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第2章 季節の変わり目は複雑な天気に
第88話 翌朝のねぎらい
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厨房に入った結は最初に違和感を覚えた。
(……静かすぎる)
誰も包丁を持っていない。
鍋も火にかかっていない。
全員が妙にそわそわしている。
「おはようございます……?」
恐る恐る声をかけた瞬間。
「おかえりなさーーーーい!!」
クラッカーが鳴った。
「ちょ、え!?」
「危ない危ない包丁落とすとこだった!!」
結が後ずさると正面に巨大な横断幕。
《祝・二次審査完走!!》
《結&公 お疲れさま会》
「……え!!あっありがとうございます!!」
結の困惑をよそに支配人・木島五郎が満面の笑みで登場した。
「いやぁ~!
結果はまだだけどな!
“戦って帰ってきた”ってだけで祝う価値は十分だろ!」
「支配人……声でかいです……」
京子が即ツッコミ。
「あと、クラッカー厨房で鳴らすのやめてください!
粉が舞う!!」
「細かいことはいいのいいの!」
「細かくない!!」
その隣で、快が淡々と状況を説明する。
「なお、現在の厨房は“仕事をさせない空気”で満たされています」
「そんな空気ある!?」
公は入口で固まっていた。
「……え、俺も対象なんすか!?」
「当たり前でしょ!」
京子が即答する。
「前回二回戦敗退からここまで来たんだから!
それだけで拍手!!」
舞が工具箱を肩にかけたまま、片手で拍手した。
「よくやったじゃん、公。
昨日なんか顔めっちゃ死んでたし」
「それ褒めてないですよね!?」
「最大級の褒め言葉だよ」
静江がいつの間にかテーブルを拭いていた。
「……お二人とも、座ってください」
声が低く、静かで逆らえない。
結と公は並んで椅子に座らされた。
「さて!」
木島が手を叩く。
「本日の朝食は――
“ねぎらい特製定食”だ!!」
「誰が作ったんですか」
結の質問に、全員が一斉に目を逸らした。
いやな予感しかしない。
「……まさか」
奏が厨房の奥から出てきた。
「俺だ」
「えっ」
「ただし……」
続く。
「全員が一品ずつ、勝手に足した」
「やめてください!!」
結の悲鳴は、もう遅かった。
配膳された膳を見て、結と公は沈黙した。
・奏の作った澄んだ味噌汁とご飯
・舞の“気まぐれスパイス煮卵”
・京子の「映え重視」サラダ(謎の食用花付き)
・快の完璧な焼き魚
・木島の「なんとなく良さそう」で足された唐揚げ
・静江の漬物(異様に美味い)
「情報量が多い……」
公が震え声で言う。
「でも……」
結が箸を取る。
まず味噌汁。
「……あ」
いつもの味だ。
いや、少しだけ優しい。
「……美味しい」
それを皮切りに全員が一斉に様子をうかがう。
「どう!?」
「いける!?」
「腹壊さない!?」
「落ち着いてください!」
結が笑って言った。
「ちゃんと美味しいです。
……ちょっとだけ賑やかすぎるけど」
「それが狙いだ!」
木島が胸を張る。
「結果がどうあれ、
帰ってくる場所はここだって分かるだろ?」
その言葉に場が一瞬だけ静まった
公が箸を置き頭を下げた。
「……ありがとうございます」
少し照れくさそうに。
「正直、昨日は自分が情けなくて。
でも、また頑張ろうって思えました」
「真面目!!」
京子が即座に突っ込む。
「もっとこう照れて誤魔化しなさいよ!」
「そういうキャラじゃないんで!」
結はその様子を見て笑った。
そして、静かに言う。
「私も……
結果がどうでも後悔はしてません」
奏が一瞬だけ結を見る。
「……そうか」
それだけで十分だった。
最後に。
ぬくが結と公の足元で丸くなった。
「こいつまで参加してる……」
「名誉マスコットだからな」
木島が得意げに言う。
結はぬくの頭を撫でながら思った。
(……ああ、戻ってきたんだ)
戦って、悩んで、迷って。
それでも帰れる場所。
ねぎらいは
ちょっとうるさくて、
少し過剰で、
でも、間違いなく温かかった。
その朝のソラス・フォレストは、
いつもより少しだけ、騒がしかった。
(……静かすぎる)
誰も包丁を持っていない。
鍋も火にかかっていない。
全員が妙にそわそわしている。
「おはようございます……?」
恐る恐る声をかけた瞬間。
「おかえりなさーーーーい!!」
クラッカーが鳴った。
「ちょ、え!?」
「危ない危ない包丁落とすとこだった!!」
結が後ずさると正面に巨大な横断幕。
《祝・二次審査完走!!》
《結&公 お疲れさま会》
「……え!!あっありがとうございます!!」
結の困惑をよそに支配人・木島五郎が満面の笑みで登場した。
「いやぁ~!
