追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

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ユルメルは食いしん坊

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「はぁっ!」

 俺は右足で四足歩行で向かってくるモンスターを首を吹き飛ばしながら、持て余した両手で刀を使い、背後から迫る最後のモンスターを両断した。

「……良いダンジョンを引いたな」

 一層から最奥まで全てを含めたフロアがおおよそ百、ここまで現れたモンスターの強さは最高でB、最低でEまたはそれ以下だろうか。

 俺が思っている以上にここは大規模なダンジョンになっておりモンスターの強さや種類も幅広かったため、初心者から上級者まで多くの冒険者が経験を積めそうだ。

「よっと! おお……やっぱりダンジョンってのは凄いな……」

 俺はダンジョンの壁を軽く斬撃を飛ばすことで破壊した。
 すると、木っ端微塵に砕けた壁は、まるで生きているかのようにゆっくりと静かに再生し始めた。
 これこそがダンジョンにおける最大の特性だ。
 俺たち人間が手を加えなくても、壁や地面は時間を置けば勝手に元に戻るので、難しい管理がいらないのだ。
 さらに、死んだモンスターは新たに生まれた別のモンスターに捕食されるので、処理をする必要もないのだ。

「今日のところは一旦引き上げて、後は上で考えるか」

 俺は刀を鞘に収めて、上へと続く階段へ向かった
 なぜか明るいダンジョンの内部には大小様々なフロアが存在しているので、ただ普通に歩いているだけでも暇潰し程度にはなる。
 が、しかし、今は時間に余裕がないので、俺はフロアごとに別の位置に設けられた階段を全力で登っていく。
 気配を頼りにおおよそのフロア数を把握することができたが、まだまだ下に続いていそうだ。

 それに、上の状況はどうなっているかが気になるな。
 特に問題なく家が完成してくれているとありがたいのだが……。






「——ただいまー……って、ユルメル! 凄いじゃないか……家があるぞ!」

 俺はユルメルを待たせてはいけないと思い、急いで元の場所に戻ると、そこには角を削って丸みを帯びた四角い家が一つ建っていた。
 一人で住むにしては少し小さいくらいだが、かなり満足のいく仕上がりだ。

 どうやら俺の考えは杞憂だったようだな。

「へへへ! あんまり立派なものじゃないけどね!」

 ユルメルは少し疲れた様子で照れ臭そうにしていた。
 もしかすると、結構な魔力を酷使させてしまったのかもしれないな。

「いや、正直驚いた。こんなに早く完成するとは思っていなかったからな」

「頑張ったからねっ! でも、今日はもう休みたいかな? 少し疲れちゃった」

 ユルメルは大きく深呼吸をして疲れを誤魔化していたが、いつものような笑顔が見られないことから、かなり疲れていることがわかる。

「だな。すぐ飯にしよう。俺が準備するからユルメルは休んでいてくれ」

 俺は来た当初と同じく外に置かれていたバックパックを背負ってから、家の中に入った。

 入ってすぐのところに扉が三つ並んでおり、真ん中が二人の共同スペース、右が俺の部屋、左がユルメルの部屋というように、手書きの看板が扉に貼り付けられていた。

「そうだなぁ……飯は適当で良いか」

 共同スペースに入った俺は、バックパックから硬いパンと干し肉を適量取り出して、それを軽く火の初球魔法で熱に通してから皿に盛りつけた。

 正直、二人だけだとただの小旅行みたいな感じになっているので、明日は住民を勧誘したいものだな。
 そうしないと、いつまで経っても発展しないしな。

「ほい。お待たせ」

「ありがとっ!」

 俺が小さなテーブルの上に皿を置くと、ユルメルは「待ってました!」と言わんばかりにパンと干し肉に齧り付いた。

「……ああ。食べながらで良いんだが話を聞いてほしい。俺は明日、国の住民となる人を適当に勧誘する予定だ」

「……ぅ……うん……っ!」

 ユルメルは口をパンパンに膨らませながら、首を縦にブンブンと振った。

「ユルメルには家を作れるのなら少しでも多く作ってほしいんだが……どうだ?」

 俺はこれから来る予定の住民のために、ユルメルには家を作ってほしかった。

「……んぐんぐ……ぷはっ! いいよ! この辺りはモンスターも現れないしね! でも、水と食料を何とかしないと危ないかな? ここは他のところよりも日差しが強いから、ずぅーっと働くのは中々厳しいんだよね」

 ユルメルはコップに注がれた水で口の中の咀嚼物を全て流し込むと、小さな窓から外を見ながら言った。

「わかった。水と食料、住民の問題は俺が明日中に何とかしよう

 俺は何の確証もなかったが、水と食料、住民の問題、その全てを引き受けた。
 自分を追い込め追い込むほど”やれる”気がしているからこその判断だが、失敗した時のツケが大きいので、何としてでも成功しなければならない。
 まあ、その分やる気がでるのだが。

「お願いするね! 僕も頑張るからさ!」

「ああ、頼んだぞ……。それより、もう少しゆっくり食べてくれ。見てて心配になる」

 俺はまたもやパンと干し肉を同時に口に放り込もうとしていたユルメルに軽い注意を促した。
 美味しそうに食べるのは一向に構わないのだが、その小さな体であんな大胆な食べ方をされては、どうしても心配の念がまさってしまう。

「え? こんなの普通だよ? なんならもっと早く食べることもできるし……」

「いやいい。頼むから普通に食べてくれ。俺の分もあげるから……な?」

 俺はまだ手をつけていないパンと干し肉が盛りつけられた皿を、向かいに座るユルメルの方に滑らせた。

「いいの? ほんとに?」

 途端にユルメルはパァっと満面の笑みを浮かべていたが、すぐに俺の顔色を伺い始めた。
 変なところで気を遣っているらしいが、それならなんでもない男女が同じ建物に住んでいること自体に疑問を持ってほしいな。

「ああ。俺は明日に備えて寝るから、ユルメルも早く寝るんだぞ?」

 俺はバックパックを持って、共同スペースから自分の部屋に向かった。
 
「流石にベッドも布団もないよな……」

 俺はほんの少しだけ反発性のある床に寝転がって目を閉じた。
 建物の手触りや見た目の感じが名も無き領地の地面にかなり酷似していることから、それを原材料として家を建てたのだろう。
 かなりの魔力を込めることで人が住めるようにしてあり、雨風を凌ぐには十分すぎると言える。

「……」

 明日はやることが盛り沢山なので、早朝に出発するとしよう。
 
 俺はそっと目を閉じて、深い眠りに落ちていった。
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