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2章 セイクリールの歩き方 編
ハーレムキングは高らかに笑う
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神殿の静かな回廊を抜けて、中庭へと出た。
噴水の水音が、さっきまでの重苦しい空気を洗い流してくれるようだった。
ベンチに腰を下ろすと、サラはようやく息を吐いた。
そして、ぽつりとこぼすように言った。
「……王様、さっきは助けてくれてありがとうございます」
「礼などいらん。ハーレムの庇護下に入ったヒロインを助けるのは王の役目だからな」
「それはちょっと意味わからないんですけど、あの人たちに言われてやっぱり思っちゃいました。私は“器を壊した女”なんだなって」
オレは黙って隣に座る。
「どれだけ頑張っても、どれだけ祈っても、悪霊を払っても……あの器を壊したって記憶だけで、私を判断されるんです。きっとずっと、このままだって」
声は、どこか弱かった。
オレの知るサラは、凜としていて、正義感があって、ちょっとツンツンしてて、ツッコミ力が高い少女だった。
だが今は、そこに簡単には拭えないほど強い悔しさが混ざっていた。
「……だから、せめてもの証明がしたいんです」
サラが顔を上げた。瞳は強く、まっすぐに空を見ていた。
「神託の器が本当に私のせいで壊れたのか、それとも別の原因があったのか。真実を、ちゃんと明らかにしたい。過去に縛られままじゃ、誰も納得なんてできないから……!」
その言葉にオレはふっと笑って立ち上がると、拳を胸に当て目を閉じた。
「よろしい。ならばこのハーレムキング・デイビッドが、その汚名返上の旅に付き合ってやろう!」
「ちょっと待って、それはなんか違——」
「名誉の回復! 疑惑の晴天! そして新たなハーレムの可能性に満ちた旅路だ! 素晴らしい! これはすでに運命だな!」
「途中からただの下心じゃないですかあああああ!!」
いつもの調子が戻ってきた。それでいい。
オレはニッと笑って、空を指差した。
「次に向かうは、“神託の器”が保管されていた地! そして謎に迫る手がかりを探すのだ! サラ、君に向けられた疑惑を晴らすにはこの手で証拠を掴み取るしかない!」
オレは勝ち誇ったように宣言した。
が、次の瞬間、ふと我に返る。
「……ところで、その神託の器って、どこにあるんだ?」
あまりに当然の疑問を口にすると、サラは一瞬呆けた顔をしたあと、ふっとため息をついた。
「……三年前に壊れた器は、今は神殿の地下の保管庫に眠ってます。もう聖具としての役目を終えたものとして、封印扱いですけど……」
そして、ぽつりと続けた。
「本来、あの器に触れられるのは、正式に神の啓示の任を授かった上級神官以上なんです。私は……その手前の中級神官になったばかりでした」
「……つまり、君は本来触れちゃいけない器に、触れるよう命じられた、そういうことか?」
「ええ。あの日、補佐に就けっていう形で、器の祈祷を手伝うよう司祭から指示されたんです。でも……触れた瞬間、砕けてしまって……」
それは明らかにおかしい話だった。
千年も保たれてきたという器が、若い中級神官が少し触れた程度で砕ける?