結果はまだだけどな!
“戦って帰ってきた”ってだけで祝う価値は十分だろ!」
「支配人……声でかいです……」
京子が即ツッコミ。
「あと、クラッカー厨房で鳴らすのやめてください!
粉が舞う!!」
「細かいことはいいのいいの!」
「細かくない!!」
その隣で、快が淡々と状況を説明する。
「なお、現在の厨房は“仕事をさせない空気”で満たされています」
「そんな空気ある!?」
公は入口で固まっていた。
「……え、俺も対象なんすか!?」
「当たり前でしょ!」
京子が即答する。
「前回二回戦敗退からここまで来たんだから!
それだけで拍手!!」
舞が工具箱を肩にかけたまま、片手で拍手した。
「よくやったじゃん、公。
昨日なんか顔めっちゃ死んでたし」
「それ褒めてないですよね!?」
「最大級の褒め言葉だよ」
静江がいつの間にかテーブルを拭いていた。
「……お二人とも、座ってください」
声が低く、静かで逆らえない。
結と公は並んで椅子に座らされた。
「さて!」
木島が手を叩く。
「本日の朝食は――
“ねぎらい特製定食”だ!!」
「誰が作ったんですか」
結の質問に、全員が一斉に目を逸らした。
いやな予感しかしない。
「……まさか」
奏が厨房の奥から出てきた。
「俺だ」
「えっ」
「ただし……」
続く。
「全員が一品ずつ、勝手に足した」
「やめてください!!」
結の悲鳴は、もう遅かった。
配膳された膳を見て、結と公は沈黙した。
・奏の作った澄んだ味噌汁とご飯
・舞の“気まぐれスパイス煮卵”
・京子の「映え重視」サラダ(謎の食用花付き)
・快の完璧な焼き魚
・木島の「なんとなく良さそう」で足された唐揚げ
・静江の漬物(異様に美味い)
「情報量が多い……」
公が震え声で言う。
「でも……」
結が箸を取る。
まず味噌汁。
「……あ」
いつもの味だ。
いや、少しだけ優しい。
「……美味しい」
それを皮切りに全員が一斉に様子をうかがう。
「どう!?」
「いける!?」
「腹壊さない!?」
「落ち着いてください!」
結が笑って言った。
「ちゃんと美味しいです。
……ちょっとだけ賑やかすぎるけど」
「それが狙いだ!」
木島が胸を張る。
「結果がどうあれ、
帰ってくる場所はここだって分かるだろ?」
その言葉に場が一瞬だけ静まった
公が箸を置き頭を下げた。
「……ありがとうございます」
少し照れくさそうに。
「正直、昨日は自分が情けなくて。
でも、また頑張ろうって思えました」
「真面目!!」
京子が即座に突っ込む。
「もっとこう照れて誤魔化しなさいよ!」
「そういうキャラじゃないんで!」
結はその様子を見て笑った。
そして、静かに言う。
「私も……
結果がどうでも後悔はしてません」
奏が一瞬だけ結を見る。
「……そうか」
それだけで十分だった。
最後に。
ぬくが結と公の足元で丸くなった。
「こいつまで参加してる……」
「名誉マスコットだからな」
木島が得意げに言う。
結はぬくの頭を撫でながら思った。
(……ああ、戻ってきたんだ)
戦って、悩んで、迷って。
それでも帰れる場所。
ねぎらいは
ちょっとうるさくて、
少し過剰で、
でも、間違いなく温かかった。
その朝のソラス・フォレストは、
いつもより少しだけ、騒がしかった。
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