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騎士学校編
63 再びの騎士学校
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目に映った黒く汚れた天井に、一瞬ここがどこだかわからなかった。いや、これは天井ではない。古い二段ベッド――
「あ…」
そうだった…。あの夜会の後、諸々の手続きや処理が済んでから、私たちは騎士学校の寮に帰ってきたのだった。ぼんやりと、アナベル様との会話を脳裏に思い浮かべる。
「ランベール騎士団長?」
「ヴァンサンが学園長になる前、騎士学校…いいえ、騎士団を束ねていた長よ」
アナベル様の説明によると…
騎士学校が創立されたのは、シャルロット魔法学園が創立された時期と同じ。創立者は王妃。しかし、イチから作られた魔法学園と違って、騎士学校は元々王国騎士団の一部だったという。騎士になりたい者は適正試験を受けて、騎士団に入隊する。ある程度訓練を課した後、実戦部隊に加える――そういう組織だったらしい。その組織の長――ランベール騎士団長には、騎士学校創立と共に学園長の肩書きも加わった。
「意欲的な方で、騎士たちの指導にとても熱心だったわ」
学校という場を与えられた事を喜び、それまで新人には戦闘訓練のみだったのを改善し、座学で戦術や数学、語学などの授業を積極的に行い、騎士団の質向上に力を入れていたという。
そんな元学園長は、王妃派でも古参派でもない中立派。それが、数年前に忽然と音信を絶った。それをいいことに、学園長の座――ひいては軍のトップの座にヴァンサンがおさまったのだという。
「え?捜索とかされなかったんですか?」
軍のトップで貴族の当主だよね?さすがに彼の家が、家族とかが黙ってなかったんじゃ…?
「彼は…音信は途絶えてしまったんだけど、表には出てくるのよ。一応」
「……は?」
どういうこと??
「重要な行事には参加しているの。…といっても、幹部たちと立ってるか座ってるかくらいなんだけど。だから、」
「ソレが、『本物』なのか怪しいってわけか」
アナベル様の言葉をクィンシーが繫いだ。
「え…?じゃあ、」
「ランベール騎士団長は、既に亡くなっているかもしれないの。それで…もし、彼の魂がこの世に亡く、遺骸を操られているのなら…」
苦しげな顔でアナベル様が目を伏せる。
「彼を葬ってほしいのです」
新たなミッション:ランベール騎士団長の正体を暴け!
とでも言おうか。
あまり悠長にしていられない。今回のスキャンダルで、公爵家は騎士学校に調査員を派遣したが、いつまでも居座れるわけではないし、あくまでも部外者ということで、書類の精査と聞き取りくらいしかできないという。アナベル様によると、あの夜会の後、王妃派の貴族から軍事機密がどうのとかいろいろ注文というか難癖がついたらしい。さすが王妃派の牙城。そう易々とは崩せない。
「ま、当初の猶予は一週間だったが、喜べ!明日から教官総出で『踊る!Tバック捜査線~更衣室を封鎖せよ☆~』が始まるぞ!」
…首、絞めていいだろうか。なあに?レオ。撃ち落とした方がいいって?
「それはやめろ」
こないだコンマ三秒でギリギリセーフだったんだ!と、何故か股間に手を当て慌てるクィンシー。見ていて不快なポーズだ。
「ふざけてないで。何があるの?」
「だからTバッ…や!わかった!略称で言う!『踊る♡π捜…わかった!言わないから早まるな!正教会の坊さんが来るんだよ!身代わりの女の子を捜しに!」
正教会?身代わりの女の子?私を??
「夜会で、アナベルちゃんが言ったろ?身代わりに事欠いて女の子まで送りこんだって。それに正教会が下世話な横槍入れてきたんだよ。囚われの乙女を救出するんだと。王妃様も破門をちらつかされて、やむなく許可したらしいぜ」
モッテモテだな!と、クィンシーが親指を立てた。ネイサンが渋い顔で、
「笑い事じゃないだろう…。明日、生徒全員の身体検査をするらしい」
「具体的には生徒全員、司祭様の前で順番に全裸に剥くって」
「はいィ?!」
それ…確かに紛れこんでる女子(※私)は一発でわかるだろうけど……ただの恥辱プレイじゃない?囚われの乙女云々というより、ただピンクな画が見たいだけな気がする。
「その司祭様って、守備範囲バリ広の男色家らしい」
ん?そっちなの?
