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275.空賊列島潜入作戦 2
しおりを挟む陽の暮れる夕方までさらし者にされた私含む奴隷たちは、最終的な値踏みをされた。
「――……」
荒くれ風の小間使いを侍らせ、身形のいい男……だがまとっている剣呑な雰囲気から堅気じゃない細身の男が、端から一人ずつ奴隷を見ていく。
そして、一人一人「中級」だの「下級」だのと言っては、連れている小間使いが檻に木札を掛けていく。
恐らく奴隷にランクを付けているのだろう。
「……ふうむ……」
細身の男が、私の檻の前にやってきた。
マフィアの幹部って感じだな。
いい歳の取り方をしているようで、渋い中年男性だ。ここで生活してきたと思うと反吐が出るな。
私は座して目を瞑り、その無遠慮な視線を受け続ける。
「目の色を見せなさい」
今はまだ反抗の機ではない――私は言葉に従ってまぶたを開いた。
「黒髪に青の瞳……珍しい組み合わせですね。東と西のハーフですか?」
「……」
いや、生粋の西方出身だ。髪は染めている。教えてやる義理はないが。
「――答えろガキ! ごぶっ」
小間使いの男がガンと檻を蹴ると、振り返りざまに細身の男がその男を殴った。いい拳だ。反吐が出るな。
「いつも言っているよな? 商品は丁重に扱え」
冷たい声で言う。
「おまえの代わりはいくらでもいるが、商品の代わりはない。次はないと思え」
「へ、へい……すんません……」
…………
奴隷商なのかなんなのか知らないが、反吐が出るほど奴隷の扱いに慣れているな。この男もいずれ始末しよう。
「ふむ……汚れてはいるが、肌の白さから育ちは良さそうだ。顔立ちも悪くないし手も荒れていない。もしや下級貴族の娘か……?」
さりげない暴力を経て、非常に暴力的なことを考えている私への、反吐が出る審査は続く。意外と鋭いな。
細身の男は小間使いから書類を取り上げて見て――顔をしかめた。
「即金が必要、か……これだから価値のわからない弱小空賊は。この子なら綺麗にして上級でも売れそうだが、仕方ありませんね。――下級だ」
こうして私のランクが決定した。
値踏みが終わると、今日入荷した奴隷たちが運ばれていく。
向かう道が違うのは、恐らく、付けられたランクで売る場所が違うからだろう。
ランクが一つ上がるたびに、競売の金額レートに大きく差があるに違いない。
「残念だったなぁ、嬢ちゃん。せめて中級ならまだいい並の暮らしができただろうになぁ」
私の檻を乗せた単船を操縦する、奴隷の首輪を着けたおっさんがそんな声を掛けてきた。
彼がどんな立場なのかは知らないが、私のこれからを思って同情しているのだろう。見た目は十歳前後の子供だから。
何せ下級ランクだもんな。
ろくに金を持っていない奴が破格の捨て値で買って、ろくな扱いをしないで使い潰すために仕入れるんだろうな、というのが嫌でも想像できる。
私はどうとでもなるが、私以外の子供なら、地獄でしかないだろう。
「これからどこへ行くの?」
答えなんて期待せず、とりあえず聞いてみた。
「下級奴隷市場だよ。これから嬢ちゃんは競売に掛けられるんだ。……どんなにつらくても、逃げることだけは考えない方がいいよ。成功しても失敗してもその後が悲惨だから」
そうか。
私にその気はないから安心だな。
檻の中から見ている限りでは、まあまあ普通の街のように感じられた。
唯一明確に違う点を挙げるなら、そこかしこを行く連中が全員堅気に見えないくらいである。
それとなく操縦しているおっさんに「意外と普通の街っぽい」と漏らしたら、彼はこう答えた。
「四空王が支配する島は、それなりに秩序と規則があるんだよ。ほら、せっかく帰ってきても食い物も飲み物も接待する人もいないんじゃ、来てもつまらないだろ。この島に住んでる連中は四空王の支配下で生活しているんだ」
――なるほど。
言い換えるなら、彼らを接待するためにこの島は普通の街のようになっていると。
簡単かつ単純な領土制という感じだな。
本当に反吐が出る理屈である。
夕陽に染まる街並みをゆっくり進むと、広場のような場所に入った。
そこにはすでに商人らしき男たちが何十人も集まっていて――なるほど、これからここで競売をするのだろう。
下級奴隷市場か。
よもや屋根もないような、市場でもないただの広場で売り買いされるとはな。
また一つ嫌悪する理由が増えたな。
どれ――できるだけ商人どもの顔を覚えておこうか。どいつもこいつも欲に塗れた顔をしおって。人をなんだと思っている。おまえらも絶対許さんからな。
――かろうじて、なんとかがんばって二、三人の顔をしっかり覚えたところで、競売が始まった。
もう色々面倒臭いから全員この場で手早く……という暴力への渇望を必死で抑えていると、結局私は三十九万飛んで三千五百一クラムでハンマープライスされた。
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