もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第644話 乗り掛かった舟

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「こんなところで立ち話もなんだ。なかへ入れてもらえるか?」

友己の言葉に
「だったらこっちの部屋を使ってくれ」
玄関ドアを開けて皆を招き入れたのは千隼。

「うわぁ、贅沢なひとり暮らし用の物件って感じですね。しかもヒノキのいい香り」

部屋に入るなり絢世は室内を見渡して嬉しそうな声を上げた。

木目調のフロアにオフホワイトの壁、木製の家具で統一された室内は、あたたかさが感じられるやさしい雰囲気の落ち着いた空間。

「さすがは絢世、よく気づいたな。床も家具も木の製品はすべてヒノキで統一したんだ」
「うわっ。佐原社長が褒めてくるなんて最近なかったから鳥肌」

「酷いなぁ。絢世は俺の担当ホストだし、少し前までは仲良くしてただろう?」
「ですね。あのときは社長、やさしかったですから」

嫌味たっぷりに言ってツンとした絢世もまた可愛いと内心デレデレの千隼は
「とにかく座るか?」
ひとまず皆に声をかけた。

「それにしても大がかりだな。ヒノキは副交感神経に作用するからリラックス効果がある。保護した珍しい血液型の人たちには少しでも安らいでほしいってわけだろう?」

床に触れながら感心したように高峰が聞いた。

「まぁそんなところだ。いつまでも匿うわけにもいかないから処置をしたあとは社会復帰してもらわないといけないし、ここにいる間くらいはリラックスしてもらいたいからな」

言いながら友己もソファへと座り、全員がそれぞれに着席したところで高峰があらためて口を開く。

「さて。今後どうするかだな」

「どうするもなにも蓮のことはどうにかしなきゃだし、浜井美咲も放っておいたらやばいだろう?あいつ多分、本気で絢世を狙いにくるぞ。まぁ元締めからすれば一石二鳥だろうが」

高峰の問いに渋い表情で答えた友己はいちど溜め息をついてから続けた。

「乗り掛かった舟。こうなったらやれるところまでやるしかないわな。…ってことで高峰さん、さっきの話、詳しく聞かせてくれるか?人間のいろいろな部分がぜんぶ金持ちや世界に売られてしまうってやつ」
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