ハーレムキング

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3章 公爵令嬢の救い方 編

ハーレムキングはエルネス領の秘密を勘繰る

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 エルネス領の中心、湖畔の小高い丘に建つ白亜の館。
 それがルシアの暮らす、公爵家の屋敷だった。

 夕陽を浴びて淡く輝くその外壁は、まるで絵画のような美しさを放っていた。

「……ふむ、美しい館だな。しかし、空気は少し冷たいな?」

 オレは門の前に降り立つなり、目を細めて言った。

 すると、サラが首を傾げた。

「今日はお日様がぽかぽかして気持ちいいですよ?」

「気温や天候の話ではない」

「え?」

「王はそういった空気感に敏感なのだ」

「……あ……確かに、少し使用人の方々の様子がおかしい気がします。気のせい、じゃないですよね。なんだか、歓迎されてる感じがしません」

 サラは少し考えてからようやく気がついた。

 門を開けた使用人たちは、整った制服に身を包み、完璧な礼をこそ取っていた。
 しかし、その視線に温度はなかった。

 まるで、明らかにこちらを見下している目と態度だ。

「お帰りなさいませ、ルシア様……ご滞在の準備は既に整えてあります」

「ご苦労様。こちらのお二人は、私の“客人”よ。くれぐれも無礼のないように」

 ルシアの言葉に、使用人たちは一応の敬礼をした。

 だが、明らかに形だけのものだった。
 養女とはいえ公爵家の子女に対して取る態度ではない。客人と紹介されたオレとサラに対しても、些か不躾で不愉快な応対だった。

 まあ、いい。王は寛容だ。これくらいで怒ったりはしない!


 それから廊下を歩いて部屋に通され、時間を経て夕食を摂るために食堂へ向かった。
 一連を通して分かったことがある。

 ふむ、これはわかりやすいな。

 オレの王としての第六感が告げていた。

 ——この屋敷で、ルシアは“好かれていない”。

 その事実は、言葉を交わさずとも、視線の端々から伝わってきた。

 たとえば、部屋に案内されたとき、使用人の足取りは妙に早く、こちらを振り返ることもなく、声も抑揚のない「こちらでございます」の一言だけ。
 廊下を歩けば、出会った別の使用人が軽く頭を下げるものの、その目はルシアを通り越して、壁を見ているかのようだった。

 そして、食堂に運ばれた夕食。

 銀の食器に並べられた料理は美しく整っていたが、ルシアの前に置かれた皿には、他と比べて一品だけ、明らかに無い。

 それを見て、オレはためらいもせず、手を上げた。

「おい、使用人よ。こちらに来てくれるか」

「はい? 何か?」

 使用人はなぜ呼ばれたのかまるでわかっていないようだった。見下げた根性だ。

「これはわざとか?」

「……わざと? 何か不手際でもございましたか?」

「惚けるつもりか、まあいい。では、はっきり確認してやろう」

 オレの声は決して大きくない。しかし、場の全員に届くよう、堂々とした口調だった。

「皿が足りないだろう? そちらの令嬢の分だ。オレとサラには配膳されているはずの、この香草ローストだけ彼女には配膳されていない。客人には配膳しているのに、ルシアには配膳しないのか? そういうルールなのか? 見落としたのなら今すぐ持ってきてくれ。もしも見落としではなくわざとなのだしたら……どういう了見だ?」

 その声に、サラが小さく息を呑み、ルシアが一瞬だけ目を見開いた。

 使用人は数秒の沈黙ののち、ぎこちなく頭を下げる。

「……申し訳ありません。すぐに」

 引き下がる使用人の背中には、わずかな苛立ちが滲んでいたが、オレはあえて気づかぬふりをした。

「ふむ。王たる者、食卓の不公平は許さぬ主義だ。誰であろうと、同じ席につく者には等しく食があるべきだろう? そう思わないか?」

 オレはごく自然にそう言い、ルシアを見てニッと笑ってみせた。

「デイビッドさん……」

「なぁに、気に病むことはない。こういうのは言わなければ気づかれないからな。オレが気づいたのは、王の職業病みたいなものだ!」

「職業病、ですか……?」

 ルシアは不思議そうに口元に力を入れた。

 オレは少しだけ声の調子を和らげる。

「……オレは、誰かが当たり前のように、ないままにされるのが好きではない。たとえそれが小さな皿一枚でも、そこに想いが積み重なっていくこともあるからな」

 冗談めかした調子はそのままに、それでも真剣な眼差しでルシアを見る。

「君が笑って食卓を囲めるなら、オレとしても本望だ。王というのはな、誰かの不満や痛みを気づかれないうちに消していくのが仕事なのだ!」

「……ありがとうございます」

 ルシアのその声は小さかったが、仮面ではない“素”の響きを帯びていた。

 ちなみに、食事はめちゃくちゃ美味かった。
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