追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!

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新たな旅立ち

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「——ゲイルさん。わたくしがお送りすることができるのは、ここまでとなります」

 アウタートさんが片手を胸に軽く当てながら恭しく頭を下げると、それに続くようにして、率いていた数名の兵士たちも軽く腰を折り曲げた。

「ありがとうございます。それにしても、こんなに騒がしい門出は初めてですよ……」

 俺はこのような仰々しい振る舞いをされたことについての恥ずかしさも多くあったが、それ以上にここに集まった大勢の人々の方に視線が向いてしまう。

 わざわざ人が少なさそうな早朝を出発する時間に選んだというのに、どこで情報を嗅ぎつけたのか、大勢の人々は俺たちをぐるりと囲うように陣取っている。
 
「今朝方に国からの声明をギルドを通して発表したのですが、やはり民衆の勢いを収めることはできませんでした。力が及ばず申し訳ありません」

「いえ、ドウグラスは将来有望なBランク冒険者だったので仕方がありませんよ。それはそうと今更ですが、この件に関して国王様の許可は取ったんですか?」

 アウタートさんがやるせない表情を浮かべていたが、これに関してはどうしようもないことだ。
 
 それに、俺としては名も無き領地と決して少なくない金を貰えただけでも、ありがたいので特に不満はない。

「その辺りの問題はわたくしがなんとかしますので、ご心配なさらず」

 アウタートさんは余裕を含んだ笑みを見せた。

 特に俺が気にすることでもなさそうだな。

「そうですか……で、お前はなんでついてきているんだ?」

 話がひと段落した俺は、視線を左斜め下の方に移した。
 そこには一人のタイニーエルフの姿があった。

「いいじゃん! 僕もアノールドには知り合いなんていないし、来たばっかだし、どうせなら楽しい方についていくって決めたんだ!」

 ユルメルは小さな体をぴょんぴょんと弾ませながら、気持ちを込めて言った。
 背中には体よりも大きなバックパックを背負っているので、本当についてくる気らしい。

「はぁぁ……勝手にしろ……」

 俺は大きくため息をついてから首を縦に振った。
 あまりにもユルメルの本気具合が伝わってきたので、断るに断れなかったからだ。

 それにユルメルは魔法が得意なので、俺が出来ないことも簡単に出来てしまいそうだしな。

「やったぁ! ありがとっ!」

 ユルメルはその返事を聞くと同時に満面の笑みを浮かべて、エルフ特有の長い耳をぴょこぴょこと動かし始めた。
 それが何を意味するのかはわからないが、取り敢えず嬉しい気持ちになっているということは伝わってきた。

「では、アウタートさん。俺たちはもう出発します。色々とお世話になりました」

 俺は一人で門の外へ向かって歩いていくユルメルから視線を外して、目の前で姿勢良く佇むアウタートさんに目をやった。

「ええ。余計な心配だとは思いますが、お気をつけていってらっしゃいませ」

「……」

 俺は無言で首肯してから、ゆっくりと外の世界へと足を踏み出した。

「二度と帰ってくるなァッ!」
「国と癒着しても俺たちは騙せねぇぞ!」
「お前の顔は一生忘れねぇからな!」

 途端に大勢の人々は待ち侘びていたかのように、勘違いも甚だしい怒声を上げ始めたが、俺はそんな声には一切耳を傾けずに歩を進めていく。

 そして俺は先に外で退屈そうに待っていたユルメルの元へ向かった。

「ユルメル……本当に良かったのか?」

 俺は悩ましげな気持ちを胸に秘めながらユルメルに聞いた。
 ユルメルほどの腕があれば、アノールドで顧客を獲得することは容易いはずだ。
 俺なんかについてきて本当に良かったのだろうか。

「うん! 早く行こっ! 僕、まだそこに行ったことないから案内してね?」

「……任せろ!」

 ユルメルの笑顔はそんな俺の不安を最も容易く振り払ったのだった。
 


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