もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第42話 彼氏との思い出

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「じゃあ明日、香村さんがホストクラブに潜入してくれるってことで決まりだね」
満面の笑みで相師。

「詳細はまた帰ってから詰めよう」

そう言ってさっさと居酒屋へと入って行ったかと思うと、あっという間に出てきて
「じゃ、俺はオヤジに呼び出し食らってるから行くね。またあとで」
慌ただしく去って行った。

「慌ただしいやつ…」
「ですね」

苦笑いした沙那に
「ホストクラブに潜入調査なんて…、本当によかったのか?」
心配そうに飛鷹が聞きながら
「あんたの家へ荷物を取りに行こうか」
促す。

実は潜入調査を申し出たのは
「なぜか飛鷹さんにホストをやってほしくないと思ったから」
なんて言えるわけない。

しかも、なぜ突然そんなことを思ってしまったのかも謎。

拓人の職業がパティシエを目指すカフェスタッフではなく、ホストだったと知ったときにもこんな感情にはならなかったのにな。

どうしてこんな気持ちになるんだろう。

なんだかドキドキする。
かけてくれる言葉や気遣いがやさしすぎて、もっといっしょにいたいと思ってしまう。

ダメだ。
なにを考えているんだろう?

いくら連絡が取れていないとはいえ、私の彼氏はまだ拓人なのに。

でも私…。拓人といっしょにいてこんな気持ちになったこと、ないな。
最初からそうではなかったはずだけど、拓人が笑ってもらえるようにいつも気を遣っていたように思う。

「…おい、聞いているか?」

飛鷹に顔を覗き込まれ、沙那の心臓は止まりそうになってそのあとバクバクと早くなった。
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