「え…」
一気に顔色が悪くなるクィンシー。初耳だったようだ。
「美形大好物だって」
「うわぁ…」
「おう…」
どっかの美形王子様が大ピンチだね。大捜査線どころじゃなくなって何よりだ。
◆◆◆
「逃げるぞ!」
翌日のまだ日も昇らない早朝、私はクィンシーらに叩き起こされた。寝起きでぼんやりする……あと一時間寝かせ
「昨日の時点でフライングで五人も喰われた!」
「襲われてたまるか!」
「おまえが辱めを受ける=アナベル様が悲しむ。彼女を泣かせないためだ」
「ふえ?」
ロイ、どゆこと??
半分寝ている私を強引に寝台から引っぱり出し、クィンシーたち数人の少年たちは寮を飛び出した。
そして十分後。
私たちは廃校舎を彷徨っていた。使われなくなって久しいのだろう。床は積もった埃で白く、雨漏りがしたのか天井や床板が斑に腐っていた。窓ガラスもすっかり曇ってしまっている。
「何ここ」
「騎士学校の校舎さ。正確には、元騎士団長時代の、な」
クィンシーが言った。迷いなく進んでいるからして、既に何度か忍びこんだのかもしれない。
「なるほど…。この惨状を見ると、確かにランベール騎士団長が存命とは信じられなくもなるな」
と、ネイサン。一緒に来た他の少年たちも、気味悪そうに廃校舎を見回した。ちなみにここにいるメンバーは、私、クィンシー、ネイサンの他に、ロイ(身代わり)、アレックス(本物)、フリッツ(身代わり・本名)、ジーナ(本物・自称心は乙女)の七人。元々十数人いた同室の少年たちは、半分以上――全員身代わり――があの爆発事件を機に騎士学校から消えたのだ。
「ところで、どこへ向かって…」
言いかけて、私は立ち止まった。すぐ前に、教室の扉が倒れて、廊下を塞いでいるのだ。
「やだぁ、もぉ~」
横を歩いていたジーナが嘆息する。ちなみに彼……彼女は、筋骨隆々とした見上げるような長身のナイスマッチョだったりする。そして毎日髪型を変え、メイクも変える、半端な女子など目じゃないくらいの女子力の持ち主だ。
「ヨイショッ…と」
自慢の(?)筋肉で、易々と障害物を取り払ってくれた。
「おー!ジーナちゃん頼りになるぅ!」
「えへ♡」
褒めると、照れなのか頬を染める――ちなみに彼女の本名はジーンというが、本人はジーナと言って譲らない。
…話が逸れた。
「この教室だけ、なんか荒れてるね」
覗き込んでみると、整然と並んだ机や椅子が一部、ひっくり返っている。といっても最近そうなったとかではなく、埃の積もり具合的にずいぶん前からこうなっていたようだが。
「なんかきな臭いな」
そう言って教室に踏みこんだのは、ロイ。続けてアレックスも入る。この二人は身代わりと本物だが、仲がよい。
「乱闘でもあったか?」
その様子をフリッツ――彼は身代わりだが、だいぶ前から身代わりの名前ではなく、本名を名乗っている。元々地方都市で行商をやっていたらしく、王都で商売をやりたいがために身代わりを引き受けた変わり者。私が使い魔持ちだとわかってから、一緒に商売をやらないかとちょくちょく誘ってくる。
「ここで捕まった」
「ああ。一人に対して追っ手は複数と見た」
ロイとアレックスが探偵よろしく、埃にまみれた教室を漁っている。
「おい!血痕だぞ!」
不意にアレックスが声を上げた。
「これは……死んだな」
ロイが埃を取り除けた床を、険しい表情で見下ろしている。クィンシーも興味をひかれたのか、教室に入ってきた。
「騎士学校の敷地にコソ泥…はないな。殺られたのは内部の人間だろう。ここでバラして、で…?引きずった跡があるな。こっちか…」
足で床の埃を拭えば、確かに黒ずんだ汚れが見える。私たちは、その汚れを辿った。
「なあ…気になってたんだけど」
