
「じゃあね、沙那。また明日」
すぐに目を逸らされてそのまま冷たい声で挨拶されただけ。

「やっぱり何かあった？」

心配そうに声をかけてきた同僚たちには
「なにもないってばぁ」
いつもと変わらない態度で接している。

胸のあたりが苦しくてしんどい。

由衣、こんなの嫌だよ…。
どうしたら話をしてくれる？
話すことさえできれば誤解だってきちんと伝えられるのに。

そりゃあ…由衣の気持ちが恋愛とかそういう気持ちなら、私は応えることはできないけど…。
せめて飛鷹さんとの誤解だけは解いておきたい。

そんなことを考えているうちに由衣も同僚たちもいなくなっていた。

バイバイって言われた気はする。
反射的にバイバイって言った気もするけど、覚えていない。

すごく変な感じ。

誰もいなくなった静かなオフィスは自分の溜め息さえもうるさく感じてしまうほど。
沙那はモヤモヤした暗い気持ちのまま飛鷹からもらった名刺を片手にスマホでメッセージを送った。

そのとき、バシンッ…と激しくデスクを叩く手が見えるとともに
「ふぅん。言い訳したそうな表情してたから同僚たちを撒いてわざわざ戻ってきてあげたのにラブラブだね。ふざけてんの？」
怒りを抑えきれないという由衣の声が聞こえてハッと顔を上げる。

「沙那のこと、あんな能面の不愛想野郎に盗られたくない！」

唇を噛んだ由衣はそのまま沙那をじっと見つめた。