「嘘偽りなく答えてほしい。本当にわずかに触れただけで器は壊れたのだな?」
「はい……指で触れただけです。手の中ですらありません」
「ふむ、これは、王の鼻がピクリと反応するな。裏があるぞ、間違いなく」
オレがそう呟くと、サラは小さく笑って言った。
「鼻じゃなくて、直感とかにしておけばいいのに……」
「なにはともあれ、都合の悪いことを黙殺するのは、大体の権力者の悪癖だからな!」
「あなたも王様でしょ!」
「オレは“正義の王”だから問題ない!」
「……もう、ツッコむ気力が……」
肩を落としながらも、サラは笑っていた。
そしてそのとき、背後から快活な声が飛んできた。
「——へぇ。あんた、本当にサラのこと気にかけてんのね?」
振り返ると、そこに立っていたのは、一人の少女騎士。
赤みがかった短髪に、金の瞳。銀の甲冑を着こなし、腰には細身の剣。
そして何より、その顔にはサラとどこか似た気配があった。
「アレッタ……!」
サラが小さく呟く。それはもう嬉しそうな声色で。
「久しぶり。元気そうで安心したわ、問題児さん?」
少女騎士、アレッタはにやりと笑った。
噴水の水音が、さっきまでの重苦しい空気を洗い流してくれるようだった。
ベンチに腰を下ろすと、サラはようやく息を吐いた。
そして、ぽつりとこぼすように言った。
「……王様、さっきは助けてくれてありがとうございます」
「礼などいらん。ハーレムの庇護下に入ったヒロインを助けるのは王の役目だからな」
「それはちょっと意味わからないんですけど、あの人たちに言われてやっぱり思っちゃいました。私は“器を壊した女”なんだなって」
オレは黙って隣に座る。
「どれだけ頑張っても、どれだけ祈っても、悪霊を払っても……あの器を壊したって記憶だけで、私を判断されるんです。きっとずっと、このままだって」
声は、どこか弱かった。
オレの知るサラは、凜としていて、正義感があって、ちょっとツンツンしてて、ツッコミ力が高い少女だった。
だが今は、そこに簡単には拭えないほど強い悔しさが混ざっていた。
「……だから、せめてもの証明がしたいんです」
サラが顔を上げた。瞳は強く、まっすぐに空を見ていた。
「神託の器が本当に私のせいで壊れたのか、それとも別の原因があったのか。真実を、ちゃんと明らかにしたい。過去に縛られままじゃ、誰も納得なんてできないから……!」
その言葉にオレはふっと笑って立ち上がると、拳を胸に当て目を閉じた。
「よろしい。ならばこのハーレムキング・デイビッドが、その汚名返上の旅に付き合ってやろう!」
「ちょっと待って、それはなんか違——」
「名誉の回復! 疑惑の晴天! そして新たなハーレムの可能性に満ちた旅路だ! 素晴らしい! これはすでに運命だな!」
「途中からただの下心じゃないですかあああああ!!」
いつもの調子が戻ってきた。それでいい。
オレはニッと笑って、空を指差した。
「次に向かうは、“神託の器”が保管されていた地! そして謎に迫る手がかりを探すのだ! サラ、君に向けられた疑惑を晴らすにはこの手で証拠を掴み取るしかない!」
オレは勝ち誇ったように宣言した。
が、次の瞬間、ふと我に返る。
「……ところで、その神託の器って、どこにあるんだ?」
あまりに当然の疑問を口にすると、サラは一瞬呆けた顔をしたあと、ふっとため息をついた。
「……三年前に壊れた器は、今は神殿の地下の保管庫に眠ってます。もう聖具としての役目を終えたものとして、封印扱いですけど……」
そして、ぽつりと続けた。
「本来、あの器に触れられるのは、正式に神の啓示の任を授かった上級神官以上なんです。私は……その手前の中級神官になったばかりでした」
「……つまり、君は本来触れちゃいけない器に、触れるよう命じられた、そういうことか?」
「ええ。あの日、補佐に就けっていう形で、器の祈祷を手伝うよう司祭から指示されたんです。でも……触れた瞬間、砕けてしまって……」
それは明らかにおかしい話だった。
千年も保たれてきたという器が、若い中級神官が少し触れた程度で砕ける?
「嘘偽りなく答えてほしい。本当にわずかに触れただけで器は壊れたのだな?」
「はい……指で触れただけです。手の中ですらありません」
「ふむ、これは、王の鼻がピクリと反応するな。裏があるぞ、間違いなく」
オレがそう呟くと、サラは小さく笑って言った。
「鼻じゃなくて、直感とかにしておけばいいのに……」
「なにはともあれ、都合の悪いことを黙殺するのは、大体の権力者の悪癖だからな!」
「あなたも王様でしょ!」
「オレは“正義の王”だから問題ない!」
「……もう、ツッコむ気力が……」
肩を落としながらも、サラは笑っていた。
そしてそのとき、背後から快活な声が飛んできた。
「——へぇ。あんた、本当にサラのこと気にかけてんのね?」
振り返ると、そこに立っていたのは、一人の少女騎士。
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そして何より、その顔にはサラとどこか似た気配があった。
「アレッタ……!」
サラが小さく呟く。それはもう嬉しそうな声色で。
「久しぶり。元気そうで安心したわ、問題児さん?」
少女騎士、アレッタはにやりと笑った。
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