汚れを追って廊下を慎重に進みながら、私はネイサンに話しかけた。
「人望厚い騎士団長…ってことは、団長を慕う部下とかもたくさんいたんだよな?その人たちはどうなったんだよ。騎士団長が消えて、何も言わなかったのか?」
「学園長がヴァンサンに変わる直前、騎士団長指揮の下遠征に行って、その後帰ってきていないな。王妃様は、現地に駐屯させたって言ってるけど」
「遠征までは騎士団長は存命だった?」
「出発式があったからな。出席した父が騎士団長を見てる。その時点で生きていたのは間違いない」
アレックスが言った。ふむ。
「あら?何かしらアレ。綿埃ではなさそうよ」
ジーナが指さした先――廊下の片隅に白っぽい何かが、忘れ去られたように転がっていた。
◆◆◆
王都。ベイリン男爵のタウンハウス。
苛立ちを隠しもせず、アーロンは部下にタウンハウスから引き揚げる支度を急かした。
「まったく…とんだとばっちりだ!」
宮廷魔術師と娘がこれ以上ない方法で断罪された。少なくとも娘はもう、使えない。せっかく魔法の才があったというのに、勿体ないことを…。彼らの訳の分からぬ身勝手で、アーロンまでもが逆臣になるかの瀬戸際だ。王都に留まるのは危険と判断した。領を纏め、地盤を固めておくべきだろう。ああ!港が欲しい!港があれば、外国との繋がりを盾にできるものを!
ああ、あの少年が手に入れば…!
港…ひいてはモルゲンも手にすることができるだろう。
必要な指示を済ませると、アーロンは目立たない格好をして、タウンハウスを出ていった。
実に忌々しい…だが。
逆境を、利用できないわけではない。
「あ…」
そうだった…。あの夜会の後、諸々の手続きや処理が済んでから、私たちは騎士学校の寮に帰ってきたのだった。ぼんやりと、アナベル様との会話を脳裏に思い浮かべる。
「ランベール騎士団長?」
「ヴァンサンが学園長になる前、騎士学校…いいえ、騎士団を束ねていた長よ」
アナベル様の説明によると…
騎士学校が創立されたのは、シャルロット魔法学園が創立された時期と同じ。創立者は王妃。しかし、イチから作られた魔法学園と違って、騎士学校は元々王国騎士団の一部だったという。騎士になりたい者は適正試験を受けて、騎士団に入隊する。ある程度訓練を課した後、実戦部隊に加える――そういう組織だったらしい。その組織の長――ランベール騎士団長には、騎士学校創立と共に学園長の肩書きも加わった。
「意欲的な方で、騎士たちの指導にとても熱心だったわ」
学校という場を与えられた事を喜び、それまで新人には戦闘訓練のみだったのを改善し、座学で戦術や数学、語学などの授業を積極的に行い、騎士団の質向上に力を入れていたという。
そんな元学園長は、王妃派でも古参派でもない中立派。それが、数年前に忽然と音信を絶った。それをいいことに、学園長の座――ひいては軍のトップの座にヴァンサンがおさまったのだという。
「え?捜索とかされなかったんですか?」
軍のトップで貴族の当主だよね?さすがに彼の家が、家族とかが黙ってなかったんじゃ…?
「彼は…音信は途絶えてしまったんだけど、表には出てくるのよ。一応」
「……は?」
どういうこと??
「重要な行事には参加しているの。…といっても、幹部たちと立ってるか座ってるかくらいなんだけど。だから、」
「ソレが、『本物』なのか怪しいってわけか」
アナベル様の言葉をクィンシーが繫いだ。
「え…?じゃあ、」
「ランベール騎士団長は、既に亡くなっているかもしれないの。それで…もし、彼の魂がこの世に亡く、遺骸を操られているのなら…」
苦しげな顔でアナベル様が目を伏せる。
「彼を葬ってほしいのです」
新たなミッション:ランベール騎士団長の正体を暴け!
