追放されてから数年間ダンジョンに篭り続けた結果、俺は死んだことになっていたので、あいつを後悔させてやることにした

チドリ正明@不労所得発売中!!

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再会!

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 走り始めて三十分は経っただろうか。

 野を越え、山を越え、谷を越え、通常の整地されたルートを通らずに、道なき道を掻い潜るようにして突っ走っていく。
 だが、その間も決して無心にはならずにモンスターと人間の気配を探り、適切なルートを時と場合に応じて使い分けていく。

「……お?」

 こまめに視線を動かしていると、見覚えのある草原に辿り着き、これまた見覚えのある馬車と複数の人間の姿が視界に入ってきた。

「ここは……あぁ、そういうことか」

 俺は目を凝らして現場を見る前に、すぐに状況を理解した。
 徐々にスピードを落としていき、数百メートル離れているその場へ向かうために瞬時に方向転換をし、またスピードを上げていく。
 先ほどのような少し手を抜いたようなスピードではなく、今回は最初から本気で向かう。

「……やっぱりか」

 俺は残り数十メートルというところで急停止し、バレないように馬車の裏に身を潜め、軽く顔を出して現場を覗き込んだ。
 そこには不潔な三人組のチンピラ、そして、それと対峙する武装した性別不明の三人組。全員が黒い仮面と真っ赤なマントを装備しており、見るからに怪しい雰囲気があるが、おそらく護衛だろう。
 そして、その背後で心配そうにピリついた現場を見つめる金髪の少女が一人。
 目の前の光景は埃を被ったはずの古い記憶の底からすぐに引っ張り出された。

「早くその嬢ちゃんを渡しな!」

「その願いは聞けないゼ? どうしてお前たちは我々がこのルートを使用することがわかっタ? それに、どうして我々の馬車を的確に襲うことができタ?」

 中央で斧を構えるリーダー格のチンピラが威勢の良い声を上げると、それに対して、性別不明の護衛の三人うちの一人は、特徴的な口調で言い返した。

「はっ! 簡単さ! 少し前のことだ。あの日、俺たちは大金を積まれてとある馬車への襲撃を決行したんだ! 通常では認知できるはずのないイグワイアの馬車をな! どうやら今回も馬車にはその訳のわからんねぇ魔道具を搭載しているらしいが、残念だったな。一度その魔道具の構造を理解した人間やモンスターには関係ないみたいだぜ? なあ、お嬢ちゃん?」

 何の話をしているのかを詳しくは分からないが、あの日がいつなのかは理解できた。
 俺も深く関わり、大きく今後を左右されたあの日だ。

「そうかい。なら、殺すまでだ。変な男に邪魔をされ、雇い主から金を貰えず、さらには冒険者としての権利を剥奪され、今じゃぁこうして盗賊にまで成り下がった俺たちに”躊躇”なんてものはねぇからな! やっちまえ! てめぇら!」

「「おう!」」

 リーダー格の男の掛け声とともに、戦闘の開始を告げる火蓋が切って落とされた。
 手下のチンピラ二人が剣を抜き、殺意を孕んだ目で腰を低くした。
 これは血を見ることになりそうだな。申し訳ないが割り込ませてもらおう。
 まだ二十にも満たない少女には、かなりショッキングなものになるからな。

「……」

 俺は馬車の後ろで真上に跳躍し、三人組のチンピラを目掛けて空を蹴った。

「て、てめ——ぐっ……」

「……一人目」

 まずは、リーダー格のチンピラの左側にいた手下の男の首元に蹴りを叩き込んだ。
 見えない地点からの攻撃によって、男は意識を刈り取られ、尻を突き上げるような体勢でその場に倒れ伏した。

「お、お前は——」

「——思い出したか?」

 その反対側で一歩も動けずにその光景を眺めていたもう一人の手下の男は、ハッとした表情を浮かべて剣に手をかけたが、その露骨な反応をするのに時間を使っている時点で既に勝負はついていた。

「かはッ! あの……時……ッッ……」

 俺は剣を持つ男の右の手首に裏拳をいれてから、脱力した男の右手を肩で担ぎ、その勢いのままに男の全身を背負い、自分の肩越しに投げた。
 柔らかな草原の上にものすごい勢いで叩きつけられた男は、震えるまなこで俺のことを見てきたが、俺は容赦なく拳を腹に落として、強制的に意識を奪った。

「……よう、久しぶりだな。俺のことは覚えているか?」

 俺は残されたリーダー格のチンピラの目を見て言った。

「っ! 貴様はッ!」

「思い出したか。てっきりお前たちはモンスターにでも喰われたのかと思っていたが、生きていたんだな。前とほとんど同じシチュエーションだったからビックリしたよ」

 あれからどのくらいの期間が経っただろうか。
 あの日、クエストを終えたばかり俺は、ある馬車が襲われていた場面に偶然出くわし、そこで一人の少女を助けたのだ。
 俺にとっては運のいい出来事だったが、チンピラからすれば不幸中の不幸だろうな。

「やっぱりてめぇかぁぁぁぁッッ!!」

「逃げてください! 旅のお方! 彼らは私たちが対処しますから、ご無理をなさらずに!」

 リーダー格のチンピラが巨大な斧を力任せに振り回したのを見て、背後にいる少女は悲鳴混じりの叫びを上げた。
 同時に護衛の三人組が武器を構える音が聞こえた。

 どうやらまだ気が付いていないらしい。
 俺の顔をまだ正面から見せていないからかもしれないが、忘れられていたら少し悲しいな……。

「大丈夫ですよ。ほら」

 俺はリーダー格のチンピラが放った大振りな攻撃を躱し、例の如く刀の柄の部分で腹を打った。

「……」

 すると、リーダー格のチンピラは声を上げることすら叶わずに、うつ伏せで倒れた。

「よし……って、おい。待て待て。俺のことを囲んでどういうつもりだ? 怪しいのはわかるが、武器をおろしてくれないか?」

 その光景を見届けてから僅か一秒後に、俺は護衛の三人組から武器を突きつけられた。
 手を上げて無抵抗だと示すが、全く聞く耳を持っておらず、目だけに穴の開けられた黒い仮面で俺のことをジッと睨みつけている。

「やめなさい。彼は私たちのことを想って行動してくれたのですよ」

「ですが、女王様。彼が我々に助太刀をする理由が見当たりませン。貴方様のお知り合いであれば別ですガ、そういうわけでもないのでしょウ?」

 その言葉には他の二人も小さく頷いていることがわかる。

「それでもです。無抵抗な人間への武力行使ほど無駄なものはありません」

 少女が俺の方にゆっくりと接近してくるのがわかったので、俺はここで行動に出ることにした。

「……はぁぁ……」

 俺はため息をつきながらも体の向きを反転させる。

「貴様、勝手に動くな」

 もちろん、この行動を見た三人は警戒を強めたが、俺は別にそんなものは気にせず、顔を強張らせている少女へ向かって歩を進める。
 俺は少し俯き気味で歩いているため、まだ気がつく様子はない。

「止まりなさい。あまり勝手な真似をすると……ぇっ……嘘……ゲイル……さん?」

 キッと力強く目を細めた少女だったが、残り一メートルという位置にまで接近した俺の顔を見ると、途端に笑顔と驚きが混ざったような表情になっていた。

「久しぶりですね。クララ王女。元気そうで何よりです」
 
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