ホテル「ソラスフォレスト」と季節の人々 ~44歳男性コックと25歳女性コックの不器用関係と不思議なスタッフと~

物書き赤べこ

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第2章 季節の変わり目は複雑な天気に

第118話 真夜中の女子会

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 その夜のソラス・フォレストは、
 驚くほど静かだった。

 満室でもなくトラブルもなく
 奏も早めに厨房を閉めた。

 ――つまり。

「……今日はいけるよね」

 京子が冷蔵庫からワインを取り出しながら言った。

「いけると思う」

 舞が即答する。

「いけます!!」

 結もなぜか敬語で頷いた。

 こうして
 久しぶりの真夜中の女子会が
 開催されることになった。

 場所は夜の厨房。

 誰もいない。
 怒られない。
 最高。

 テーブルの上には、

・赤ワイン
・白ワイン
・日本酒
・奏が残していった賄いの残り
・チーズ
・ナッツ
・謎のポテチ

「統一感ゼロだね」

「女子会なんてそんなもんでしょ」

 京子がグラスを掲げる。

「じゃあ……せ~の」

「「「おつかれさまー!!!」」」

 乾杯。

 この時点ではまだ全員まともだった。

一杯目:仕事の話

「で、どうなのよ」

 京子が結を見る。

「コンクール」

「あー……」

 結はワインを一口飲んでから言った。

「正直、分かんないです」

「出た!!結の“正直”」

 舞が笑う。

「でもさ」

 京子が真面目な顔になる。

「ここまで来て
 やめたいって思ってないでしょ」

 結は少し考えてから首を振った。

「……やめたい
 とは思ってないです」

「でしょ」

「ただ」

 結はグラスを見つめる。

「勝ちたいって言っちゃった自分が
 ちょっと怖いです」

 その瞬間。

「はい、重い話終了ー!」

 舞が強制終了。

「今日は息抜き!真面目禁止!」

「え、今のもダメ?」

「ダメ!」

二杯目:恋バナ

 白ワインに切り替わった頃。

「で」

 舞がニヤニヤしながら結を見る。

「奏さんとはその後どうなのよ」

「……どうって」

「その“どう”が怪しい」

 京子も乗っかる。

「最近さ目が合う回数増えてない?」

「……気のせいです」

「はい嘘」

「嘘だね」

 結、
 赤面。

「いや、別に……」

「キスは?」

「ちょっと待って!
 いきなりそこ行く!?」

「行く」

「行く行く」

 結は観念したようにワインを一気に飲む。

「……あります」

「「うわあああああ!!!」」

 舞と京子、
 同時に絶叫。

「静かに!」

「夜中!」

「いや無理!」

「無理!」

「いつ!?
 どこ!?
 何回!?」

「質問が多い!」

 結、顔を覆う。

「……大人の普通のやつです」

「それが一番妄想膨らむんだけど!?」

「奏さんってキスはどんな感じ!?」

「優しい?」

「下手?」

「上手?」

「ちょっと待って!」

 結、完全にパンク。

三杯目:下ネタ解禁

 なぜか、日本酒が開いた。

「ねえさ」

 京子が完全に出来上がった顔で言う。

「料理人ってさなんか手つきがエロくない?」

「分かる」

 舞、即同意。

「包丁持つ手とか反則」

「ちょっと!」

 結、止めに入るが、

「奏さんとかさー」

「やめて!」

「無駄に手綺麗じゃない?」

「やめてって!」

「爪短くて指長くて
 あんな手で触られたら」

「やーめーてー!」

 結、耳まで真っ赤。

「でもさ」

 舞が真顔になる。

「結、幸せそうだよ」

 一瞬、空気が変わる。

 ――が。

「でもさ!」

 舞、即戻る。

「結って、色気ないよね!」

「は!?あるし!!」

「分かる」

 京子も頷く。

「恋愛初心者感、すごい」

「失礼すぎません!?」

「だってさ」

 舞が笑う。

「誘われるの待ってそう」

 結、言葉に詰まる。

「それは……うるさいです」

「あ、図星だ」

「図星だね」

 結、グラスを掲げる。

「もういいです!
 私飲みますからね!」

深夜:未来の話

 時刻は午前二時。

 床に座り込んだ三人。

「さー」

 京子が天井を見ながら言う。

「この先、
 どうなるんだろうね」

「考えたくない」

 舞が即答。

「でも、考えちゃう」

 結は少しだけ真面目な声で言った。

「料理も恋も」

「重い!」

「重いよ!」

「今日は重い話禁止って言った!」

 結、笑う。

「……でも」

「でも?」

「この時間があればなんとかなる気がします」

 京子と舞
 顔を見合わせる。

「なにそれ、青春?」

「やだ、泣きそう」

「泣くな!」

 三人、ぐちゃぐちゃに笑う。

「ねえ」

 舞がふらふら立ち上がる。

「これ、明日ヤバくない?」

「大丈夫でしょ」

 京子が適当に言う。

「記憶、飛ぶかな?」

「飛ばないよ」

「最悪っぽいね」

 結、ぽつり。

「……全部覚えてますからね」

「うわああああ!!」

「やめて!
 それ一番やばい!」

 三人
 その場に崩れ落ちる。

 翌朝。

 全員、
 等しく地獄を見ることになる。

 ――それを、
 まだ誰も知らない。
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