追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!

文字の大きさ
22 / 91

エルフの子供?

しおりを挟む
「……え? もう一回お願いします……」

 レイカさんの幼児退行を見届けた次の日の昼過ぎのこと。
 俺はEランク冒険者として二度目のクエストを受注するためにギルドを訪れていたのだが、そこで受付嬢から耳を疑うような事を言われていた。

「ですから、ゲイルさんは今日からCランク冒険者です」

「……いきなりCランク冒険者……? なんでですか……?」

 普通に考えるとありえないとは思うが、確かにA、Bランククエストを一つずつクリアしたので、上がってもおかしくはない。
 それにしても疑問が残る部分も多いが……。

「はい。実は今朝方にはギルドマスターと【氷雹】のレイカ様からのお達しがありまして、特例中の特例ですが無事にランクが上がることが認められました。おめでとうございます!」

 馴染みのある受付嬢はパチパチと軽く拍手をしながら笑顔を見せたが、当の本人である俺は全くその実感が沸いてこない。

 というか昨日は調査が終わってから真っ直ぐ宿に帰ってしまったので報告を忘れていたが、レイカさんは律儀に早朝からギルドに来ていたみたいだな。

「あぁ……そういうことですか……」

 たった一回だけのクエストでそうそう簡単にランクが上がるわけないか。だって俺がEからDに上がるのに一年はかかったしな。
 二人の権力者からの鶴の一声がそうさせたのだろう。

「はい。それで本日はどうなさいますか?」

「そうだな……」

 最近はレイカさんと戦闘したし、調査も二回したからな。

 今日はリフレッシュがてら自分のために有意義に時間を使うとしよう。

「武器の整備ができる場所を教えてほしいのですが……」

 俺は腰に下げた刀をとんとんと叩きながら聞いた。
 よくよく考えてみれば四年と少しの期間、まったく整備していなかったので、しっかりと見てもらったほうがいいだろう。

「武器の整備ですか……それでしたらここがよろしいかと」

 受付嬢はテーブルの下からアノールドの店名が記された紙と地図を取り出すと、迷うことなくある場所に指を差した。

「『マルジェイラの武器屋』ですか? ここには別の武器屋がありませんでしたか?」

 マルジェイラの武器屋はアノールドの中心部から程近い立地に位置していた。
 待て。確かここには俺が刀を買った武器屋があったはずだ。
 どうして俺の知らない武器屋に変わっているんだ?

「あぁ。確か数年前に店主が生まれ故郷に帰ってしまったんですよね。その入れ替わりとしてマルジェイラの武器屋が店舗を構えたんですよ」

「……そうなんですか。マルジェイラの武器屋に行けばこの刀を見てもらえますかね?」

 俺の刀はその店主のオーダーメイドだ。
 言っちゃあ悪いが、そんじょそこらの武器屋で整備できるとは思えない。そもそも刀は極東の島国で生まれた武器だからな。刀鍛冶の経験がある者にしか整備は難しいだろう。

「うーん……どうですかね。マルジェイラの武器屋は、ここ数年で新しくできたんですけど、主な客層はBランク冒険者以上となっているので、おそらく大丈夫かと……」

 主な客層がBランク冒険者ということは結構な腕前の持ち主かもしれないな。
 興味もあるし、取り敢えず行ってみるしかないか。
 流石にCランク冒険者を門前払いするとは思えないし、ここは考えるより動いたほうが早いな。

「わかりました。ありがとうございます」

「いえいえ。また何かありましたらお気軽にお越しください。では、いってらっしゃいませ」

 俺が背を向けて軽く手を上げると、受付嬢は礼儀正しい言葉遣いで俺を見送ってくれた。
 Eランク冒険者の頃よりも物腰が柔らかくなった気がするし、対応も丁寧になった気がするが……まあいいか。






