もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第643話 人間はカネになる

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「不動産会社をやっていてこれほどまでに役得だと思ったことはないな」

言いながら新築マンションにある並びの2部屋にカギを差し込みながら言ったのは友己。

「どうせ2部屋つかうなら隣同士のほうがなにかと便利だろう?こっちは高峰さんと萩尾零士くん、こっちは千隼と絢世が使えばいい」

「俺たちは前に使っていた駆け込み部屋で大丈夫だ。ここは新築だろう?」

「まぁな。ただ立地がよくないから珍しい血液型の人たちを保護するシェルター的な施設として土地の所有者に譲ってもらってな。新築したばかりだった。家具つきだぞ」

ドヤ顔をした友己に
「…ほぅ。俺と絢世2人だけのときには思いつかなかったこの場所が高峰さんと零士さんが加わるとふと頭に浮かんだんだな?」
嫌味たっぷりに千隼が聞く。

「いや、ほら、あれは千隼が自ら駆け込み部屋を提案したから」

気まずそうに答えた友己に千隼は
「そうか。俺はてっきり絢世との仲に嫉妬してのことかと思ったんだがな」
さらにそんなことを言う。

もしかして千隼さん、佐原社長が俺にちょっかい出していたことを根に持ったまま…?
佐原社長が好きなのは千隼さんなんだけど。

ふとそんなことを思った絢世に
「絶対に余計なことは言うなよ」
耳打ちした友己の耳を引っ張りながら
「俺の絢世に近づくな」
隠しきれない嫉妬オーラを漂わせながら千隼。

「はいはい。絢世のことになると必死だな」

友己が薄い目をして呆れながら肩を竦めた。

「すみません。俺のためになんかいろいろ。それに高峰さんや零士さんも巻き込んじゃって」

「おいおい絢世さん、忘れたのか?俺はもともと自分の息子、信也の行方を捜していただけ。零士はそんな俺に付き合っていただけだ。そう自分を責めるな」

「…はぁ…」

「いい加減にしろって。俺たちまで暗くなるだろう?それにいまの標的は絢世さんでも、元締めたちの大きな目的は人間自体だからな」

「そういえばさっきも人間のいろいろな部分がぜんぶ金持ちや世界に売られてしまうとか言ってましたね?」

「あぁ。人間はカネになるからなぁ」
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