異世界子育て奮闘記~勇者の父親は何かと大変~

てん

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四日目(2)

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    黄金に輝くカードを見て驚いたのはどうやら俺だけではなく、エインやエリーザ(ロバート)も腰を抜かしていた。
 慌ててライセンスに書き込まれた能力について、みんなで確認したんだけど、まぁおったまげたおったまげた。だって・・・・

名前 前川利菜
レベル1
体力 65000/65000
魔力 58000/58000
魔功 64000
魔防 61000
敏捷 63000
器用 58000
運  80000
スキル「勇者」


 ねっ? この数値を見ればそりゃおったまげるしかないでしょ?というか良く今まで利菜の数々の攻撃を受けながら生きて来られたなって心底思ったよ。

 おったまげたのは俺だけでなくエイン達も同様で、エリーザいわくこんな数値今まで見た事ないとのことだった。
 最高位ランクであるSSランクの能力のラインは平均能力値一万以上もしくは二万越えの能力値が一つ以上あるというものらしい。
 ちなみに他のランクのラインは以下の通りだった。

Sランク…平均五千以上もしくは一万以上が一つ。
Aランク…平均三千以上もしくは五千以上が一つ。
Bランク…平均二千以上もしくは三千以上が二つ。
Cランク…平均千以上もしくは二千以上が二つ。
Dランク…平均五百以上
Eランク…平均三百以上
Fランク…ライセンス取得者
 
 実際にSランク以上の夢見人はそういないらしく、SSランクに関しては現在でも数える人数しかいないとのこと。最強の傭兵と呼ばれるガイルと呼ばれる人でも平均一万五千程度の能力らしい。
    そんな中、レベル一でありながらこれまでのSSランクを遥かに超える能力値を叩きだした利菜は黄金に輝くライセンスを見ながら「ウォ~」と謎の雄叫びを挙げていた。正直叫びたいのはこっちの方だ。

    利菜の能力を見たエリーザ(ロバート)は急に神妙な顔つきになり俺にある忠告をしてくれた。
    まず勇者召喚に関してはマリーノ王国の王族やギルドの一部の幹部しか知らないことで、もし一歳の年端もいかない者が勇者だと他の者達に知られれば、宝玉を探している夢見人や窃盗や誘拐等の犯罪を生業としている闇ギルドと言われる者達が利菜を利用しようとしてくる接触してくる可能性があるとのこと。
    また利菜は現在勇者になったばかりで勇者の力をまだ上手く使いこなせていないらしく、もし力を使いこなせる状態で暴走してしまった場合、国一つなら簡単に滅ぼしてしまう程度の力を本来は持っているらしい。
    つまりこれから俺は利菜の力を上手く隠しながら、利菜が不機嫌になって暴走しないように細心の注意を払って機嫌を取り続ける必要があるということだ。
    機嫌一つで国一つ滅ぼす可能性のある勇者。それってもはや魔王じゃね? なんてことを思ったりもしたが、あえてそっと頭の隅においやった。

    それにしても娘を魔王にしない為とはいえ、娘に接待プレイを強要された父の気持ちは果てしなく悲壮感にあふれるものだったよ。
    もちろん褒めて伸ばすが俺の教育のモットーであるし、利菜が遊びたいと言えば遊んであげるし、お腹が空いたのならご飯やおやつを食べさせる。やることはこれまでとは基本的に変わらない。
    しかし、利菜の天敵であるオムツ交換の度に一国の運命が掛かっていると思うと、胃がキリキリと痛んで仕方ない。これからは胃薬が俺の常備薬になりそうだ。

    そんな俺の様子を見かねたのだろう。エリーザ(ロバート)やエイン達も出来る限り協力はすると言ってくれた。
    しかし会話の節々にエリーザ(ロバート)から熱い眼差しを感じたのは気のせいだろう。いや気のせいであってくれ。俺にそんな趣味は無い。

    その後、夢見人としての活動に慣れるのにひとまずは簡単な採集クエストからやって見てはとエリーザ(ロバート)から提案された為、翌日準備を整えてその採集クエストを受けることで話がまとまったのだが・・・・

    運が5しかない俺がそんな順調に夢見人生活を送れる訳もなく、ここで大きな災厄がマリーノに訪れることになった。

    そう。俺達がここに来る要因になった魔王がマリーノに来たと、焦ったギルド員から報告があったのだ。

    もうちょっとおとなしくしていて下さいよぉ~魔王さん~! 

    報告を聞いた当時の俺の率直は感想である。しかしそんな呑気な事を思っていた俺であったが、ロバー・・・エリーザ(ロバート)とエインの青ざめた顔を見て、そんな事を思っている場合ではないぐらいの危機がマリーノが迫っていることがわかった。

    エインが俺達をすぐさま王城に避難させようと、焦った様子で俺達を連れてギルドから出たが、時既に遅し。
    城下町や城は既に多数魔族によって空中包囲されていた。まだ攻撃はされておらず、あくまで状況を静観しているような様子を見せる魔族達。
    エリーザ(ロバート)もいつの間にか全身を金属の鎧で包み、人が使う物なのか疑ってしまうぐらい大きな大剣を両手に携えていた。
    エインも何とか俺達だけでも守らなければと思ったのだろう。俺達を背後に置く形でレイピアの様な細い剣を構えていた。
    そんな緊迫した状況の中、勇者である利菜は気持ちよさそうに俺の腕の中で寝ていた。利菜はいろんな意味で勇者だと思った。