「——バカヤロォ! 出直してきなッ! Cランク冒険者程度を相手にしてる暇はねぇんだ!」
 
「……優しくノックして丁寧に自己紹介までしたのに軽く門前払いされんのかよ……」

 俺は勢いよく閉められた扉の前で立ち尽くしていた。
 中に一歩入り、Cランク冒険者と名乗った瞬間こうなってしまったので、余程ここの敷居が高いことがわかる。
 敷居が高いにしても客にこんな扱いをしていい理由にはならないがな。

 この後どうしようか。せっかく受付嬢が親切に紹介してくれたのにこんな目にあってしまって申し訳ないな。

「そこに立ってるモジャモジャ頭! とっととどけや! 天下のBランク冒険者ドウグラス様のお通りだ!」

「っと……今度は何だよ……ってか、モジャモジャ頭って俺のことか?」
 
 俺がぼーっと今後の行動について考えていると、背後から如何にも戦士といったような格好の男が横柄な歩き方で現れたので、俺は大人しくサッと静かに横に避けた。
 そして男は通り様に鋭い目つきで俺のことを睨みつけると、慣れた手つきでマルジェイラの武器屋の扉を開けて中に入っていった。

 どうやらこの男は常連客らしいな。

「……なんだったんだ……」

 嵐のような男はBランク冒険者のドウグラスと名乗ってはいたが、俺はこの男を全く知らなかった。
 もしかすると俺がいない四年間で実力をつけた男なのかもしれないな。

「あ、あの! お、お兄さん……!」

「立て続けに何だ……って、誰もいない……?」

 俺は中性的な声が後ろから聞こえてきたので振り返って見たが、そこには誰もいなかった。

 見えるのは視界の遥か下方に映る虫型のモンスターのようにピクピクと動くピンク色の触覚のようなもののみ。

「下ですっ! 下!」

「下……お、おお……わ、悪い。まさか俺が子供に話しかけられるなんて思ってなくて……。で、君は迷子かな? ご両親はどこにいるかわかるかな?」

 ゆっくりと視線を下に向けると、そこには肩口で綺麗に切りそろえられた金髪を持つ、性別不明の可愛らしい子供が立っていた。
 今の俺は自分で言うのもなんだがあまり人相は良くないので、まさか子供に話しかけられる日が来るなんて思いもしなかったな。

「僕は小さいけど子供じゃないです!」

 子供はその小さな体を強調するように堂々と腕を組んだが、どう見ても子供にしか見えない。
 子供によくある「自分は子供じゃない」というアピールだろうな

「……そうだな。君は立派な大人だよ」

 俺は適当に流して頷いておくことにした。

「はい! あ、それより! お兄さんは武器を探しているんですか?」

「まあな。これを研いでくれる人を探していたんだよ」
 
 俺はほんの数センチだけ刀を抜いて、目の前の子供に見せつけた。
 案の定子供の目はキラキラと輝いており、刀への興味が伺える。

「それ! 僕に任せてくれませんか!」

「君に任せる? 君のご両親は刀鍛冶の経験があるのかな?」

 俺は膝を曲げることで途端に真面目な顔つきになる子供と視線を合わせた。
 この子の両親が武器屋なのかもしれないな。ここを断られた以上、ついていってみてもいいかもしれない。

「もう! さっきから何言ってるんですか! 僕はタイニーエルフですから子供じゃありません!」

 子供は肩口まであった明るい金髪をふわりと片手でかきあげた。

 ん? ん? 今なんて言った……?
 それにその尖った耳は……?

「……え? エルフ……? ほんとに?」

 エルフ? それもタイニーエルフ……?
 普通のエルフよりも寿命が長く、体躯が小さいことで有名なあのタイニーエルフなのか?

「はい! 名前はユルメルと言います! ちなみに年齢は五十歳です!」

 五十歳って……俺よりも倍以上年上……。
 俺は開いた口が塞がらなくなっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~

女譜香あいす
ファンタジー
 数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。  聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。  だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。  そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。  これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...