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「——えー!! ゲイル、もう出発しちゃうのー!? まだ三、四日しか過ごしてないのに……?」
背後から差し込む陽の光は、ユルメルがバンっとテーブルを叩いて立ち上がることで遮られた。
それによって横に座っているヘレンが、ビクンッと小さく肩を震わせている。
「ああ。宴も終わったし、名も無き領地の問題点もたくさん見つかったからな。近いうちに外に行く予定だ」
昨晩、ドワーフたちが開催してくれた宴が終了したことで、俺はこれから行うことをある程度確定させた。
戻ってきてまだ数日しか経っていないが、ジッとしていられなくなったのだ。
「問題点って?」
「人が少ないことで機能していない。そして俺たちの食糧がない。放っておいたら一ヶ月後には死んでいるかもな」
他にも探せば数多くの問題点があるだろう。
パッと思いつくだけでも、これだけあるので外に行く理由には十分なると言える。
「ふーん。あ! そうだ! これって僕がもらっていいの?」
ユルメルは目を輝かせながら、椅子の下から薄汚いカバンを取り出した。
これは俺がイグワイアから持ち帰った唯一の荷物だ。
中には上質なドラゴンの素材がふんだんに詰め込まれている。
「いいぞ。訳あってそれしか持ち帰れなかったが、中にあるのは中々上質な素材だから好きに使ってくれ」
「やったぁっ! ゲイルの武器も作れるし、防具とか盾もいい……。迷っちゃうねっ」
ユルメルは一人でぶつぶつと呟きながら頭の中で妄想しているようだが、できればそれらの素材は俺の武器を作る以外にはダンジョンの探索に役立ててほしいものだ。
楽しげな様子のユルメルには申し訳ないが、後でニーフェにしれっと伝えておこう。
「それで、話を戻してもいいか? 俺は外に出るにあたって、ヘレンの意見を聞きたい。もしもヘレンが故郷に戻りたいのなら、俺はどうにかして送りとどけるつもりだ。どうだ?」
ユルメルが席を立ってどこかへ走り去っていってしまったが、俺は御構い無しに話を続けた。
当の本人であるヘレンがいれば、話は成立するからだ。
それに俺の隣にはニーフェがいるので、何かあったとしてもうまくまとめてくれるだろう。
「……」
ユルメルがいなくなってしんとしたバベルの最上階のリビングの中、ヘレンは考え込むような表情を浮かべて俯いていた。
悩んでいるのか、それとも嫌な想像をしているのか、その真意は本人にしかわからない。
「あまり深く考えないでいい。俺たちと名も無き領地で過ごすか、故郷に帰ってやり直すか、それだけだ。あまり急かしたくはないんだが、俺もやることがあるのでな。出発までには答えを出してほしい」
「出発は、いつ……?」
ここにきて、ようやくヘレンが口を開いた。首を下に垂らしながら、マットな黒色をした上目遣いで俺に聞いてきた。
あまりにも感情が薄い。ないわけではなく、抑制されているようだ。
「出発は明朝だ。それまでじっくりと考えてくれ」
無理な追求を迫っているようで、どこか居心地が悪くなってしまった俺は、椅子から立ち上がってヘレンにそう伝え、エレベーターへ向かって踵を返した。
「……てっきり故郷に帰りたいって即答すると思ったんだがな」
俺はエレベーターの扉が開かれるのを待ちながら、つい先ほどの問答を考えていた。
ヘレンは人見知りというか、俺にあまり興味がなさそうな様子だったので、故郷に帰りたいという答えが返ってくると踏んでいた。
だからこそ、俺はあえて厳しい言い方で質問を投げかけたのだが、その予想は大きく外れた。
答えたくなさそうというよりは、答えられないとでも言うべきだろうか。どこか違和感を感じる雰囲気だったのだ。
「——ゲイルさん、少しお話があります。お時間をいただいてもよろしいですか?」
「わかった。下界を歩きながらでもいいか?」
考え事をしながらも、ニーフェが静かに廊下を歩く音が聞こえてきていたので、俺は特に表に出すことなく端的に返答した。
確実にヘレンのことだろう。
ニーフェはここ数日で最もヘレンと距離が近い人物と言っていい。おそらく、何か本人の口から聞き出すことができたのだろう。
裏で見せる狂気的でヤンデレな瞳とは打って変わって、今は非常に真剣な顔つきになっていることから、シリアスな話題であることは間違いない。
