追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!

文字の大きさ
12 / 91

夜襲

しおりを挟む
 現在の時刻は深夜二時。

 俺はあてがわれた部屋で一人国王が仕掛けてくるのをじっと待っていた。
 
「……きたか」

 その時は突然訪れた。

 部屋の扉が木っ端微塵に破壊され、それと同時に曇りのない窓が全て割られた。
 そこからはイグワイアの紋章が記された鎧を装備した複数人の兵士がゾロゾロと雪崩れ込んでくる。

 もう少し隠密に仕掛けてくるかと思っていたんだがな……。

「——貴様を捕縛しにきた。大人しく捕まってもらおうか。我らがクララ第三王女に取り入ろうとした罪は重いぞ!」

 複数人いる兵士の中でも群を抜いて体が大きい男が言った。
 だが捕まえるにしてはあまりにも物騒な装備だ。
 剣や槍を構え、全身に一切隙のない鎧を見に纏い、ビンビンと殺意を感じる。
 殺しても構わないとでも命令されているのだろう。

「やだね」

 俺は挑発的に断った。
 特に悪いことをしたつもりもないのに、どうしてここまでやられないといけないのか。
 娘を躊躇なく殺そうとする国王を失脚させるとともに、クララ王女が狙われていた原因を暴き、国に最大限の媚を売る気でいたがもういい。
 
 悪人は問答無用で処すことにしよう。

「我らでクララ第三王女をお守りするぞ!」

 俺が断るとわかっていたのか、兵士たちは気合を入れ直すように一斉に武器を構え直して攻撃を始める体勢を整えた。

 そっちがその気なら俺もやってやるよ。
 そもそもクララ王女を守りたい気持ちなら俺だって一緒だしな。

 とりあえず戦うにしても、今は囲まれてるし撹乱させてからだな。

「——ほら!」

 俺はベッドに付けられた真白いシーツを上に放り投げた。
 これでそっちに意識が少しでもいってくれればかなり動きやすいんだが……どうだろうか?

「っ!?」

 よし。俺の思惑通り兵士たちは若干ではあるが驚いているようだ。
 その隙に乗じて俺は重心を低くすることで地面スレスレを這うようにして、広い部屋を右回りに走り出した。
 今の兵士たちの意識はおそらく上のベッドのシーツにいっているので、その落差を利用して視界に入らない下からの攻撃を仕掛ける作戦だ。
 思いつきなので成功するかは不明だが、やってみるに越したことはない。

「なっ……ッ!」

 俺は走りながら兵士一人一人の脇腹を目掛けて、横薙ぎに鞘に収めたままの刀を振るっていき、一人、二人、三人と順調に意識を奪っていく。
 そして兵士たちは的当てのように順番にバタバタと地面に倒れていき、ものの数秒で最後の一人になってしまった。

「軽く気絶するだけだ。安心しろ」

 俺は兵士の男の顎を掠めるように下から上へと拳を振るった。

「ぐっ……っ……クララ……王……女……ご……な……さい」

 先程まで威勢の良かった兵士の男は驚嘆の声を漏らすと膝から崩れ落ちた。
 そして意識を失う間際にクララ王女の名前を呼び何かを呟いた。

「悪いな」

 俺は破壊された扉から廊下へ出て、気配を察知し、明確な敵意を感じる方向へ軽い気持ちで走り出した。

 俺からすれば無知な兵士たちに特に強い恨みはないので、取り敢えず全員をゴタゴタが終わる頃には目が覚めるように軽く気絶させていくことにした。





「——これで最後……っと……ふぅ……」

 俺は生ぬるい剣筋で攻撃してきた兵士の腹を蹴り飛ばし、小さく息を吐いた。
 城の中の敵意のある者を探し回り意識を奪うこと数十分。
 国王とその他数名の知らない気配を除けば、今の兵士で最後だ。

 皆が「クララ第三王女の敵討ち」のようなことを言いながら戦闘に臨んでいた。
 どうやら国王はクララ王女をダシに使って兵士の士気をあげていたらしい。
 それほどクララ王女は兵士にとって信頼に足る人物ということなのだろうか。

「あとは……一、二、三人か……?」

 ついに残された敵意のある気配はおそらく三人だけとなった。

「というか何も知らない人から見たら俺が悪者だよな……」

 今更気がついた。
 順を追って整理していけば俺は人助けをしただけなので悪い点はそんなにないはずだが、この場面とこの行動と攻撃的な態度を見れば明らかな悪は俺の方だ。

「最後くらいはビシッと締めるか」

 うん。そうしよう。
 これから俺は静かに眠るクララ王女を拾ったついでに国王と他二名が待つ城の最上階へと向かう。
 
 そこでは仕方がないので次は道理に沿って行動していこうと思う。

「というか急がないとな」

 俺は廊下へ飛び出してクララ王女が眠る部屋へ走り出した。
 部屋の場所は数時間前にクララ王女から「私の部屋でお茶でもしませんか?」と誘われて部屋にお邪魔していたので覚えている。
 お邪魔したといっても数十分ほどだけだが。
 というのも、クララ王女は俺と一緒にいないほうが都合が良かったからだ。
 万が一俺とクララ王女が一緒にいる時に兵士が奇襲をしかけてきた場合、ますます俺の怪しさに磨きがかかってしまう。
 ましてや、国王から命令されて襲いにくるような従順な連中のことだ。
 純情なクララ王女のことを丸め込んでしまう可能性も考えられる。
 だからこそ俺は単独で迎え撃つことにしたのだ。

 そして俺が今クララ王女を迎えに行っている理由。
 それはこの国の黒さを教えるためだ。
 クララ王女は良くも悪くも純情すぎる。
 馬車が襲われたことに一切の疑問を持たず、国王がつけた護衛の冒険者が易々と殺されたことにすら不思議に思っていない。
 これは余計なお世話かもしれないがクララ王女は国王の元にいると必ず損をするだろう。
 まだ理由ははっきりしないが、俺が助けに入らなければあの時殺されていたし、今後もそういう目に合うことは容易にわかる。

「……ここだな」

 と、そんなことを考えているうちにクララ王女が眠る部屋に到着した。

 数回ほど軽くノックをして気がついた。

「扉が開いている……? まさか!?」

 ノックに手応えがないことで部屋の扉が薄らと開いていることに気がついた。

 俺は急いで部屋の中を確認するが既にクララ王女の姿はなく、そこにあるのは静まり返った寂しげな空間だけだった。

「油断した……。だが、ベッドは少し暖かい」

 俺は明らかに油断していた。
 途中まで大雑把にやりつつも「俺なら上手くいく」と心の中で思ってしまい、クララ王女の気配を探るのを忘れてしまっていた。
 現にクララ王女の気配は城の最上階にあり、俺に敵意のある国王を含めた三人とともにいることが確認できる。

「まさか城の中で仕掛けるとはな」

 俺は国王がクララ王女に対して城の中で何か行動を起こす可能性をあまり考えていなかった。
 何も知らない兵士たちを差し置いて単独行動をすることはあまりにも危険だからだ。

 だがそれはクララ王女を殺そうと企んでいるのがという仮定のもと成り立つ話。

 俺はこれまで得た情報を頭の中で整理していく。

 クララ王女の立場。二人いる姉。国王の態度。兵士の言葉と信頼。そして最後に城の最上階から感じる三つの敵意……これは……。

「ああ……そういうことか」

 ここで全ての謎が解けたのだった。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~

女譜香あいす
ファンタジー
 数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。  聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。  だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。  そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。  これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...