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67.反省会 前編
しおりを挟むヒルデトーラが口火を切って始まった出場者インタビューは、出場受付期間である一週間続けられ、撮り次第、順次放送される。
昼休みに撮ったアルフォン剣術道場のガゼルの映像は、その日の夕食時に放送された。
――結果、反響がすごかった。
各寮にある、原理がよくわからない宙に浮いた板に、毎日映し出される「そこではない」映像と音声。
そしてそこには、同じ学院に通う私やレリアレッド、ヒルデトーラがよく出ている。
出演者が身近にいるので馴染みがあるせいか、入学案内でごっちゃごちゃになった映像から始まり、小学部では魔法映像への関心がかなり高い。
貴人の子は元から知っている者も多いが、生徒数的に庶民の子が多いのだ。主にそっちの層から注目を浴びている。
そのおかげで、武闘大会出場を決める子が続出した。
明らかに冷やかし、クラブ無所属、ただ目立ちたいだけ、武術をかじってもいない者も、調子に乗って出場を決めるくらいだ。
とにかく魔法映像に映りたい、という主張を持つ子たちである。
――こういうのを見ると、武闘大会以外でも撮影できる行事やイベントがありそうな気がする。いずれヒルデトーラに相談してみよう。
まあ先のことはさておき。
早朝と昼休みは私とレリアレッドが敷地内を走り回り、点在する各道場を訪ねて回り、出場者インタビューを敢行する。
そして放課後は主にヒルデトーラが担当する。私たちも自領の撮影がなければ、放課後もインタビューだが。
手分けして巡ってみると、武術や剣術、槍術といった戦うための力を学べる道場がかなり多かった。
剣術だけでも三つも道場があるし、天破などの無手が主流となる流派も、もう一つあった。まあ実力は語るまでもないが。
そんなわけでこの一週間は、非常に慌ただしく過ぎていった。
「――反響がすごいの。狙い通り、生徒の親御さんからいくつも問い合わせが来ています」
そして一週間後。
機嫌の良さそうなヒルデトーラが言う通り、魔法映像普及企画としては、すでに成功だ。
出場受付が終了すると、インタビュー期間も終了である。
出場者も大会に向けて調整し、追い込みを掛ける者もいるだろう。私たちが邪魔しては元も子もない。
これで私たちの仕事は一旦終わり。
大会が始まれば、もう私たちにできることはないので、ここまでだ。もちろんまだやることがあるというなら、できる限り協力はするが。
でも、ここが区切りだ。
一足早い内輪の打ち上げとして、私とヒルデトーラは、レリアレッドの寮部屋に集まり、ヒルデトーラが自宅から持ってきたアップルパイを食べながら、ちょっと優雅なティータイムを楽しんでいた。
まあ、集まった名目は反省会だが。
「うちの領でも評判がいいみたいです。少し魔晶板も売れたそうです」
シルヴァー領もか。リストン領でも同じ現象が起こっていると、手紙で知らされた。
つまりは、こういうことだ。
「子供を利用して魔法映像を勧める策は成った、というわけね」
「――ニア。言い方」
「ええ。子が可愛い親ほど、元気な我が子を観るためなら大金だって払うものですよ」
「――ヒルデ様。言い方」
過ごした時間が重なると、レリアレッドもさすがにヒルデトーラに慣れてきている。段々遠慮がなくなってきた。
労をねぎらうでもないが、インタビュー中にあったことを話し合う。
アクシデントや事故、生徒たちによる撮影班の成長や失敗など、話題が尽きることはなかった。
基本的に三人とも個別に動き、方々に散って仕事をしていたので、お互いの仕事っぷりを知らないのだ。
魔法映像に流れる分は全部チェックしていると思うが、編集されている部分は本人や現場にいた者しかわからない。
こちらで撮影した映像は、王都の撮影班に渡ることになる。
そして必要な部分を足したり余計な部分を削ったりして編集し、観やすくして映像に流しているのだ。
――要するに、視聴者には観せない舞台裏の話が色々あると。そういうことだ。
雑談のようにしか見えないだろうが、これもまた、次に繋がる本当の意味での反省会だったりする。
この中では、もっとも魔法映像と関わってきた年月が長いのはヒルデトーラだが、いかんせん全員年端も行かぬ子供である。
人生経験が足りないという意味では、あらゆる対応力だって相応に低い。
特にアクシデントや事故への対処法などは、なんとか身に付けておきたいところだ。――私も前世ありではあるが、記憶がないので然程変わらないし。
「聞くのはこっちのはずなのに、逆に魔法映像のこととか聞かれまくったわ。自分も出る側にいきたいんだけどどうすればいいか、とか」
レリアレッドは、限られた短い時間を、おしゃべりで目立ちたがりの女子生徒によって大きくスケジュールを狂わされたらしい。
これもまたある種の事故である。
こういう話は、映像を観るだけではわからない話題だ。
「それで、レリアはなんと答えたのですか?」
「わからないとしか言いようがありませんでした。で、よくよく考えたら、今のところコネでしか出る人を使ってないんじゃないかと思いまして……」
ああ、なるほど。
リストン領もそんな感じかもな。
魔法映像業界の歴史はまだまだ浅い。まだ確立していない部分も多いのだろう。
リストン領で番組を持っているベンデリオも、ある種のコネ起用だし。
そういう意味では私もレリアレッドも、家族の事業に対するコネクションで番組に出ている。
というかヒルデトーラもそうだろう。
何せ魔法映像発祥は国だから。彼女の一族から始まっているから。
「なるほど、なるほど……ではまた違う形で、生徒から魔法映像に映りたい者を募集するのもありですね」
違う形で。
つまり武闘大会以外で、か。
「賛成よ」
戦うことが得意な者もいれば、算術が得意な者もいる。芸術に高い才能を持つ者もいるはずだ。
実績を積み上げていき、また撮影班が成長していけば、撮影の機会なんてこれからいくらでも作ることができるだろう。
「今回の企画、すでに普及活動としての効果が出ているわ。わずかながら魔晶板も売れたようだし、撮影班も経験を積ませることで技術もフットワークも軽くなる。
規模の大小はあるとは思うけれど、学院内の撮影はちょくちょくやるべきだと思うわ。それこそ子供を利用しての普及活動にも繋がる」
「――だからニア。言い方なんだって」
「そう、ですね……しかし今回は、イベント事だからという体で撮影に踏み込みましたが、何もない時に撮影をするのは、ちょっと難しいかもしれません。
わたくしとしても、我が子を想う親の気持ちは最大限利用してやりたいとは思うのですが……」
「――ヒルデ様。本当に言い方に気を付けて」
「とりあえず、武闘大会が終わってからまた話しましょう。今は目の前のことに集中です」
うむ。了解した。
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