とでも言おうか。
あまり悠長にしていられない。今回のスキャンダルで、公爵家は騎士学校に調査員を派遣したが、いつまでも居座れるわけではないし、あくまでも部外者ということで、書類の精査と聞き取りくらいしかできないという。アナベル様によると、あの夜会の後、王妃派の貴族から軍事機密がどうのとかいろいろ注文というか難癖がついたらしい。さすが王妃派の牙城。そう易々とは崩せない。
「ま、当初の猶予は一週間だったが、喜べ!明日から教官総出で『踊る!Tバック捜査線~更衣室を封鎖せよ☆~』が始まるぞ!」
…首、絞めていいだろうか。なあに?レオ。撃ち落とした方がいいって?
「それはやめろ」
こないだコンマ三秒でギリギリセーフだったんだ!と、何故か股間に手を当て慌てるクィンシー。見ていて不快なポーズだ。
「ふざけてないで。何があるの?」
「だからTバッ…や!わかった!略称で言う!『踊る♡π捜…わかった!言わないから早まるな!正教会の坊さんが来るんだよ!身代わりの女の子を捜しに!」
正教会?身代わりの女の子?私を??
「夜会で、アナベルちゃんが言ったろ?身代わりに事欠いて女の子まで送りこんだって。それに正教会が下世話な横槍入れてきたんだよ。囚われの乙女を救出するんだと。王妃様も破門をちらつかされて、やむなく許可したらしいぜ」
モッテモテだな!と、クィンシーが親指を立てた。ネイサンが渋い顔で、
「笑い事じゃないだろう…。明日、生徒全員の身体検査をするらしい」
「具体的には生徒全員、司祭様の前で順番に全裸に剥くって」
「はいィ?!」
それ…確かに紛れこんでる女子(※私)は一発でわかるだろうけど……ただの恥辱プレイじゃない?囚われの乙女云々というより、ただピンクな画が見たいだけな気がする。
「その司祭様って、守備範囲バリ広の男色家らしい」
ん?そっちなの?
「え…」
一気に顔色が悪くなるクィンシー。初耳だったようだ。
「美形大好物だって」
「うわぁ…」
「おう…」
どっかの美形王子様が大ピンチだね。大捜査線どころじゃなくなって何よりだ。
◆◆◆
「逃げるぞ!」
翌日のまだ日も昇らない早朝、私はクィンシーらに叩き起こされた。寝起きでぼんやりする……あと一時間寝かせ
「昨日の時点でフライングで五人も喰われた!」
「襲われてたまるか!」
「おまえが辱めを受ける=アナベル様が悲しむ。彼女を泣かせないためだ」
「ふえ?」
ロイ、どゆこと??
