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第2章 季節の変わり目は複雑な天気に
第147話 千夏の歓迎会
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その夜ソラスフォレストは少しだけ様子が違った。
ロビーの照明は落とされテーブルがいくつも繋げられている。
厨房からは普段よりも賑やかな音が溢れていた。
「千夏ちゃん正式にようこそー!」
京子の乾杯の声が場を一気に温める。
グラスの音。
笑い声。
いつもは客として顔を見せる地元の常連たち。
野菜を卸している農家、魚屋、肉屋――顔なじみの業者たち。
今日は全員“身内”だった。
千夏は会場の端で立ち尽くしていた。
「……すごい」
自分のためにこんなに人が集まるなんて思っていなかった。
舞が肩を叩く。
「気後れしてるの?」
「ちょっとだけ……」
「いいの。今日は“迎えられる側”の日楽しんで!!」
そう言ってグラスを押し付ける。
もちろん中身はノンアルコールだ。
木島が珍しく声を張った。
「えー、改めて」
「高橋千夏」
「若いが根性はある」
「このホテルはそういう人間を歓迎する」
拍手が起きる。
千夏は思わず頭を下げた。
料理は持ち寄りのようで全部ソラスフォレストの味だった。
結が作った前菜。
公が仕上げた温菜。
奏が作ったメイン。
舞のカクテル。
業者が持ち込んだ最高の素材。
“仕事でつながった関係”が、
今夜は“食卓”になっていた。
そして。
誰かが言った。
「そうだ」
「せっかくだからさ」
快だった。
「例の流そうぜ」
「え?」
結が嫌な予感で振り向いた時にはもう遅い。
ロビーのモニターに映し出されたのは――
結のコンクール決勝の録画だった。
「うわああああ!」
「やめて!」
「なんで今流すの!!!!!!!」
結の悲鳴に全員が爆笑する。
「いいじゃん」
千夏は画面から目を離せなかった。
白い照明。
静まり返った会場。
包丁を握る結の横顔。
いつも厨房で見る結とは少し違う。
迷いのない手。
集中した背中。
一人で立っている姿。
「……すごい」
思わず声が漏れた。
横にいた母親がそっと言う。
「憧れる?」
「うん……かっこいい」
千夏は画面を見つめたまま頷いた。
料理が完成し審査員が口に運ぶ。
結の表情は動かない。
結果がどうなるか分からない時間。
それでも、逃げない。
その姿に千夏の胸が熱くなった。
「結さん」
気づくと本人が隣にいた。
「……こんなとこ本当は見せる予定なかったんだけど」
「でも」
千夏ははっきり言った。
「私」
「結さんみたいになりたいです!!」
結は一瞬言葉を失った。
少しして苦笑する。
「ありがとう、でもやめといたほうがいいよ」
「凄く大変だよ」
「それでも!!」
千夏は目を逸らさなかった。
「大変でもいいんです!!決めました!!」
少し離れたところで奏がそのやり取りを見ていた。
そして、ほんの一瞬だけ笑った。
夜は更ける。
笑い声は尽きず
料理はなくなり、
それでも場は終わらなかった。
千夏はその真ん中で思った。
ここには、なりたい背中がある。
それだけで
この場所に来た理由は、
もう十分だった。
ロビーの照明は落とされテーブルがいくつも繋げられている。
厨房からは普段よりも賑やかな音が溢れていた。
「千夏ちゃん正式にようこそー!」
京子の乾杯の声が場を一気に温める。
グラスの音。
笑い声。
いつもは客として顔を見せる地元の常連たち。
野菜を卸している農家、魚屋、肉屋――顔なじみの業者たち。
今日は全員“身内”だった。
千夏は会場の端で立ち尽くしていた。
「……すごい」
自分のためにこんなに人が集まるなんて思っていなかった。
舞が肩を叩く。
「気後れしてるの?」
「ちょっとだけ……」
「いいの。今日は“迎えられる側”の日楽しんで!!」
そう言ってグラスを押し付ける。
もちろん中身はノンアルコールだ。
木島が珍しく声を張った。
「えー、改めて」
「高橋千夏」
「若いが根性はある」
「このホテルはそういう人間を歓迎する」
拍手が起きる。
千夏は思わず頭を下げた。
料理は持ち寄りのようで全部ソラスフォレストの味だった。
結が作った前菜。
公が仕上げた温菜。
奏が作ったメイン。
舞のカクテル。
業者が持ち込んだ最高の素材。
“仕事でつながった関係”が、
今夜は“食卓”になっていた。
そして。
誰かが言った。
「そうだ」
「せっかくだからさ」
快だった。
「例の流そうぜ」
「え?」
結が嫌な予感で振り向いた時にはもう遅い。
ロビーのモニターに映し出されたのは――
結のコンクール決勝の録画だった。
「うわああああ!」
「やめて!」
「なんで今流すの!!!!!!!」
結の悲鳴に全員が爆笑する。
「いいじゃん」
千夏は画面から目を離せなかった。
白い照明。
静まり返った会場。
包丁を握る結の横顔。
いつも厨房で見る結とは少し違う。
迷いのない手。
集中した背中。
一人で立っている姿。
「……すごい」
思わず声が漏れた。
横にいた母親がそっと言う。
「憧れる?」
「うん……かっこいい」
千夏は画面を見つめたまま頷いた。
料理が完成し審査員が口に運ぶ。
結の表情は動かない。
結果がどうなるか分からない時間。
それでも、逃げない。
その姿に千夏の胸が熱くなった。
「結さん」
気づくと本人が隣にいた。
「……こんなとこ本当は見せる予定なかったんだけど」
「でも」
千夏ははっきり言った。
「私」
「結さんみたいになりたいです!!」
結は一瞬言葉を失った。
少しして苦笑する。
「ありがとう、でもやめといたほうがいいよ」
「凄く大変だよ」
「それでも!!」
千夏は目を逸らさなかった。
「大変でもいいんです!!決めました!!」
少し離れたところで奏がそのやり取りを見ていた。
そして、ほんの一瞬だけ笑った。
夜は更ける。
笑い声は尽きず
料理はなくなり、
それでも場は終わらなかった。
千夏はその真ん中で思った。
ここには、なりたい背中がある。
それだけで
この場所に来た理由は、
もう十分だった。
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