もう恋なんてしない

第37話 いなくなった彼女

「あわわわわ…。ご、ごめん。あ、謝るとかしたら余計に怪しいよな。悪い、飛鷹！」
口を開けば開くほどボロボロになっていく相師。

さらに
「か、香村さんの前でこんな話…！ご、ごめん！えっと…！」
なんだかもう取り返しがつかない感じになっている。

そんな相師に呆れながらも
「そんな気にすることじゃない」
飛鷹がカバーしたのに
「でもでもでも！元カノが行方不明になったトラウマ的ショックで次の恋愛に踏み出せないとか…。あ、あわわわわ！お、俺、また余計なこと！！！」
さらに地雷。

…え？
元カノが行方不明？

それが原因で次の恋愛に踏み出せないって、他人には知られたくない話なんじゃ…。
沙那は気まずい気分で飛鷹のほうを見たけれど。

「ただ単に元カノが突然いなくなった、それだけのこと。別れたいということも会いたくないからしばらくは地元へ帰るということも連絡があったしな。普通にフラれたんだ。それだけ。悪いな、変な話を聞かせてしまって」

逆に謝られてしまって驚く。

飛鷹さん…、気遣いがすごいな。
こんな人が彼氏だったら、なんだか落ち着いた恋愛ができそう…。

…って馬鹿！
付き合ってた彼氏が行方不明になっているときに私ってば、一体なにを考えてるの？！

はぁ…やだやだ。

せっかく飛鷹が話を終わらせようとしていたのに
「でもあんなに飛鷹に執着してた彼女が突然いなくなるとはなぁ…」
なぜか話をぶり返した相師は
「お前なぁ…。しつこい！もう、飲むな！この酔っ払いが」
しっかりと逆鱗に触れていた。

それにしても…。
いきなり付き合っている人がいなくなっちゃうなんて、やっぱりいい気しないよね。

沙那は拓人のことを思い出し、嫌な感覚が広がっていくのを感じた。