背後から差し込む陽の光は、ユルメルがバンっとテーブルを叩いて立ち上がることで遮られた。
それによって横に座っているヘレンが、ビクンッと小さく肩を震わせている。
「ああ。宴も終わったし、名も無き領地の問題点もたくさん見つかったからな。近いうちに外に行く予定だ」
昨晩、ドワーフたちが開催してくれた宴が終了したことで、俺はこれから行うことをある程度確定させた。
戻ってきてまだ数日しか経っていないが、ジッとしていられなくなったのだ。
「問題点って?」
「人が少ないことで機能していない。そして俺たちの食糧がない。放っておいたら一ヶ月後には死んでいるかもな」
他にも探せば数多くの問題点があるだろう。
パッと思いつくだけでも、これだけあるので外に行く理由には十分なると言える。
「ふーん。あ! そうだ! これって僕がもらっていいの?」
ユルメルは目を輝かせながら、椅子の下から薄汚いカバンを取り出した。
これは俺がイグワイアから持ち帰った唯一の荷物だ。
中には上質なドラゴンの素材がふんだんに詰め込まれている。
「いいぞ。訳あってそれしか持ち帰れなかったが、中にあるのは中々上質な素材だから好きに使ってくれ」
「やったぁっ! ゲイルの武器も作れるし、防具とか盾もいい……。迷っちゃうねっ」
ユルメルは一人でぶつぶつと呟きながら頭の中で妄想しているようだが、できればそれらの素材は俺の武器を作る以外にはダンジョンの探索に役立ててほしいものだ。
楽しげな様子のユルメルには申し訳ないが、後でニーフェにしれっと伝えておこう。
「それで、話を戻してもいいか? 俺は外に出るにあたって、ヘレンの意見を聞きたい。もしもヘレンが故郷に戻りたいのなら、俺はどうにかして送りとどけるつもりだ。どうだ?」
ユルメルが席を立ってどこかへ走り去っていってしまったが、俺は御構い無しに話を続けた。
当の本人であるヘレンがいれば、話は成立するからだ。
それに俺の隣にはニーフェがいるので、何かあったとしてもうまくまとめてくれるだろう。
「……」
ユルメルがいなくなってしんとしたバベルの最上階のリビングの中、ヘレンは考え込むような表情を浮かべて俯いていた。
悩んでいるのか、それとも嫌な想像をしているのか、その真意は本人にしかわからない。
「あまり深く考えないでいい。俺たちと名も無き領地で過ごすか、故郷に帰ってやり直すか、それだけだ。あまり急かしたくはないんだが、俺もやることがあるのでな。出発までには答えを出してほしい」
「出発は、いつ……?」
ここにきて、ようやくヘレンが口を開いた。首を下に垂らしながら、マットな黒色をした上目遣いで俺に聞いてきた。
あまりにも感情が薄い。ないわけではなく、抑制されているようだ。
「出発は明朝だ。それまでじっくりと考えてくれ」
無理な追求を迫っているようで、どこか居心地が悪くなってしまった俺は、椅子から立ち上がってヘレンにそう伝え、エレベーターへ向かって踵を返した。
「……てっきり故郷に帰りたいって即答すると思ったんだがな」
俺はエレベーターの扉が開かれるのを待ちながら、つい先ほどの問答を考えていた。
ヘレンは人見知りというか、俺にあまり興味がなさそうな様子だったので、故郷に帰りたいという答えが返ってくると踏んでいた。
だからこそ、俺はあえて厳しい言い方で質問を投げかけたのだが、その予想は大きく外れた。
答えたくなさそうというよりは、答えられないとでも言うべきだろうか。どこか違和感を感じる雰囲気だったのだ。
「——ゲイルさん、少しお話があります。お時間をいただいてもよろしいですか?」
「わかった。下界を歩きながらでもいいか?」
考え事をしながらも、ニーフェが静かに廊下を歩く音が聞こえてきていたので、俺は特に表に出すことなく端的に返答した。
確実にヘレンのことだろう。
ニーフェはここ数日で最もヘレンと距離が近い人物と言っていい。おそらく、何か本人の口から聞き出すことができたのだろう。
裏で見せる狂気的でヤンデレな瞳とは打って変わって、今は非常に真剣な顔つきになっていることから、シリアスな話題であることは間違いない。
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