半分寝ている私を強引に寝台から引っぱり出し、クィンシーたち数人の少年たちは寮を飛び出した。
そして十分後。
私たちは廃校舎を彷徨っていた。使われなくなって久しいのだろう。床は積もった埃で白く、雨漏りがしたのか天井や床板が斑に腐っていた。窓ガラスもすっかり曇ってしまっている。
「何ここ」
「騎士学校の校舎さ。正確には、元騎士団長時代の、な」
クィンシーが言った。迷いなく進んでいるからして、既に何度か忍びこんだのかもしれない。
「なるほど…。この惨状を見ると、確かにランベール騎士団長が存命とは信じられなくもなるな」
と、ネイサン。一緒に来た他の少年たちも、気味悪そうに廃校舎を見回した。ちなみにここにいるメンバーは、私、クィンシー、ネイサンの他に、ロイ(身代わり)、アレックス(本物)、フリッツ(身代わり・本名)、ジーナ(本物・自称心は乙女)の七人。元々十数人いた同室の少年たちは、半分以上――全員身代わり――があの爆発事件を機に騎士学校から消えたのだ。
「ところで、どこへ向かって…」
言いかけて、私は立ち止まった。すぐ前に、教室の扉が倒れて、廊下を塞いでいるのだ。
「やだぁ、もぉ~」
横を歩いていたジーナが嘆息する。ちなみに彼……彼女は、筋骨隆々とした見上げるような長身のナイスマッチョだったりする。そして毎日髪型を変え、メイクも変える、半端な女子など目じゃないくらいの女子力の持ち主だ。
「ヨイショッ…と」
自慢の(?)筋肉で、易々と障害物を取り払ってくれた。
「おー!ジーナちゃん頼りになるぅ!」
「えへ♡」
褒めると、照れなのか頬を染める――ちなみに彼女の本名はジーンというが、本人はジーナと言って譲らない。
…話が逸れた。
「この教室だけ、なんか荒れてるね」
覗き込んでみると、整然と並んだ机や椅子が一部、ひっくり返っている。といっても最近そうなったとかではなく、埃の積もり具合的にずいぶん前からこうなっていたようだが。
「なんかきな臭いな」
そう言って教室に踏みこんだのは、ロイ。続けてアレックスも入る。この二人は身代わりと本物だが、仲がよい。
「乱闘でもあったか?」
その様子をフリッツ――彼は身代わりだが、だいぶ前から身代わりの名前ではなく、本名を名乗っている。元々地方都市で行商をやっていたらしく、王都で商売をやりたいがために身代わりを引き受けた変わり者。私が使い魔持ちだとわかってから、一緒に商売をやらないかとちょくちょく誘ってくる。
「ここで捕まった」
「ああ。一人に対して追っ手は複数と見た」
ロイとアレックスが探偵よろしく、埃にまみれた教室を漁っている。
「おい!血痕だぞ!」
不意にアレックスが声を上げた。
「これは……死んだな」
ロイが埃を取り除けた床を、険しい表情で見下ろしている。クィンシーも興味をひかれたのか、教室に入ってきた。
「騎士学校の敷地にコソ泥…はないな。殺られたのは内部の人間だろう。ここでバラして、で…?引きずった跡があるな。こっちか…」
足で床の埃を拭えば、確かに黒ずんだ汚れが見える。私たちは、その汚れを辿った。
「なあ…気になってたんだけど」
汚れを追って廊下を慎重に進みながら、私はネイサンに話しかけた。
「人望厚い騎士団長…ってことは、団長を慕う部下とかもたくさんいたんだよな?その人たちはどうなったんだよ。騎士団長が消えて、何も言わなかったのか?」
「学園長がヴァンサンに変わる直前、騎士団長指揮の下遠征に行って、その後帰ってきていないな。王妃様は、現地に駐屯させたって言ってるけど」
「遠征までは騎士団長は存命だった?」
「出発式があったからな。出席した父が騎士団長を見てる。その時点で生きていたのは間違いない」
アレックスが言った。ふむ。
「あら?何かしらアレ。綿埃ではなさそうよ」
ジーナが指さした先――廊下の片隅に白っぽい何かが、忘れ去られたように転がっていた。
◆◆◆
王都。ベイリン男爵のタウンハウス。
苛立ちを隠しもせず、アーロンは部下にタウンハウスから引き揚げる支度を急かした。
「まったく…とんだとばっちりだ!」
宮廷魔術師と娘がこれ以上ない方法で断罪された。少なくとも娘はもう、使えない。せっかく魔法の才があったというのに、勿体ないことを…。彼らの訳の分からぬ身勝手で、アーロンまでもが逆臣になるかの瀬戸際だ。王都に留まるのは危険と判断した。領を纏め、地盤を固めておくべきだろう。ああ!港が欲しい!港があれば、外国との繋がりを盾にできるものを!
ああ、あの少年が手に入れば…!
港…ひいてはモルゲンも手にすることができるだろう。
必要な指示を済ませると、アーロンは目立たない格好をして、タウンハウスを出ていった。
実に忌々しい…だが。
逆境を、利用できないわけではない。
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