    その時はどうしていいかわからず、ひたすら利菜を離さないように抱えて、震えていた。
    
    見る限り凄い強そうな奴わんさかいるんだもん。そりゃ娘を守るためなら何でもするつもりだけど、流石にこの状況は詰んだって思ったよね。
    半ば諦めたようにどうにかして利菜だけでも安全な場所に避難させようと色々考えていた時。城下町の入口の方向から大きな漆黒の翼を持ち、紫色の仮面を被った女性の魔族がギルド上空までやってきた。

    その女性の魔族は辺りを見渡した後、目の前の城に向けて響き渡るような声で「我は魔族を統べる魔王だ。勇者と話がしたいと思いここにきた。勇者を出せ」と叫んだ。
    まぁその時あまりの急展開に付いて行けず、半分狂乱していた俺は思った。

    情報規制のセキュリティがばがばですやん! 召喚して早四日でばれてますやんってね。

    勇者召喚について知っていると話す魔族の女性は、得意気に何故勇者召喚について知っていたのかを王城に向けて話した。
    どうやら魔族の中には虫ほどの大きさに姿を変化させることが出来る者がいたらしく、その魔族が王城に侵入して情報を得たらしい。
 
    女性の魔族は懇切丁寧に説明を行った後「手荒な真似はしたくない。早く勇者を出せ」と再度勇者を出すように要求を行う。
 
    けれど俺達を守ろうとしているのか王城からの返答は無く、その対応が気に食わなかったのか魔族の女性はイラついた顔を見せると、真下にいる自分達の元へ降り立ってきた。

    エインとエリーザ(ロバート)が俺と利菜を守るようにその魔族の前に立ち塞がってくれたが、相手は魔王。切りかかるエリンとエリーザ(ロバート)の剣を二人の身体ごと軽くはじき飛ばすと、何故か利菜を抱えている俺の前に来た。

    その時の俺といえばもう思い出すのが恥ずかしいくらい命乞いをしまくったよね。「食べても美味しくない」とか「俺は持病を抱えているから食べたら病気になっちゃいますよ」とか。今考えたら魔族が人間を食べるなんて聞いていわけでもないのに。

    その魔族はそんな俺の命乞いには耳も傾けず、片手を目の前に差し出すと、何故か俺の腕で眠る利菜が空中へと浮かび上がった。
    慌てて利菜を再度腕の中に収めようと頑張ったが、俺は空を飛べるわけでもなく、念動力を使えるわけでもない。そのまま魔族によって空中に浮かび上がった利菜を取られてしまった。

 魔族は利菜を起こさないように慎重に抱え、再び空中へと飛び上がると、王城に向けて「この幼子がどうなってもいいのか!? 我々は勇者と話がしたいだけだ!」と王城に最終通告を行った。

    今思い出すと勇者を出せと言いながら勇者を抱える魔族の姿というのはなかなか面白い光景だなと思えるが、当時の俺はどうにかして利菜を救おうと無い脳みそをフル回転させていた。
    いくら利菜が勇者としてハイスペックだとしても、眠っていて無防備な状態で、Sランクのエリーザ(ロバート)を簡単に倒せる実力を持つ魔族の攻撃を喰らえば、無事では済まないと思った。

 もし利菜が起きてくれれば、この状況も打開出来ていたかもしれないが、勇者である当人は自分に抱かれている時より健やかな顔をして魔族の腕の中で眠っていた。
 我が娘ながらその神経の図太さには感嘆するしかない。
 俺は利菜を守る為、自分の命を捨てるつもりでその魔族に向かって「俺が勇者だ!」と叫んだ。

 だって魔族が抱えているのが正真正銘の勇者なのだから、いくら勇者を出せと言っても勇者が現れるわけもなく、このままでは利菜がどうなるかわからない。その為、嘘をついて勇者のフリをするしかなかったのだ。

    まぁもちろん何の力も無く、簡単に子供を取り上げられた俺が勇者だって言ってもその魔族が信じてくれる訳も無く、むしろその魔族のお怒りを買ってしまったわけで。
    その魔族は再度俺の前に降り立つと「娘を守ろうとするその気概は素晴らしいものだが、こちらも遊びでやっているわけではない。つまらん冗談はやめろ」と怒られてしまった。

    勝手に娘をさらって交渉材料にしている魔族にそんなことを言われた俺も流石にカッチーンってきてしまい「本当に俺が勇者だ! だから利菜を早く解放しろ! てか何で仮面なんか被ってんんだよ! かっこいいとか思っちゃっての? あぁ恥ずかしい!」って怒りに任せて不必要な事まで捲したてるように言ってしまった。

    その不必要な言葉がいけなかったのか。仮面越しにもわかるぐらい魔族が怒ってしまってね。利菜を片手で抱きかかえると残った片手でボディーブローを浴びせられてしまった。

    しかしここで不思議なことが起こった。Sランクの猛者であるエリーザ(ロバート)を一撃で吹き飛ばした魔族の攻撃が全く効かなかったのだ。
    魔族のパンチが腹部を捉えた瞬間、あっ死んだなって思った俺であったが、そのパンチ喰らった俺の身体には虫でも止まったかのような感覚しか残っていなかった。

    魔族もさすがに驚いたようで「まさか本当にお前が勇者なのか?」って俺が勇者だと思い始めたので、ここぞとばかりに勇者宣言をした俺。

その勇者宣言。今では本当に凄い後悔してるよ。だってあの宣言のせいで凡人能力しかない俺がこの世界の勇者をやる羽目になったのだから。

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